大手外食チェーン「ワタミ」がバングラデシュに一大研修センター設立!日本の外国人雇用はどう変わるのか?

焼肉の和民

ワタミが、バングラデシュの首都ダッカに「ジャパントレーニングセンター」を設立するというニュースが飛び込んできました。これは単なる一企業の海外進出に留まらず、日本の未来、特に外国人雇用における重要な転換点となりうるものです。大手外食チェーンがここまで海外の人材育成にコミットすることが、私たち日本の社会にどのような影響をもたらすのか、その深層を探ります。


深刻な人手不足にあえぐ外食産業の現状

まず、なぜワタミが海外、特にバングラデシュで研修センターを設立するのか、その背景を理解することが重要です。ワタミの渡辺美樹会長兼社長は「外食で成長するには、人材確保がネックになる」と語っています。少子高齢化が進む日本において、労働人口の減少は深刻な問題であり、特に外食産業は長年にわたり人手不足が慢性化しています

多くの飲食店では、ピークタイムの人員確保に苦慮し、店舗運営に支障をきたすケースも少なくありません。労働集約型である外食産業にとって、人材はまさに生命線。この喫緊の課題に対し、ワタミは自社で特定技能人材を育成し、安定的な人材供給源を確保しようとしています。年間約3,000人の特定技能人材を日本に送り出すという目標は、ワタミだけでなく、日本の外食産業全体の人手不足解消に大きく貢献する可能性を秘めています。

「自社育成」がもたらすメリットと課題

ワタミが目指す「自社での人材育成」は、従来の外国人材受け入れとは一線を画します。これまでの外国人雇用では、日本語学校や送り出し機関に頼ることが多く、必ずしも日本企業が求めるスキルや日本語能力が身についているとは限りませんでした。しかし、ワタミが直接研修センターを運営することで、以下のようなメリットが期待されます。

  • 質の高い人材の確保: 日本語だけでなく、接客や工場での実務スキルを体系的に教え込むことで、来日後すぐに即戦力となる人材を育成できます。
  • 文化や習慣の理解促進: 日本の文化やビジネスマナーも指導することで、来日後のミスマッチを減らし、早期の適応を促します。
  • 定着率の向上: 入社前からワタミの企業文化に触れることで、従業員のエンゲージメントを高め、長期的な雇用につながる可能性があります。

一方で、自社での人材育成には課題も存在します。例えば、膨大な初期投資や、現地での運営ノウハウの蓄積、そして育成した人材が必ずしも自社に定着するとは限らないというリスクも考慮する必要があります。

特定技能2号の拡大と外食産業の未来

今回のワタミの取り組みは、2023年に特定技能2号の対象分野が11分野に拡大されたことと無関係ではありません。特に飲食業界においては、店舗の運営や管理といったより高度な業務を外国人材が担うことが可能になりました。これは、単なる労働力の補填ではなく、外国人材が日本の飲食業界においてキャリアアップできる道が開かれたことを意味します。

ワタミが育成する人材が、将来的には店長やマネージャーといったポジションを担う可能性も出てくるでしょう。これは、日本の外食産業における多様性を促進し、新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけになるかもしれません。

日本社会への影響と私たちが考えるべきこと

ワタミのこの大胆な一歩は、日本の外国人雇用に対する意識を大きく変える可能性があります。

  • 地域社会との共生: 来日する外国人材が日本の地域社会にどのように溶け込み、共生していくのか。自治体や地域住民が外国人材を「ゲスト」としてではなく、「共に地域を支える仲間」として受け入れるための努力が求められます。
  • 多文化共生社会の実現: 働く場所だけでなく、生活の場においても外国人材が安心して暮らせる環境整備が急務となります。住宅支援、医療、教育など、多岐にわたるサポート体制の構築が不可欠です。
  • 中小企業への波及効果: 大手企業が先駆けて海外での人材育成に取り組むことで、そのノウハウや成功事例が中小企業にも共有され、日本の産業全体で外国人材の活用が進む可能性があります。

ワタミの取り組みは、日本が直面する少子高齢化という課題に対し、企業がどのように能動的に対応していくかを示す好例と言えるでしょう。これは、私たち一人ひとりが外国人材との共生について考え、行動するきっかけとなるはずです。

今回のワタミの挑戦は、日本の未来を考える上で非常に示唆に富んでいます。この動きを単なる企業戦略として捉えるのではなく、日本の社会、経済、そして文化にどのような影響をもたらすのか、市民レベルでの議論を深めていくことが重要です。