【2026年6月開始】「特定在留カード」で変わる企業実務 ワンストップ化を“安心”につなげる準備

特定在留カード

外国人雇用の現場では、在留資格の更新や住所変更、本人確認など、日々の事務が積み重なります。2026年6月14日から、在留カードとマイナンバーカードの機能を一体化した「特定在留カード」の交付が始まるとされ、手続きの流れが整理される見通しです(出入国在留管理庁)。

ポイントは「カードが一枚になる」こと自体より、入管庁と自治体にまたがっていた手続きが、一定程度ワンストップ化されることにあります。現場の混乱を減らすには、制度のメリットだけでなく、移行期ならではの注意点まで含めて社内で共有しておくことが欠かせません。


まず押さえたい「何が変わるのか」

自治体向けの整理資料では、在留カードとマイナンバーカードが一体化され、「特定在留カード」として発行されることで、本人負担の軽減と行政事務の効率化が見込まれるとされています。また、一体化は本人の希望に基づく運用(従来どおり2枚利用も可)で進む想定です。

加えて、在留カードのICチップ情報を読み取って確認するための公的アプリは、すでに入管庁名義で提供されています。企業側の本人確認や、カード真贋の確認フローを見直す際の手がかりになります(在留カード等読取アプリケーション)。


企業実務の「変化点」を4行で整理

論点これまで(現行)2026年6月以降企業がやること
カードの持ち方在留カード(必須)+マイナンバーカード(任意)一体化カードを選ぶ人も、2枚のままの人も併存「一体化/非一体化」両方のケースで手順を用意
住所変更などの手続き入管・自治体それぞれで関与する場面がある手続きの効率化・一元化が進む想定住所変更時の社内チェック項目を更新
本人確認の精度目視確認が中心(写し保管+期限管理)ICチップ読取の活用が広がる可能性読取アプリの利用ルール、同意の取り方を整備
運用の難しさ期限の見落とし、情報更新の遅れが起きやすい移行期は様式・持ち方が混在し、逆に迷いやすい「いつ・誰が・何を確認するか」を固定化

制度設計の大枠(効率化・一元化、一体化は希望制、移行期は併存)について、資料にまとめ明確に示す自治体もでてきています(東京都港区芝地区総合支所)。


「便利さ」を“安心”に変えるための注意点

1)移行期は「混在」が前提になります

一体化は希望制とされており、社員全員が同時に切り替わるわけではありません。しばらくは「一体化カードの人」「従来どおり2枚の人」が同じ職場に混在します。担当者が迷わないよう、本人確認・写し保管・期限確認の手順を一枚にまとめ、運用を固定することが重要です。

2)ICチップ確認は有効だが「万能」とは言いません

入管庁の読取アプリは、ICチップに記録された情報を表示し、カードが偽造でないか確認する用途として説明されています。
一方で、「これで不法就労リスクがゼロ」などと断定するのは適切ではありません。確認を強化する手段にはなりますが、雇用側に求められる確認・記録・更新の実務が不要になるわけではないためです。

3)社員の心理面に配慮した説明が欠かせません

カードと行政情報がつながる話は、外国人社員にとって「監視が強まるのでは」という不安につながりがちです。会社としては、在留管理や本人確認の目的、扱う情報の範囲、保管の有無を簡潔に説明し、同意の取り方を整えるのが現実的です(特に読取行為を社内ルール化する場合)。金融機関でも、IC読取時の同意や、同意しない場合の代替(目視確認)を案内している例があります。


2026年6月に向けた「3ステップ」準備

  1. 公式情報の確認ルートを固定する
    開始日や運用の細部は更新され得ます。社内の参照先(入管庁・デジタル庁・自治体通知など)を確認し、更新があれば担当者が反映する仕組みにします。
  2. 本人確認フローを「混在前提」で作り直す
    一体化カード/従来カードのどちらでも、同じ粒度で期限・氏名・在留資格等の確認ができるチェックシートにします。IC読取を使う場合は、同意文言と実施頻度(例:更新時、年1回)もセットで決めます。
  3. 社員向け周知は「短い多言語」で
    長文よりも、「何が便利になるか」「会社は何を確認するか」「困ったら誰に相談するか」の3点に絞った案内が有効です。移行期の不安を減らし、更新漏れなどの二次トラブルも抑えられます。


DXは「事務の省力化」だけでなく「信頼づくり」

在留カードとマイナンバーカードの一体化は、外国人本人の手続き負担を軽くし、行政側の運用を整理する狙いがあります。
企業にとっては、期限管理や本人確認を「人の記憶と目視」に頼ってきた部分を、混在期でも回るルールに置き換える好機です。

便利さは、それだけでは安心になりません。確認手順を整え、説明を尽くし、社員が不安を抱えたときにすぐ相談できる窓口を置く。そうした地味な準備が、制度変更を現場の信頼につなげます。