2025年3月にミャンマー中部で発生した大地震から2ヶ月が経過しました。この地震の影響により、日本で就労を希望するミャンマー人技能実習生の来日が滞るケースが相次いでおり、受け入れを予定していた日本企業も対応に苦慮しています。本記事では、この問題の背景と現状、そして企業がとるべき対応について詳しく解説します。
来日遅延の背景にある「海外労働身分証明カード」発行の遅れ
今回の来日遅延の主な原因は、ミャンマー政府が発行する**「海外労働身分証明カード」**の発行が滞っていることにあります。この証明カードは、ミャンマー国籍の人が国外で働く際に必須となる書類であり、地震による政府機関の被災に加え、今年1月からのソフトウェアメンテナンスによる発行停止も影響し、大幅な遅延が生じています。
本来、技能実習生が日本に入国するまでには、日本の監理団体を通じた企業からの求人、面接、そして在留資格認定証明書の取得といったプロセスがあります。ミャンマーの場合、これに加えてこの「海外労働身分証明カード」の取得が必要となるため、発行遅延が直接的な来日困難につながっているのです。
日本とミャンマー、双方に影響
日本にとってミャンマー人技能実習生は、労働力不足が深刻な介護業界をはじめ、多くの分野で不可欠な存在となっています。特に、日本語能力が高い実習生が多いことから、受け入れを積極的に進める企業も少なくありません。厚生労働省の調査によると、2024年10月末時点で日本で働くミャンマー国籍の人は11万4618人に上り、技能実習生はそのうち3万3878人と、年々増加傾向にあります。
しかし、今回の証明書発行遅延により、内定を取り消す企業も出てきており、計画通りの人材確保が困難になっています。
一方、ミャンマー側の実習生にとっても、日本での就労は安定した生活と高い収入を得るための重要な機会です。内戦が続く中で治安の良い日本での就職は特に人気が高く、来日を心待ちにしている多くの若者が不安を抱えています。中には、内定を取り消され、母国に留まらざるを得ない人もいます。
出入国在留管理庁の対応と企業への提言
このような状況を受け、日本の出入国在留管理庁は、ミャンマー国籍の人の**「在留資格認定証明書」の有効期間を通常の3ヶ月から6ヶ月に延長する**措置をとっています。これは、書類発行の遅れによりビザ申請が間に合わない事態を避けるための緊急対応です。
しかし、根本的な解決には時間を要すると考えられます。行政書士の森久保夏樹氏は、受け入れ企業に対し、「実習生たちの来日には時間がかかることを前提にしてほしい」と提言しています。すぐに内定を取り消すのではなく、ミャンマーの状況を注視しながら待つこと、そして、渡航が難しい期間は別の国の人材採用も並行して検討するなど、柔軟な対応が求められています。
ミャンマーから日本で働く人々は、日本の労働市場にとってかけがえのない存在です。今回の問題は、単なる書類発行の遅れにとどまらず、両国の信頼関係や今後の外国人材受け入れ体制にも影響を及ぼす可能性があります。国や受け入れ企業には、現地の実情を深く理解し、長期的な視点に立って、ミャンマーからの人材受け入れを支える体制を構築していくことが求められています。
今回の状況について、貴社ではどのような対策を検討されていますか?