外免切替10月から厳格化!特定技能ドライバーの「無理ゲー」化が不可避

自動車教習を受けるネパール人女性


現場の実態を警告する動画が公開、制度の構造的欠陥が露呈

この度、YouTubeチャンネル「外国人労働者採用ch【阪神総研】」が2025年7月16日に公開した動画は、特定技能「自動車運送業」の円滑な受け入れに対する重大な警鐘を鳴らしました。動画が指摘する、外免切替制度と特定活動の運用実態の乖離は、人手不足解消を目的とする特定技能制度の構造的欠陥を浮き彫りにしています。

本稿では、この動画の内容を基に、2025年10月からの制度厳格化によって特定技能ドライバーの受け入れが「無理ゲー」化するリスクについて、その詳細を分析します。

制度設計の破綻:「特定活動6ヶ月・延長不可」が招く危機

2024年に創設された特定技能「自動車運送業」において、外国人候補者が就労開始前に完了させるべき外免切替手続きと、その間に付与される在留資格「特定活動」の運用に、看過できない問題が生じています。

ハードル上昇と手続き遅延による期限切れリスク

特定技能候補者には、外免切替完了までの期間として「特定活動」(6ヶ月間)が付与されますが、延長は原則として認められていません。

しかし、この期間設定が現実の行政手続きと著しく乖離しています。(出展:YouTubeチャンネル「外国人労働者採用ch【阪神総研】」2025年7月16日公開動画)

  1. 知識試験の厳格化:2025年10月以降、外免切替の知識試験(学科試験)の難易度が大幅に上ります。現行の10問から50問への問題数増加が方針として打ち出されており、合格率は大幅に低下し、新たな障壁となります。
  2. 手続き遅延の常態化:都市部の免許センターでは、書類審査や学科試験の予約だけで2〜3ヶ月を要する状況が確認されています。
  3. 実技試験の難関化:学科合格後も、実技試験の予約にさらに1〜2ヶ月を要します。さらに、日本の実技試験は、国内の安全基準に基づく「安全確認」の徹底を求めるため、一発合格は極めて困難です。

この遅延と難易度の上昇により、厳格化された学科試験の再受験や実技試験の複数回受験を考慮すると、6ヶ月以内での完了は現実的に不可能です。期限までに完了できない候補者は特定技能への移行ができず、帰国を余儀なくされ、企業は採用費用と準備費用の損失を被り、採用計画は破綻します。

縦割り行政の弊害:国の中での責任「たらい回し」

この制度的欠陥の背後には、行政機関の縦割り体制が存在します。

受け入れ企業が特定活動期間の延長や制度の実態について確認を求めても、関係省庁間で「責任のたらい回し」が生じ、問題解決に向けた統一的な対応が取られていません。国土交通省(特定技能所管)は延長の可否を法務省(入管)の判断とし、試験の実態を警察庁に委ねるという現状は、現場の危機的状況を国の中枢が把握し、是正する能力を欠いていることを示唆しています。

制度の混同:観光客と就労者への同一規制適用を是正せよ

今回、外免切替の厳格化が図られた背景には、短期滞在の観光客などによる不正な免許取得への対策という側面があります。

しかし、日本の人手不足解消という国家戦略に基づき受け入れる中長期就労者である特定技能ドライバーを、観光目的の短期滞在者と同一視し、同一の厳しい規制下に置くことは、制度の目的と機能に反します。

業界としては、特定技能ドライバーを一般の受験者や観光客と明確に区別し、優先的な試験レーンの設置などの特別措置を講じるよう、政府に対し強く提言していく必要があります。さもなければ、物流・運送業界における外国人材の活用は、絵に描いた餅で終わる可能性が高いと言えます。