もし外国人労働者がいなくなったら?2040年外国人比率10%のニュースに抵抗を示す前に

日本の街の空撮写真

「2040年には外国人比率が10%を超える」。2025年7月、当時の法務大臣も言及したこの見通しに対し、あるテレビ調査では半数を超える人が「外国人が増えるのは嫌だ」と答えました。その気持ちは理解できます。しかし、その「嫌だ」という気持ちの裏には、私たちが気づかないうちに、外国人労働者によって支えられている日本の「当たり前」の暮らしがあります。

もし、今この瞬間、日本で働く単純労働者の外国人全員が帰国してしまったら…?

明日の暮らしに何が起こるか、想像してみましょう。


農業・漁業:朝の食卓から「旬の味」が消える

朝、いつものスーパーに行くと、新鮮な野菜や果物の棚ががらんとしています。現在、日本の農業・漁業分野では、約5.6万人もの技能実習・特定技能外国人が食料生産を支えています。これは、この分野の全労働者の約4.3%にあたります。彼らがいなくなれば、野菜の収穫や漁船での作業が滞り、食料供給網が崩壊。あなたが当たり前だと思っていた、安くて新鮮な旬の食材は、あっという間に高価な「贅沢品」になってしまうでしょう。

飲食料品製造業:いつものお惣菜が買えなくなる

スーパーの惣菜コーナーに行くと、いつものお弁当やパン、冷凍食品が並んでいません。約12.7万人の技能実習・特定技能外国人が働く食品工場は、この分野の全労働者の10%以上を占めています。彼らがいなくなれば、私たちの食生活を支える大量生産のシステムが機能しなくなり、日常の「手軽な食事」が手に入らなくなります。

介護:親の介護施設が閉鎖されるかもしれない

介護サービスを利用しているあなたの両親。ある日、施設から「人手不足で閉鎖する」という連絡が入ります。現在、約10.2万人の技能実習・特定技能外国人が日本の介護現場を支えています。これは、全介護職員の約5%にあたります。彼らがいなくなれば、多くの介護施設が運営を維持できなくなり、家庭での介護の負担が急増します。

宿泊業:旅行に行けなくなる

待ち望んだ週末の家族旅行。しかし、予約したホテルや旅館から「スタッフ不足のため休業」との連絡が。宿泊業では、約2,500人の特定技能外国人が清掃や接客を担っています。これは、まだ全労働者の1%未満ですが、特定の地域や施設では、彼らが不可欠な戦力となっています。彼らがいなくなれば、日本の観光業は立ち行かなくなり、国内旅行すら難しい時代が来るかもしれません。

外食業:いつものレストランが閉店に

久しぶりに家族で行こうとした近所のファミリーレストラン。しかし、入り口には「人手不足のため営業停止」の張り紙が。外食業では、約8,800人の特定技能外国人が厨房やホールで活躍しています。彼らがいなくなれば、外食の機会が激減し、食事ができる場所を探すだけでも一苦労するでしょう。

ビルクリーニング:街が薄汚れていく

駅のエスカレーターやショッピングモールのトイレが、なんだか薄汚れています。ビルクリーニング分野では、約4,400人の技能実習・特定技能外国人が日本の街の清潔さを保っています。彼らがいなくなれば、街全体の清潔さが保てなくなり、私たちの生活環境の質が著しく低下します。

建設業:家の修繕がいつまでも終わらない

自宅の老朽化した壁の修繕を依頼しても、業者から「職人がいないので数年待ち」と告げられます。建設業では、約6.7万人の技能実習・特定技能外国人が重要な役割を担っています。これは、全建設就業者の1%強にあたります。彼らがいなくなれば、道路や橋のインフラ整備から、自宅のちょっとしたリフォームまで、あらゆる建設工事が停滞します。

自動車整備:愛車の車検が受けられない

愛車の車検の時期が来ましたが、どの整備工場も予約でいっぱいです。自動車整備分野では、約1,300人の技能実習・特定技能外国人が働いています。彼らがいなくなれば、車の修理やメンテナンスが滞り、私たちの移動手段の確保すら困難になるでしょう。

あなたの「当たり前」は、誰かの仕事で成り立っている

「外国人が増えるのは嫌」という気持ちの裏には、私たちの生活の「当たり前」が、多くの外国人労働者によって支えられているという事実があります。スーパーに並ぶ安価な食料品も、清潔な街並みも、手軽に楽しめる旅行も、外国人労働者なしには成り立ちません。

外国人材との共生は、もはや遠い国の話でも、単なる道徳論でもありません。それは、私たち自身の豊かな暮らしを守るための、最も現実的な選択肢なのです。