日本経済の足元で、企業の倒産件数が深刻なペースで増加しています。その中でも特に異彩を放つのが、「人手不足倒産」です。これは、売上不振ではなく、従業員の退職や採用難、人件費高騰によって事業継続が困難になるケースを指します。

データが示すのは、人手不足が単なる景気変動ではなく、日本経済の構造的な問題であり、外国人材採用という「最終手段」に踏み込めない経営判断が、企業の命運を分ける時代に突入しているという現実です。

過去最多を更新し続ける人手不足倒産の現状

株式会社帝国データバンクの調査によると、「人手不足倒産」は調査開始以来、年々増加を続け、2024年には年間累計で342件に達し、2年連続で過去最多を更新しました。このペースは2025年に入っても衰えておらず、上半期（1月～6月）だけで202件を記録するなど、増加傾向が止まりません。

倒産が集中する「外国人採用で救われる」3大業種

特に倒産件数が高水準で推移し、人手不足の直撃を受けているのは、以下の労働集約型産業です。これらはいずれも、特定技能や技能実習といった在留資格で外国人材の受け入れが積極的に進められている分野です。

業種	2024年（年間）の倒産件数	外国人採用が可能な在留資格	構造的な課題
建設業	99件（最多）	特定技能（建設）、技能実習	職人の高齢化（60歳以上が23.9%）、2024年問題
物流業（運輸・通信業含む）	46件	特定技能（運送）、技能実習	2024年問題、50歳以上が約半数
サービス業	59件（上半期）	特定技能（外食・宿泊・介護など）	労働者派遣、介護・美容室、飲食店などが急増

建設業と物流業だけで全体の4割強を占めており、これらの産業は資材高騰、人件費高騰に加え、「職人の高齢化」「後継者不足」「2024年問題」という「三重苦」に直面しています。

なぜ、助かるはずの企業は外国人採用を選ばなかったのか？

これらの倒産企業の多くは、本来であれば特定技能や技能実習制度を活用することで、人手不足を解消できた可能性があります。にもかかわらず、倒産へと至った背景には、経営者側の「見えない壁」が存在します。

経営者が抱える「3つの心理的障壁」

1. 「外国人材は専門的知識が必要」という思い込み
   • 外国人採用には、複雑な入管法や現地の文化・習慣への深い理解が必要だと考え、二の足を踏んでしまうケースが多く見られます。しかし、特定技能制度は、登録支援機関と連携することで、管理業務の負担を大幅に軽減できる仕組みが整っています。
2. 「定着しない・文化の違い」への過度な不安
   • 言葉や文化の違いによるコミュニケーションの問題から、定着しないのではないかという懸念は根強いです。しかし、先に紹介した外国人材支援SaaS「ツナギテ」のようなツールや、教育体制の整った送り出し機関を選べば、定着率を高めるための仕組みはすでに存在しています。
3. 「採用コスト」の先行投資への躊躇
   • 国内採用に比べ、外国人材の紹介や渡航、初期の支援費用は高額になる傾向があり、資金繰りに余裕のない中小企業ほど、先行投資としての採用を躊躇します。しかし、結果として倒産に至るコストと比較すれば、人材への投資は最もリスクの低い選択肢であったはずです。
     
     

倒産を避けるために：経営者の「勇気」が未来を拓く

人手不足倒産に陥った企業の多くは、従業員10名未満の小規模事業者です。賃上げや労働環境改善の余力が乏しく、日本の高齢化の波に飲み込まれてしまったと言えます。

しかし、外国人採用は、今や「特別な選択」ではなく「事業継続のための必須戦略」です。

人手不足が加速し、倒産件数が過去最多を更新し続ける今こそ、経営者は「複雑だから」「不安だから」という心理的な壁を乗り越える「採用の勇気」を持つべきです。

既存の支援制度、テクノロジー（外国人材支援SaaSなど）、そして専門家の力を借りて、外国人材を「コスト」ではなく「未来の担い手」として迎え入れることが、地域経済を支える中小企業が生き残るための唯一の道です。

＊建設業の倒産動向に関する詳細な調査結果：
建設業の倒産　4年連続で増加…最多ペース　資材価格高騰や人手不足【知っておきたい！】【グッド！モーニング】(2025年7月7日)