これまで特定技能の採用で見落とされがちだったのが、「試験日程」という構造的な待ち時間です。面接や内定は前に進んでいるのに、試験が年に数回しかなく、次の機会を待つ間に候補者の気持ちや生活が変わってしまう。現場では、そうした時間のロスが採用難の一因になってきました。
試験が「年数回」から「随時」へ 待ち時間が構造的に縮む
このボトルネックに風穴を開けるのが、農林水産省所管分野の一部試験で進むCBT方式(テストセンター方式)への移行です。外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)は、国内で実施する「飲食料品製造業」「外食業」の特定技能試験(1号・2号)を、2026年度からCBT方式へ変更すると周知しています。従来は年度内の実施回数が限られていましたが、CBT移行後は年間を通じて継続的に実施し、会場も大幅に増やす方針です。あわせて、CBT会場の公表と予約開始は2026年5月頃、試験開始は2026年6月頃を予定するとされています。(otaff1.jp)
企業の採用戦略として重要なのは、この変更を制度の説明に留めず、採用の組み立てを変える材料として使うことです。試験が限られた日程で行われる前提では、採用はどうしても試験に合わせる設計になり、面接時期や入社時期は固定化しやすくなります。一方、試験機会が増え、受験地も広がるなら、採用は欲しい時に採る方向へ近づきます。つまり、採用計画の主導権を、試験カレンダーから自社の人員計画へ取り戻しやすくなります。
その際、誤解してはいけないのは「必ず最短で採用が半分になる」といった断定です。実際のリードタイムは、候補者の学習状況、受験枠の空き、合否、在留手続きの進捗など複数要因で変動します。ただ、少なくとも試験機会が少ないために待つという純粋な待ち時間は減らせる余地が広がります。ここに、採用の速度を上げる現実的な可能性があります。
制度変更を「採用フロー」に落とし込む 企業側の段取りが差になる
下表は、企業側の実務に関係するポイントを、従来とCBT移行後で整理したものです(国内試験であり、海外実施分の運用は別途確認が必要です)。
| 観点 | 従来(年度内の実施回数が限定) | 2026年度〜(CBT方式・国内) |
|---|---|---|
| 実施頻度 | 年度内で限られた回数 | 年間を通じて継続的に実施(年末年始・祝日等は除外あり) |
| 会場 | 全国で十数会場程度 | 数十か所以上へ拡大予定 |
| 予約・開始時期 | 期ごとの日程に合わせて対応 | 会場公表・予約開始は2026年5月頃、試験開始は2026年6月頃(予定) |
| 不合格時の影響 | 次回日程まで待ちが発生しやすい | 次の機会を取り直しやすく、再挑戦の計画を立てやすい |
| 採用設計 | 試験に合わせる採用になりやすい | 欲しい時期から逆算する採用に寄せやすい |
では、企業は何から手を付けるべきでしょうか。要点は3つです。
第一に、内定から受験までを一つの業務フローとして固定化します。内定を出した後に誰が、いつ、どう予約し、何を準備するかが曖昧だと、制度が便利になっても速度は上がりません。採用担当、現場、支援側(登録支援機関や教育機関)の役割を決め、内定直後に受験計画が動き出す形にします。
第二に、教育を長期の見守りから短期の仕上げへ寄せます。通年化で重要なのは、候補者の学習の山場を、受験日に合わせて作りやすくなる点です。たとえば、専門用語や現場手順の理解など、試験に直結する範囲を先に固め、足りない部分を補う形にすると、受験計画が崩れにくくなります。
第三に、不合格は撤退ではなく再設計に切り替えます。試験機会が増えるほど、一回の結果に採用計画全体が振り回されにくくなります。もちろん再受験の条件や間隔は試験ごとのルール確認が必要ですが、少なくとも従来より次の手を用意しやすくなるのは確かです。
採用の付加価値は「スピード」へ 候補者の離脱を減らす発想
採用競争が激しい局面では、候補者にとって「いつ働けるか」は大きな判断材料です。試験の通年化は、企業が候補者に提示できる見通しを改善し、途中離脱のリスクを下げる方向に働きます。制度変更を待つのではなく、変更を前提に社内の採用フローを先に整える企業ほど、同じ市場で一歩先に進めます。
出典:外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)(otaff1.jp)










