「特定技能」の新たな可能性を切り拓くか？長野の取り組み

「人手不足」が深刻化する日本において、外国人労働者の活躍はもはや不可欠です。中でも、特定の技能を持つ外国人を対象とした在留資格「特定技能」は、様々な産業で重要な役割を担っています。そんな中、長野県で始まった新たな取り組み「信州サイクル」が、注目を集めているのをご存知でしょうか？

1 夏は農家、冬はスキー場で活躍！「信州サイクル」とは？
2 なぜ今、このような働き方が求められるのか？
3 制度的にはどうなの？実現の可能性を推考する
4 それでも「アリ」！制度の柔軟性を高める好例となるか
5 まとめ

夏は農家、冬はスキー場で活躍！「信州サイクル」とは？

「信州サイクル」とは、特定技能の在留資格を持つ外国人が、夏場は長野県の農家で働き、冬場は県内のスキー場で働くという、季節に応じた働き方を実現する取り組みです。具体的には、夏には高原野菜やイチゴ栽培などの農業に従事し、冬には「外食業」の特定技能を活用して、スキー場のホテルで接客などの業務を行うというもの。

これまで、特定技能の在留資格は特定の産業分野に限定されていましたが、この「信州サイクル」は、異なる分野を季節で跨ぐという、新しい働き方を提案しています。

なぜ今、このような働き方が求められるのか？

この取り組みが注目される背景には、それぞれの産業が抱える季節的な労働需要の変動があります。

農業: 夏場は繁忙期を迎えますが、冬場は仕事量が減少する傾向があります。
観光業（スキー場）: 冬場は多くの観光客で賑わいますが、夏場は閑散期となる場合があります。

このように、一年を通して安定した雇用を確保することが難しいという課題がありました。「信州サイクル」は、これらの課題を解決する画期的なアイデアと言えるでしょう。外国人労働者にとっては、一年を通して安定した収入を得られるメリットがあり、雇用側にとっても、必要な時期に確実に人材を確保できるというメリットがあります。

制度的にはどうなの？実現の可能性を推考する

さて、気になるのはこの働き方が特定技能の制度に合致するのかどうかという点です。特定技能の在留資格は、原則として特定の産業分野での就労を前提としていますが、「信州サイクル」のように異なる分野を季節で跨ぐ働き方が、現在の法律や制度の範囲内でどのように実現されているのかは、現時点では明らかではありません。雇用主側がどのような手続きや工夫を行っているのか、また、法的に可能であるのか不可能であるのかについて、ここで私たちが判断することはできません。しかし、この取り組みが示唆する、季節的な労働需要への対応というニーズは確実に存在します。

このような働き方を実現するための可能性としては、以下のようなものが考えられます。

可能性①：季節ごとに「特定技能」の在留資格を変更する

夏と冬でそれぞれの分野の「特定技能1号」の要件を満たし、在留資格を取得し直す方法です。しかし、手続きの煩雑さや、外国人労働者側の負担が課題となる可能性があります。

可能性②：「特定活動」の在留資格を（つなぎ）の期間に活用する

より現実的な可能性として考えられるのが、「特定活動」の在留資格を季節労働の（つなぎ）な期間に活用するという方法です。夏に農業、冬に外食業で働く期間の間に、「特定活動」の在留資格を取得し、冬の仕事に向けた準備や待機を行うことが考えられます。このためには、法務省の柔軟な解釈と運用が不可欠となります。

可能性③：複数の特定技能の在留資格を所持する（現状では可能性は低い）

現状の制度では難しいですが、将来的に制度改正により、特定の条件を満たす場合に限り、季節労働のようなケースで複数の特定技能の在留資格の所持が認められる可能性も否定できません。