特定技能外国人の採用を検討する企業様へ:N4レベルの日本語能力とは?採用成功のための徹底解説

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日本国内の人手不足が深刻化する中、特定技能制度を活用した外国人材の採用は、多くの企業にとって重要な選択肢となっています。その中でも、特定技能の資格で日本に来るためには、原則として日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格、またはこれと同等以上の日本語能力を有することが必須条件となります。本稿では、特定技能外国人の採用を検討されている企業の皆様に向けて、N4レベルの日本語能力を詳細に解説し、今後の採用活動に役立つ情報を提供いたします。


はじめに:特定技能と日本語能力の重要性

特定技能制度は、日本国内の人手不足が深刻な特定産業分野において、一定の専門性・技能を有し、かつN4以上の日本語能力を有する外国人を受け入れる制度です。この制度を活用することで、企業は労働力不足の解消を図り、事業の継続・発展に繋げることが期待できます。

特に、N4レベルの日本語能力は、多くの特定産業分野で求められる基本的なコミュニケーション能力の指標となります。採用する外国人がN4レベルの日本語能力を有しているかどうかを正しく理解することは、採用後のスムーズな業務遂行、職場環境への適応、そして長期的な活躍に不可欠です。

N4レベルの日本語能力:日常生活に必要な基礎力

N4レベルの日本語能力は、「基本的な語彙や漢字を使って、日常生活での簡単な会話ができ、簡単な文章を読んだり書いたりできる」程度と定義されています。これは、日本で生活し、働く上で最低限必要なコミュニケーション能力を示すものです。

具体的にどのような能力が求められるのか、試験の内容に沿って詳しく見ていきましょう。

聞く力(リスニング)

N4のリスニング試験では、日常的な場面を想定した会話やアナウンスを聞き取り、内容を理解する能力が問われます。

  • ゆっくりとしたスピードの会話: 例えば、お店での買い物、道案内、簡単な質問など、日常生活でよくある場面での会話を聞き取れる。
  • 短い指示や説明: 職場での簡単な指示や注意、日常生活でのアナウンス(例:駅のアナウンス、館内放送)などを理解できる。
  • 天気予報や簡単なニュース: 天気予報や、身近な話題に関する短いニュースの概要を理解できる。

企業への示唆: 従業員が日常業務における指示や同僚との簡単な会話を理解できるレベルです。複雑な専門用語や早口の会話は難しい可能性があります。

読む力(リーディング)

N4のリーディング試験では、日常生活で目にする機会の多い文章を読み解く能力が問われます。

  • 基本的な語彙と漢字: 約300字程度の漢字と、日常会話に必要な語彙(約1500語)を理解している。
  • 簡単な文章や記事: レストランのメニュー、駅の案内表示、簡単な手紙やメール、短いニュース記事などを読んで内容を理解できる。
  • 簡単なアンケートや質問: 日常生活に関する簡単なアンケートや質問を読んで、適切な回答を選択できる。

企業への示唆: 業務連絡や手順書など、基本的な日本語で書かれた文書を理解できるレベルです。専門的な内容や複雑な表現を含む文書の読解は難しい場合があります。

文法

N4の文法では、基本的な文型や助詞、動詞や形容詞の活用など、日本語の基礎的な文法知識が問われます。

  • 基本的な文型: 「~は~です」「~があります/います」「~を~ます」「~てください」「~てもいいですか」など、日常会話で頻繁に使われる文型を理解し、使うことができる。
  • 助詞の理解: 「は」「が」「を」「に」「へ」「と」「で」「から」「まで」など、文の意味を左右する助詞の基本的な使い方を理解している。
  • 動詞・形容詞の活用: 動詞や形容詞が、時制や肯定・否定によってどのように形を変えるかを理解している。

企業への示唆: 従業員が自分の意思や状況を簡単な日本語で表現できるレベルです。複雑な文構造やニュアンスの理解には時間を要する可能性があります。

語彙

N4の語彙では、日常生活でよく使われる基本的な単語や表現の知識が問われます。

  • 日常的な単語: 家族、食べ物、場所、時間、数字、色、天気など、日常生活に必要な基本的な単語を知っている。
  • 基本的な表現: 挨拶(おはようございます、こんにちは、こんばんは)、自己紹介、感謝(ありがとうございます)、謝罪(すみません)、依頼(お願いします)など、基本的なコミュニケーションに必要な表現を知っている。

企業への示唆: 従業員が日常会話に必要な基本的な単語や表現を理解しているレベルです。専門用語や業界特有の言葉は別途教える必要があります。

英検との比較:N4レベルはどのくらい?

