日本はかつて外国人労働者を受け入れる際に、永住を含めた長期的な定着ルートを緩やかに設計してきた。5年間の就労実績を重ねれば将来的に永住の申請資格を得られるとの期待は、一定の魅力を持っていた。しかし、隣国や欧米諸国がより確実性と速度を重視した「永住への道」を打ち出し始めるなか、日本の制度は相対的に魅力を失いつつある。
韓国はこの数年で非専門職の外国人労働者に対する在留の道を大きく転換させた。従来のE-9ビザから、一定の就労期間を経た後に熟練技能を認めるE-7-4への切り替えを可能とし、この枠を大幅に拡大している。加えて過疎地域での就労・居住を条件に、早期の長期在留資格につながる制度を整えつつある。こうした施策は、単なる労働力の確保ではなく、外国人の地域定着を促す仕組みといえる。また、宿泊・飲食業など従来日本が特定技能で受け入れてきた分野でも条件を緩和し、高い賃金水準と家族帯同の見通しを示すことで、若年層の関心を引きつけている。
欧米では、制度の設計思想自体が日本と異なる。ドイツは2024年、「オポチュニティカード(Opportunity Card)」と呼ばれる新たな制度を導入した(ドイツ連邦共和国大使館)。これは非EU国籍の者が事前の雇用契約なしにドイツに渡航し、1年間の滞在中に就職先を探すことを可能とする。一定の学歴や語学力を満たせば入国が認められ、ドイツ国内での就労機会を得るための足がかりとなる。永住権への明確な保証ではないが、就職と定住を見据える道を開くものとして機能している。カナダでは、専門職の人材に対して「教育+永住権」というルートを提供するなど、人材を長期的な社会構成員として位置づける制度設計が進む。
このような国際的な潮流のなかで、日本の在留資格「特定技能」の位置づけを冷静に見直す必要がある。特定技能には「1号」と「2号」があるが、永住権取得の観点では明確な差がある。日本の永住許可制度は原則として10年以上の日本在留を必要とし、そのうち5年以上は就労資格または居住資格による在留が求められる。特定技能1号は在留期間に上限があり永住申請の要件を満たせない。これに対し特定技能2号は在留期間制限がなく、要件を満たせば永住権申請が可能となる条件を備える。ただし、2号への移行後も最低5年以上の在留や他の永住要件をクリアする必要がある。単に2号を取得した段階で永住が確約されるわけではない。こうした制度設計の曖昧さは、外国人労働者に将来の見通しを示しにくくしている。
とりわけ家族帯同の条件や生活基盤の整備という点で、日本は他国と比して見劣りする側面がある。特定技能1号では家族帯同が認められない一方で、欧米や韓国では一定の段階で家族を呼び寄せる仕組みを整え、長期的な定住を支えるインセンティブを強めている。これらは単に労働力を確保するだけでなく、地域社会への統合を視野に入れた受け入れ政策である。
日本企業の現場では、労働者の確保競争が激化している。給与水準の競争だけでは解決できない状況にあることは明らかだ。求職者にとって「永住への道筋」が具体的で確実であることは、働き先を選ぶ際の重要な判断材料になる。企業が外国人労働者を誘致・定着させるためには、単なる雇用契約以上に、長期的なキャリアパスや生活設計を支える制度との連動を提示する必要がある。
日本が今後も国際的な人材獲得競争に勝ち残るためには、制度面の再構築が欠かせない。永住権取得に向けたステップを明確化し、外国人労働者に将来像を描かせる制度設計を進めること。それは単に個々の企業の採用戦略の問題ではなく、日本社会全体が持続的な成長を実現するための基盤となる。










