少子高齢化が加速する日本において、外国人労働者の存在は経済活動を支える上で不可欠なものとなっている。しかし、一部メディアによる外国人犯罪の偏った報道が、国民の間に不必要な不安と偏見を煽り、外国人労働者全体のイメージを著しく損なっている現状は、看過できない。
警察庁の「令和4年の犯罪統計」によれば、来日外国人による刑法犯の検挙件数は13,415件であり、刑法犯全体の検挙件数(580,432件)のわずか2.3%に過ぎない。また、法務省の「令和4年末における在留外国人数」によると、日本に在留する外国人は約307万人であり、これは日本全体の人口の約2.5%に相当する。これらの数字が示す通り、外国人犯罪率は決して高いとは言えず、むしろ日本全体の人口比率とほぼ同等である。
にもかかわらず、一部メディアは、外国人による犯罪をセンセーショナルに報道し、あたかも外国人犯罪が多発しているかのような誤った印象を与えている。特に、労働ビザで来日している外国人労働者は、日本の経済活動に貢献している重要な担い手であり、その数は2023年10月末時点で約204万人に達する。彼らを犯罪者予備軍として扱うことは、統計データに反するだけでなく、日本の経済活動を大きく損なう行為である。
このような偏った報道は、国民の不安を煽るだけでなく、外国人に対する差別や偏見を助長し、多文化共生社会の実現を阻害する。内閣府が2022年に実施した「外国人との共生に関する世論調査」では、「外国人が増えることに対して不安を感じる」と回答した人が40.5%に上った。この背景には、メディアによる偏った報道が大きく影響していると考えられる。
メディアは、報道の自由を盾に、センセーショナルな報道を繰り返すのではなく、報道責任を自覚し、客観的で正確な情報を提供すべきである。外国人犯罪を報道する際には、国籍を強調するのではなく、犯罪の背景にある社会的な要因や個人の事情を丁寧に取材し、報道することが求められる。
また、外国人労働者の受け入れを成功させるためには、政府や自治体だけでなく、企業や地域社会も一体となって、外国人労働者が安心して働ける環境を整備する必要がある。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、外国人労働者を雇用する事業所数は2023年10月末時点で約31万事業所に上る。これらの企業は、労働環境の改善、住居の確保、日本語教育の充実、相談体制の整備など、外国人労働者が日本社会に溶け込み、活躍できる環境を整備することが不可欠である。
さらに、国民一人ひとりがメディアリテラシーを高め、情報を鵜呑みにせず、批判的に検討する能力を養うことも重要である。総務省の「情報通信白書」によると、インターネットやSNSの普及により、誰もが情報発信者となり得る時代になった。だからこそ、情報の真偽を見極める能力が求められる。
外国人労働者は、日本の経済社会にとって重要な存在である。彼らが安心して活躍できる環境を整備し、多文化共生社会を実現することは、日本の未来にとって不可欠な課題である。メディアは、その責任を自覚し、偏見を排した報道を通じて、多文化共生社会の実現に貢献すべきである。