外国人雇用における試用期間中の解雇 ― 法的・実務的リスクをどう抑えるか

東京の夕景、雲間から日が射している

外国人材の採用が広がる中、試用期間中の雇用終了をめぐるトラブルも目立ちます。企業側は「試用期間だから柔軟に判断できる」と考えがちですが、試用期間は“自由に解雇できる期間”ではありません。解雇の有効性は、通常の解雇と同様に、合理性や相当性が問われます。さらに在留資格が就労契約に紐づく類型では、雇用終了に伴う届出や支援の実務も絡み、対応を誤ると紛争や行政手続きの負担が大きくなります。

以下では、試用期間中の解雇について、法的な位置づけと実務上の注意点を整理します。


試用期間は「お試し」ではない ― 法的性質と判断枠組み

厚生労働省は、試用期間について、労働者の適性を見極める趣旨から「解約権が留保された試用期間」と解されることがある、と整理しています。そのうえで、試用期間である以上、留保解約権の行使は通常より広い範囲で認められ得るものの、試用期間の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる場合に限られるとしています(厚生労働省サイト)。

また、解雇一般については、労働契約法16条が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合、権利濫用として無効になる旨を定めています。厚労省資料でも同趣旨が明記されています。

外国人材であっても、この枠組みは変わりません。むしろ実務上は、言語の壁や業務経験の差がある分、企業側の説明・指導の程度や、改善機会を与えたかどうかが争点になりやすい点に注意が必要です。ここは「法的義務だから必ず母国語で」というより、紛争予防の観点から、理解可能な形で期待水準を伝え、指導経過を残すことが重要だと捉えるのが現実的です。


「14日以内なら即時解雇できる」の誤解 ― 解雇予告のルール

試用期間中の解雇で混同が多いのが、「解雇の有効性」と「解雇予告(30日前予告・予告手当)」の問題です。

労働基準法は原則として、解雇の際に30日前予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当を求めています(労基法20条)。
一方で、一定の場合にはこの予告義務を免除する例外があり、「試の使用期間中の者」については、雇入れの日から起算して14日以内であれば、解雇予告の適用が除外されるとされています(労基法21条の体系)。

ただし、ここで免除されるのはあくまで「予告義務」であり、解雇が直ちに有効になることを意味しません。14日以内であっても、合理性・相当性を欠く解雇は無効となり得ます(労働契約法16条の枠組み)。


特定技能など「届出が必要な在留資格」の場合 ― 雇用終了後の実務が増える

就労系在留資格の中でも、特定技能では、雇用契約の終了や変更などが生じた場合、受け入れ機関(受け入れ企業)による届出が求められています。出入国在留管理庁は、特定技能雇用契約を終了した場合などに、事由が生じた日から14日以内の届出を案内しています。
また、特定技能受け入れ機関による「受入れ困難に係る届出」についても、手続案内があります。

さらに、特定技能では支援計画や生活支援の枠組みがあるため、雇用終了後も、転職(転籍)を希望する本人への情報提供や、行政手続きの案内など、実務対応が残ります。支援費用を本人に負担させないことが求められる点や、帰国費用について「本人負担が原則」としつつ、本人が負担できない場合は受入れ機関側の対応が求められるとする整理も示されています(出入国在留管理局のFAQ)。

このため、「採用を見直したい」という局面でも、企業側の手続き・説明責任が軽くなるとは限りません。むしろ、拙速に進めると、紛争・届出・支援の三点で負担が膨らむおそれがあります。


トラブルを減らすための基本設計 ―「解雇」より先に整えるべきこと

試用期間中の解雇は、最終手段として残しつつ、実務上は次の三つを先に整えることが、結果的にコストを下げます。

第一に、採用時点で「何ができれば合格なのか」を曖昧にしないことです。職務内容、期待水準、評価の時期と観点を、できれば多言語も含めて明確にし、本人の理解を確認しておくと、後の食い違いを減らすことができます。

第二に、指導と評価の記録を随時残すことです。注意・指導があった場合は、日時、内容、本人の反応、次回までの目標を短くても記録し、必要に応じて通訳同席や書面の翻訳など、理解可能性を補強します。これは「責めるため」ではなく、適正な評価過程を示すための材料になります。

第三に、合わない理由が能力不足というより「配置・適性のミスマッチ」にある場合、解雇だけを選択肢にしないことです。特定技能では、制度上も転職が想定される局面があり、登録支援機関等と連携して、本人の希望を踏まえた次の選択肢を探る方が、紛争化を避けやすい場合があります。