特定技能「運送」分野に新たなスキーム!国内在住の特定技能人材をドライバーにキャリアチェンジ

パーキングエリアに整然と駐車された長距離トラック

2024年3月、特定技能制度に対象分野として「自動車運送業」が追加され、外国人ドライバーの活用に期待が高まっています。しかし、海外からの人材呼び寄せにかかる多大な時間と費用、そして日本語能力への不安が、多くの企業にとって導入の障壁となっていました。こうした課題を解決するため、特定の企業が連携し、日本国内に在住する特定技能人材を対象とした新たな採用スキームを構築しました。

👉 日本国内から特定技能トラックドライバーを最短で、採用コストを約1/5に抑えて採用可能へ!(PR TIMES) : 2025年8月4日

このプレスリリースによると、「株式会社メイクワン」、「株式会社エヌ・ピー・ロジ」、「株式会社人と安全研究所」の三社が連携し、日本国内に在住する特定技能「自動車運送業」の候補者を、採用から入社後の支援までワンストップで提供するスキームを構築しました。

このスキームの最大の強みは、海外からの人材呼び寄せと比べて、採用コストを約5分の1に抑え、最短1ヶ月での採用を可能にする点です。すでに日本で3年以上の勤務経験がある人材を対象とすることで、高い日本語能力と日本の生活様式への理解が期待でき、企業の受け入れ負担を大幅に軽減します。


宿泊で3年働いたベトナム人Aさんの、運送ドライバーへの道のり

では、例として、すでに特定技能「宿泊」で3年間日本で働いているベトナム人Aさんが、この新スキームを利用して運送ドライバーを目指す場合のプロセスと、その意義について考えてみましょう。Aさんはベトナムで大型免許を取得済みという前提です。

1. 特定技能「運送」への在留資格変更に向けた準備(最短1ヶ月〜)

  • 試験合格: 特定技能「自動車運送業」の技能試験に合格する必要があります。
  • 運転免許取得: 日本の運転免許証が必須となるため、ベトナムで大型免許を取得済みの場合、日本の運転免許センターで「外免切替」の手続きを進める。
  • 外免切替のタイミングとビザ: この手続きは、Aさんが現在持っている「特定技能(宿泊)」の在留資格で行うことができます。外免切替自体は在留資格の変更を伴いません。現在のビザが有効な期間中に、技能試験の合格と並行して進める必要があります。
  • 人材紹介: このスキームを提供する企業(メイクワン)に登録し、運送会社とのマッチングを図ります。手続きがスムーズに進めば、このステップを最短1ヶ月で完了させることも可能です。

2. 在留資格変更許可申請(約1~3ヶ月)

  • 運送会社との雇用契約が成立した後、出入国在留管理局に「特定技能(宿泊)」から「特定技能(自動車運送業)」への在留資格変更許可申請を行います。この申請時に、日本の運転免許証の取得が完了している必要があります。

3. ドライバーとしての勤務開始

  • 在留資格が変更された後、ドライバーとしての勤務が始まります。この時点で、通算5年の在留期間のうち、すでに4年以上が経過していると仮定します。Aさんが特定技能1号として働ける期間は、残念ながら最長で残り1年程度となります。

このプロセスを経る意義と展望

このプロセスをたどると、特定技能1号のドライバーとして働ける期間は短く、企業にとってはわずか1年間の雇用にしかなりません。この「残り1年」をどう評価するかは、雇用者の考え方によって分かれるでしょう。

・雇用期間の短さをデメリットと捉える場合: 長期的な人材育成を計画している企業にとっては、1年という期間はコストや手間に見合わないと感じられるかもしれません。採用から教育にかかるコストを回収する前に、人材が離職してしまうリスクも考慮する必要があるでしょう。

・雇用期間の短さをメリットと捉える場合: 一方、短期的な繁忙期の人手不足解消や、特定のプロジェクトのために即戦力を求める企業にとっては、1年という期間は十分に価値があります。国内に在住し、日本語能力も高い人材を、海外から呼び寄せるコストや時間、労力をかけずに採用できるのは大きなメリットです。入社後の教育システムも整備されているため、企業は安心してドライバーを育成できます。

・外国人材側のメリット: 外国人材は、日本に在留しながら安心してキャリアチェンジの機会を得られます。一度帰国して再来日する手間やコストが不要なため、生活の安定を保ちながら、希望する職種に就くことが可能となります。

また、現時点では特定技能1号の通算在留期間は5年が上限ですが、将来的に制度が見直され、通算期間が延長される可能性もゼロではありません。 今後、外国人材の活用がさらに進む中で、日本の労働力不足の現状に合わせて制度が柔軟に運用されることが期待されます。

まとめ

この新スキームは、特定技能「運送」分野における採用の課題を解決する画期的な試みと言えます。通算5年という在留期間の制約は残るものの、「国内に眠る即戦力」に焦点を当てることで、運送業界の喫緊の人手不足解消に大きく貢献する可能性を秘めています。この取り組みは、日本の労働力不足と外国人材のキャリア形成、双方の課題を解決する新しいモデルとして、今後の動向に注目が集まるでしょう。