日本語能力試験のN4レベルを、英語の資格試験である英検と比較すると、おおよそ英検の準2級から2級の初歩程度に相当すると考えられています。

  • 英検準2級: 日常生活における身近な話題について理解し、自分の意思を伝えられるレベル。
  • 英検2級: 社会生活に必要な英語を理解し、使用できるレベル。

ただし、これはあくまで目安であり、試験の形式や評価基準が異なるため、完全に一致するわけではありません。しかし、英語を母語とする方にとって、N4レベルは、日常生活に必要な基本的なコミュニケーション能力を習得している段階と捉えることができます。

なぜN4レベルが特定技能の基準となるのか?

特定技能制度でN4レベルが基準の一つとなっているのは、このレベルが、日本で生活し、働く上で最低限必要なコミュニケーション能力を示すと考えられるからです。特定技能の外国人材が日本で働くためには、N4レベル以上の日本語能力が不可欠であり、これによって以下のような業務遂行や職場環境への適応が期待できます。

  • 基本的な業務指示の理解と実行: 上司や先輩からの指示を理解し、それに従って作業を行うことができる。
  • 同僚との日常的なコミュニケーション: 休憩時間や業務時間中に、同僚と簡単な会話をすることができる。
  • 顧客との簡単なコミュニケーション(業種による): 接客業などにおいては、顧客に対して基本的な挨拶や説明をすることができる。
  • 生活に必要な手続きや情報の理解: 市役所での手続きや、生活に必要な情報を日本語で理解することができる。

ただし、N4レベルはあくまで基礎的なレベルであり、より専門的な知識や高度なコミュニケーション能力が必要な業務においては、さらなる日本語能力の向上が求められる場合があることも理解しておく必要があります。

採用活動への活用:N4レベルを正しく理解し、見極める

特定技能外国人の採用活動においては、応募者の日本語能力がN4レベルに達しているかを正確に評価することが重要です。面接時には、以下のような点に注目すると良いでしょう。

  • 自己紹介や職務経歴に関する簡単な質問への応答: ゆっくりと話すように促し、基本的な文法や語彙を使って自分のことを説明できるかを確認します。
  • 具体的な業務場面を想定した質問への理解度: 例えば、「もしお客様に『~』と聞かれたら、どのように答えますか?」といった質問を投げかけ、理解度や対応能力を見ます。
  • 日本語でのコミュニケーション意欲: 積極的に日本語でコミュニケーションを取ろうとする姿勢があるかを確認します。

また、可能であれば、日本語能力試験の合格証書の提出を求めるだけでなく、実際に簡単な日本語での筆記テストや会話テストを実施することも有効です。

N4レベルの外国人材を受け入れる上での注意点とサポート

N4レベルの日本語能力を持つ外国人材を受け入れる際には、企業側もいくつかの点に注意し、適切なサポート体制を整えることが重要です。

  • 業務指示や説明は、分かりやすい言葉でゆっくりと: 専門用語や複雑な表現は避け、簡単な言葉で具体的に説明するように心がけましょう。
  • 視覚的な情報や多言語対応ツールの活用: 図やイラスト、翻訳アプリなどを活用することで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。
  • 日本語学習の機会の提供: 社内での日本語研修や、外部の日本語教室の紹介など、従業員の日本語能力向上を支援する体制を整えましょう。
  • 異文化理解とコミュニケーション促進: 文化的な背景の違いを理解し、外国人従業員が安心して働けるようなオープンな職場環境づくりを心がけましょう。

まとめ:N4レベルの理解が採用成功の鍵

特定技能制度を活用して外国人材を採用する上で、N4レベルの日本語能力は必須条件であり、企業と外国人従業員双方にとって重要な基盤となります。N4レベルの日本語能力を正しく理解し、採用活動に活かすことで、企業は優秀な人材を確保し、事業の発展に繋げることができます。

本稿が、特定技能外国人の採用を検討されている企業の皆様にとって、今後の採用活動の一助となれば幸いです。