来る参議院選挙を前に、各党からさまざまな外国人政策が打ち出され、その中には残念ながら排他的ともとれる意見が散見されます。しかし、真に日本が目指すべきは、国籍や文化の壁を越え、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現ではないでしょうか。そうした中、名古屋市に本社を置くKUROFUNE(クロフネ)が発表した特定技能外国人を雇用する企業向けの新たなサービスは、まさに今、日本が最も必要としている「共生」の形を具現化するものとして、私たちの心を揺さぶります。
KUROFUNEが仕掛けるのは、外国人労働者が役所や病院へ行く際の付き添いとして、地域の高齢者を自社アプリでマッチングするという画期的な取り組みです。これは、単なるビジネスモデルに留まらず、外国人労働者が日本で安心して生活できる環境を提供し、ひいては真の共生社会の実現に大きく貢献する可能性を秘めています。排他的な言説が飛び交う中で、このような草の根からの具体的な支援策こそが、私たちに希望を与えてくれるのです。
目次
特定技能外国人の受け入れ企業が抱える課題
少子高齢化が進む日本において、外国人労働者は今や私たちの社会を支える上で不可欠な存在です。特に「特定技能」という在留資格を持つ外国人は、人手不足が深刻な特定産業分野で即戦力として活躍しています。しかし、彼らを雇用する企業側には、単なる業務指導だけでなく、日本での生活全般にわたる支援という大きな負担がのしかかっているのが現状です。
- 行政手続きのサポート: 転入・転出届、税金、社会保険など、役所での手続きは日本人にとっても複雑なもの。言語の壁がある外国人にとっては、さらにハードルが高くなります。
- 医療機関での受診サポート: 病気や怪我の際、症状を正確に伝え、医師の説明を理解することは非常に重要ですです。通訳の手配や病院への付き添いは、企業にとって時間的・人員的なコストとなります。
- 日常生活での困りごとの相談: ゴミ出しのルール、地域コミュニティへの参加、緊急時の対応など、生活の中で生じる細かな疑問や不安に対するサポートも求められます。
これらの生活支援は、外国人労働者が安心して働き、日本社会に馴染む上で欠かせない一方で、企業の担当者にとっては本来の業務を圧迫する要因となっていました。
KUROFUNEの新サービスがもたらす「三方よし」
KUROFUNEの新サービスは、この課題に対し、まさに目からウロコのアプローチで解決策を提示しています。
外国人労働者にとってのメリット
何よりも大きいのは、「安心感」と「自立」の促進です。
- 言葉の壁を越えるサポート: 日本語に不慣れな外国人にとって、役所や病院での手続きや受診は大きな不安を伴います。経験豊富な地域の高齢者が付き添うことで、言葉の壁が解消され、安心して必要なサービスを受けられるようになります。
- 地域社会との接点: 企業の担当者だけでなく、地域に住む日本人との交流が生まれることで、彼らは孤立感を感じることなく、地域社会の一員として迎え入れられていることを実感できるでしょう。
- 生活の質の向上: 細かな生活の困りごとや疑問を気軽に相談できる相手がいることで、より快適で充実した日本での生活を送ることが可能になります。
雇用企業にとってのメリット
企業は、本サービスを利用することで、業務負担の大幅な軽減と生産性の向上を期待できます。
- 担当者の負担軽減: 役所や病院への付き添い業務が外部委託されることで、担当者は本来の業務に集中できるようになります。これにより、人件費の削減や業務効率の向上に繋がります。
- 離職率の低下: 外国人労働者が日本での生活に満足し、安心して働ける環境が整うことで、彼らの定着率が向上し、新たな採用コストを抑えることができます。
- 企業のイメージアップ: 外国人労働者への手厚いサポート体制は、企業の社会的責任(CSR)を果たす姿勢として評価され、企業イメージの向上にも繋がります。
地域高齢者にとってのメリット
このサービスは、外国人労働者や企業だけでなく、地域の高齢者にとっても新たな活躍の場を提供します。
- 社会参加と生きがい: 退職後、社会との繋がりが希薄になりがちな高齢者にとって、誰かの役に立つという経験は大きな喜びや生きがいとなります。
- 知識と経験の活用: 長年培ってきた生活の知恵や日本語能力を活かし、異文化理解を深める機会にもなります。
- 新たな交流の創出: 世代や国籍を超えた交流が生まれることで、地域コミュニティの活性化にも繋がるでしょう。
共生社会実現への大きな一歩
KUROFUNEのこの取り組みは、単なるビジネスモデルにとどまらず、「誰もが暮らしやすい社会」という共生社会の実現に向けた、非常に重要な一歩と評価できます。外国人労働者が日本で安心して生活し、その能力を存分に発揮できる環境を整えることは、日本の社会経済全体の発展にも寄与します。また、地域の高齢者がその知識と経験を活かし、社会貢献できる場が生まれることは、高齢化社会における新たなコミュニティのあり方を示すものでもあります。
サービスは早ければ今年の10月から愛媛県で先行スタートし、2026年度には全国展開を目指すとのこと。このKUROFUNEの挑戦が、日本における外国人労働者の受け入れのあり方を大きく変え、より豊かで多様な社会を築くための起爆剤となることを期待せずにはいられません。