2027年から導入される見込みの育成就労制度は、現在の技能実習制度を大きく変えるものです。企業と外国人材の直接契約が可能になることで、これまでのビジネスモデルが成り立たなくなるのではないか、という不安の声も聞かれます。
しかし、この制度変更は、監理団体がその存在意義を再定義し、より社会的に価値のある組織へと進化する絶好の機会でもあります。単なる「監理」から、企業と外国人材双方の発展をサポートする「伴走者」へと役割を変えることで、監理団体は生き残るだけでなく、より強固な基盤を築けるはずです。
この記事では、育成就労制度が監理団体に与える影響と、今後取るべき具体的な3つの戦略について解説します。
目次
これまでの監理団体ビジネスモデルと変化
これまでの監理団体は、技能実習制度における「企業と実習生の間に立つ第三者機関」として、以下の役割を担ってきました。
- 適正な実習の確保: 実習計画の策定支援や、計画通りの実習が行われているかの定期的な確認。
- 実習生の人権保護: 生活指導や相談対応を通じて、実習生が安心して日本で生活できるようサポート。
- 各種手続きの代行: 入管への申請や企業への報告など、煩雑な書類作成の代行。
これらの業務を通じて、監理団体は企業から監理費を得てきました。しかし、育成就労制度では、企業が直接外国人材を雇用できるようになるため、このビジネスモデルは大きな転換を迫られます。特に、監理団体が担っていた業務の多くが、企業や外国人材自身の自主的な活動に委ねられるため、従来の収入源であった監理費は減少する可能性があります。
生き残るための3つの戦略
この変化の波を乗り越えるため、監理団体は以下の3つの戦略を検討すべきです。
戦略1:コンサルティング機能の強化と監理支援機関としての活用
育成就労制度になっても、外国人を雇用する企業が抱える課題は尽きません。むしろ、直接雇用になることで、企業側の負担は増える可能性があります。そこで、監理団体がこれまで培ってきたノウハウを活かし、専門性の高いコンサルティングサービスを提供するのです。
この際、新設される監理支援機関の役割を積極的に活用することが重要です。監理支援機関は、外国人材の受入れ企業に対し、監査や助言、指導を行う第三者機関です。監理団体が、この監理支援機関としての機能を提供することで、従来の「監査」に加え、「助言」や「指導」といった付加価値の高いサービスを提供できるようになります。これにより、企業は安心して外国人材を受け入れられるようになります。
戦略2:登録支援機関への進化
育成就労制度下でも、企業が外部の支援機関に協力を仰ぐニーズは残ります。特に、特定技能の分野では、登録支援機関の役割が重要です。これまでの監理団体としての経験は、そのまま登録支援機関としての強みになります。
- 特定技能外国人の受入れ支援: 特定技能制度の要件や手続きは複雑なため、専門的な知識を持つ登録支援機関への需要は高まります。
- 生活支援のプロフェッショナルへ: 外国人材が孤立しないよう、住居探しや公共料金の手続き、生活相談など、手厚い支援を提供します。これにより、外国人が安心して日本で生活し、仕事に集中できる環境を整えることができます。
戦略3:外国人材の「伴走者」として、新たな事業を創出する
監理団体は、これまで多くの外国人材と向き合い、その声を聞いてきました。この経験は、単なるビジネスノウハウ以上の価値を持ちます。外国人材一人ひとりの人生に寄り添う「伴走者」として、新たな事業を創出する道もあります。
- 日本語教育事業の展開: オンライン日本語教育サービスを開発し、育成就労制度の日本語要件を満たすための学習サポートを提供します。
- キャリアアッププラットフォームの構築: 外国人材向けの求人情報やキャリアアップにつながる情報を提供することで、外国人材自身の可能性を広げる手助けができます。
- コミュニティ形成の促進: 外国人材同士や日本人との交流イベントを企画・運営し、多文化共生社会の実現に貢献します。
まとめ
育成就労制度は、監理団体にとって大きな変化を迫るものです。しかし、それは決して「終わり」を意味するものではありません。
これまで監理団体が培ってきた外国人材の受入れノウハウ、企業とのネットワーク、そして外国人の生活をサポートしてきた実績は、育成就労制度下でも十分に通用する強みです。
この変化を前向きに捉え、これまでの「監理」から、企業と外国人材の双方をサポートする「伴走者」へと役割を変えることで、監理団体は今後も社会にとって必要不可欠な存在として、持続可能な事業を展開できるでしょう。