知ってるようで知らない有効求人倍率の中身:特定技能分野の人手不足と外国人雇用への影響

日本の病院の廊下で清掃に従事するインド人女性たち

有効求人倍率、誰もが耳にしたことのある言葉ですが、その本質を理解している人は意外と少ないかもしれません。ここでは、有効求人倍率の奥深い世界を紐解き、特に特定技能分野における深刻な人手不足と、外国人雇用への影響について解説します。


有効求人倍率とは何か?

有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)における求職者1人に対して、有効な求人数がいくつあるかを示す指標です。

計算式:有効求人倍率 = 有効求人数 ÷ 有効求職者数
1倍を超える場合:求人数が求職者数を上回り、一般的に「売り手市場」と言われます。
1倍を下回る場合:求職者数が求人数を上回り、一般的に「買い手市場」と言われます。

有効求人倍率の落とし穴

有効求人倍率は、あくまでハローワークに登録されたデータに基づいています。つまり、民間の求人サイトや人材紹介会社を利用している求人・求職者は含まれていません。そのため、有効求人倍率だけでは、労働市場全体の状況を正確に把握することはできません。

また、「有効」という言葉にも注意が必要です。有効求人とは、求人票の有効期限が切れていない求人を指し、有効求職者とは、現在も求職活動を継続している人を指します。

有効求人倍率から読み解くこと:特定技能分野の深刻な人手不足

有効求人倍率は、単に「売り手」「買い手」を示すだけでなく、以下のような情報も読み解くことができます。特に、特定技能分野においては、深刻な人手不足が顕著です。

介護:有効求人倍率3.84倍

高齢化に伴い、介護ニーズは増加の一途をたどっており、深刻な人手不足が続いています。
有効求人倍率3.84倍とは、求職者1人に対して約4件の求人があることを意味します。
これは、介護業界が極めて深刻な人手不足に陥っていることを示しており、早急な対策が必要です。

建設:有効求人倍率7.38倍

インフラ整備や都市開発の需要が高く、専門的な技能を持つ人材が不足しています。
有効求人倍率7.38倍とは、求職者1人に対して約7件以上の求人があることを意味します。
これは、建設業界が非常に深刻な人手不足に陥っており、外国人材の受け入れが不可欠であることを示しています。

外食業:有効求人倍率2.06倍

コロナ禍からの経済回復に伴い、人手不足が顕著になっています。
有効求人倍率2.06倍とは、求職者1人に対して約2件の求人があることを意味します。
これは、外食業が人手不足に悩まされており、特に都市部では深刻な状況であることを示しています。

ビルクリーニング:有効求人倍率2.04~3.76倍

地域差はあるものの、人手不足の傾向が見られます。
有効求人倍率は地域によって異なり、最大で3.76倍に達しています。
これは、ビルクリーニング業界が地域によっては介護業界並みに人手不足が深刻であることを示しています。
これらの数字は、特定技能分野における人手不足が非常に深刻であることを示しています。特に、介護と建設分野においては、有効求人倍率が極めて高く、早急な対策が必要です。

外国人雇用における有効求人倍率の重要性

外国人雇用を検討する企業にとって、有効求人倍率は以下のように活用できます。

人材ニーズの把握:人手不足が深刻な分野を特定し、外国人材の受け入れを検討する。
採用戦略の立案:競合他社の動向や、地域・職種別の有効求人倍率を踏まえ、適切な採用戦略を立案する。
定着支援:人材の獲得競争が激しい場合、より魅力的な労働条件やキャリアパスを提示し、定着率向上に努める。
これらの数字を踏まえ、外国人材の受け入れを積極的に行わない限り、これらの業界は崩壊しかねない状況であるといえます。外国人雇用ビジネスに関わる皆様は、各分野のニーズを的確に把握し、適切な人材マッチングを行うことが重要です。

有効求人倍率は、労働市場を理解するための重要な指標ですが、その中身は意外と複雑です。多角的な視点からデータを読み解き、自社の採用戦略に役立てることが重要です。特に、特定技能分野においては、外国人材の受け入れが喫緊の課題となっています。