特定技能制度の新たな受け入れ目標が、2024年4月から始まる5年間(2024~2028年度)で82万人と、当初(2019~2023年度)の目標(約34.5万人)から約2.4倍に急拡大しました。
これは、日本の人手不足が危機的状況にあることを示唆しています。当初の目標はコロナ禍の影響もあり未達に終わりましたが、この大幅な目標再設定と実績のギャップは、私たち受け入れ企業に何を突きつけるのでしょうか。
当初5年間の実績:コロナ禍で「未達」も分野で明暗
特定技能制度が開始した2019年度からの5年間(〜2024年3月末)は、コロナ禍による渡航制限の影響を強く受けました。その結果、目標約34.5万人に対し、実際の在留者数は約24.2万人(達成率約70%)にとどまりました。
| 分野 | 当初目標 (人) | 2024年3月末実績 (人) | 達成度 | < /tr>
| 飲食料品製造業 | 85,000 | 約 74,000 | 約87% |
| 外食業 | 20,000 | 約 20,000 | 約100%達成 |
| 建設 | 40,000 | 約 34,000 | 約85% |
| 介護 | 50,900 | 約 39,000 | 約76% |
| 宿泊 | 22,000 | 約 10,000 | 約45% |
【特に注目すべき点】
- 飲食料品製造業と外食業は、コロナ禍の厳しい状況下でも、高い達成度を示しました。これは、両業界における外国人材への根強い需要と、技能実習からのスムーズな移行が進んだ結果と見られます。
- 一方、宿泊業は、観光需要の消失により受け入れが大きく落ち込み、目標の半分以下に留まりました。
新目標「82万人」の衝撃と、業界ごとの最前線
実績が未達に終わったにもかかわらず、次期5年間の目標が82万人に設定された背景には、人手不足の解消にはこれほどの規模の外国人材が必要だという、政府の強い危機感があります。
| 分野 | 当初目標 (人) | 新たな目標(2024~2028年度) (人) | 変化の要因 |
| 介護 | 50,900 | 210,000 | 約4倍に急増。超高齢社会における介護人材の需要は最も深刻。 |
| 工業製品製造業 | 124,550 | 173,300 | 製造業のサプライチェーン全体での慢性的な人手不足に対応。 |
| 建設 | 40,000 | 80,000 | 担い手の高齢化と大規模プロジェクトの継続。 |
| 新規分野 | 0 | 34,300 (合計) | 自動車運送業(2024年問題)、鉄道、林業、木材産業が追加。 |
【業界が取るべき戦略】
- 介護分野: 目標が約4倍の21万人となり、特定技能が人材確保の生命線になります。いかに外国人材にとって魅力的な職場環境を提供し、定着を促せるかがカギです。
- 新規追加分野(運送業など): これまで外国人雇用に慣れていない業界が、一気に特定技能の受け入れを加速させることになります。支援体制の整備とノウハウの確立が急務です。
今後の外国人雇用を成功させるために
当初目標の未達は、制度自体の問題ではなく、外的要因(コロナ禍)が主でした。しかし、新たな82万人目標の達成は、単に「受け入れる」こと以上の課題を伴います。
- 国内競争の激化: 全体目標の拡大は、外国人材の獲得競争を激化させます。より良い待遇、キャリアアップの機会、充実した生活支援を提供する企業が選ばれる時代です。
- 共生社会の実現: 目標拡大に伴い、受け入れ企業には「地域社会との共生」への寄与が、基本方針に明記されました。単なる労働力としてではなく、地域の一員として受け入れる体制が求められます。
特定技能制度は、もはや日本社会のインフラの一部です。この大規模な目標再設定を好機と捉え、外国人材の力を最大限に活かせる体制へと、企業と地域の変革が問われています。









