香川銀行、特定技能外国人の紹介業務を2025年4月7日に開始-旧態依然の介護業界に新風、地域社会維持の試金石となるか

ニットで編まれた女性看護士たち

香川銀行が2025年4月7日に開始する特定技能外国人の紹介業務は、四国の地方銀行としては初の試みであり、地域経済に新たな可能性をもたらす。特に、深刻な人手不足に苦しむ介護業界にとって、今回の取り組みは社会構造の変革を促す試金石となるだろう。


香川県特有の課題、深刻な介護人材不足と登録支援機関の限界

香川県は、全国平均を上回る高齢化率と、県外への若年層の流出による労働力不足が深刻な課題となっている。特に、介護業界における人材不足は顕著であり、有効求人倍率は全国平均を大きく上回る水準で推移している。

また、香川県は、他県と比較して中小企業の割合が高く、人材確保のための十分な資金やノウハウを持たない企業が多い。そのため、外国人材の受け入れに二の足を踏む企業も少なくない。

2019年に創設された特定技能制度に伴い、外国人材の登録支援を行う機関は増加している。しかし、これらの機関は都市部に集中しており、地方の中小企業、特に介護事業者へのリーチは限定的だ。また、監理団体としての長年の実績や紹介ルートを持たない新規参入の機関は、顧客獲得に苦労しているのが現状だ。

こうした状況下で、介護サービスの質の低下や、事業者の倒産が懸念されており、地域社会の維持が危ぶまれている。

閉鎖的な介護業界、変革を迫られる現実

日本の介護業界は、長らく日本人労働者を中心に成り立ってきた。しかし、少子高齢化の進行に伴い、労働力不足は深刻化の一途を辿っている。東京商工リサーチの調査によれば、2023年の介護事業者倒産件数は過去最多を記録し、その主因は人手不足である。

にもかかわらず、介護業界は外国人材の受け入れに消極的な傾向が強い。言葉や文化の壁、受け入れ体制の不備、そして何より「介護は日本人が行うもの」という根強い固定観念が、変革を阻んでいる。

しかし、このままでは地域社会の維持は不可能だ。介護サービスの崩壊は、高齢者の生活を脅かすだけでなく、地域経済全体の衰退を招く。旧態依然とした業界の殻を打ち破り、新たな人材を受け入れることは、喫緊の課題である。

香川銀行の挑戦、地域社会の未来を拓く

香川銀行の今回の取り組みは、こうした状況に一石を投じるものだ。地域の中小企業、特に介護事業者との強固な信頼関係を基盤に、外国人雇用のノウハウや情報を提供し、受け入れを支援する。

銀行という地域経済の要が、外国人材の受け入れを主導することで、これまで外国人雇用に消極的だった企業も、前向きな姿勢に転じる可能性がある。

また、香川銀行がインドネシア政府認定の人材送り出し機関と提携したことは、質の高い外国人材の安定的な確保に繋がる。親日的な国民性を持ち、勤勉で真面目なインドネシアの人材は、介護の現場においても高いパフォーマンスを発揮するだろう。

多文化共生社会への道、地域からの発信

香川銀行の取り組みは、単なる労働力不足の解消に留まらない。多文化共生社会の実現に向けた、地域からの重要な発信でもある。

外国人材を受け入れることは、異なる文化や価値観との出会いを生み出す。それは、地域社会に新たな活力を与え、多様性を尊重する寛容な社会の実現に繋がる。

もちろん、言葉や文化の違いによる課題は存在する。しかし、香川銀行のような地域金融機関が中心となり、地域全体で受け入れ体制を整備することで、課題は克服できるはずだ。

試金石としての意義、全国への波及を期待

香川銀行の今回の取り組みは、全国の地方銀行にとっても、大きな示唆を与える。地域金融機関は、地域経済の維持と活性化を使命とする。その使命を果たすために、外国人材の受け入れは不可欠な選択肢となる。

香川銀行の挑戦が成功すれば、他行も追随し、全国的なムーブメントに繋がる可能性がある。それは、日本の介護業界だけでなく、地域社会全体の未来を拓く、大きな一歩となるだろう。