特定技能制度が2019年にスタートしてから約7年。外国人材の出身国構成は大きく変化しています。かつて日本語能力の高さから評価されてきたミャンマー人材ですが、近年は現地の政情不安や出国規制の影響により、日本への「入り口」が狭くなりつつあります。一方、その空白を埋める形で存在感を急速に高めているのがインドネシアです。
日本政府が公表した統計をみても、特定技能人材の供給構造は明確に変化し始めています。
最新統計が示す国籍別構成の変化
出入国在留管理庁の公表によると、2025年6月末時点の特定技能在留外国人数は33万6,196人に達し、制度開始以来の最多となりました。
国籍別では依然としてベトナムが最大勢力ですが、インドネシアとミャンマーの増加が目立っています。
| 国籍 | 在留者数 (2025年6月末) | 構成比 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| ベトナム | 148,486人 | 約44% | 最大勢力だが伸び率は鈍化 |
| インドネシア | 69,537人 | 約21% | 増加ペースが急速 |
| ミャンマー | 35,640人 | 約11% | 国内切替中心で増加 |
これら3カ国で全体の約7割を占めており、東南アジアが特定技能制度の中心的な供給地域であることは変わりません。
ただし、数字だけでは見えにくい重要なポイントがあります。ミャンマーの人数増加の多くは、日本国内にすでに在留していた留学生や技能実習生からの「資格変更」によるものと指摘されています。つまり、海外からの新規入国という観点では、実際の供給力は大きく制限されているのが現状です。
なぜインドネシア人材は入国が早いのか
ミャンマー人材の入国が遅れがちな一方で、インドネシアからの来日は比較的スムーズに進むケースが多いとされています。その背景には制度面と供給体制の差があります。
第一に、インドネシアでは海外就労を管轄する政府機関(BP2MI)が制度の中心となり、海外就労手続きのデジタル化や透明化を進めています。日本との二国間協力覚書(MOC)に基づく枠組みも整備されており、送り出しから入国までの手続きが比較的明確です。
第二に、供給母集団の大きさです。インドネシアでは特定技能試験や日本語試験の受験者が多く、合格者の層が常に厚いことが指摘されています。これにより、日本企業が採用を決めてから入国までの期間を比較的短く抑えやすい環境が形成されています。
第三に、産業分野との適合です。特定技能制度では飲食料品製造業や介護分野の受入れが特に多く、これらの分野でインドネシア人材の割合が高まっています。
結果として、企業側から見ると「採用してから実際に働き始めるまでの見通し」が立てやすい国として、インドネシアの評価が高まっています。
ミャンマー人材が直面する構造的な制約
一方で、ミャンマー人材の来日が難しくなっている背景には、個々の人材の能力とは無関係の制度的要因があります。
まず、国内情勢の不安定化に伴い、若年層の出国手続きが不透明になっている点が挙げられます。徴兵制度の導入や行政手続きの制限により、パスポート取得や出国許可の見通しが立ちにくい状況が続いています。
また、海外就労に必要な登録証の発行制限など、出国管理の強化も指摘されています。これにより、企業が採用を決定しても、実際の出国までに長い時間がかかるケースが増えているとされています。
さらに、海外労働者の収入に対する送金規制など、制度変更の影響も人材の海外就労意欲に影響を与えていると分析する専門家もいます。
採用戦略は「入国スピード」を前提に再設計へ
こうした状況を踏まえると、2026年以降の外国人採用では「どの国の人材を採るか」だけでなく、「いつ入国できるか」という視点が重要になります。
短期間で人材を確保する必要がある場合は、入国手続きの透明性が比較的高い国を優先する企業が増えています。一方、ミャンマー人材については、日本国内に在留する留学生や技能実習生からの切り替え採用を中心に活用する動きも見られます。
特定技能制度の国籍構成は、かつての「ベトナム一強」から徐々に多極化しつつあります。今後の採用戦略では、各国の政治状況や制度運用を含めた総合的な視点が求められるでしょう。









