迫害や紛争で祖国を追われた難民を、留学や就労を通じて日本に受け入れる取り組みが民間で少しずつ広がっています。特に、ミャンマーから逃れたロヒンギャ難民など、難民キャンプで生活する人々を、日本の「特定技能」制度を通じて労働者として迎える新たな計画は、国際社会において大きな意義を持つ動きとして注目されています。
6月20日の「世界難民の日」に寄せられたニュース「難民キャンプから特定技能で日本へ、NPO「双方にメリット」(朝日新聞)は、長年「難民認定率の低さ」が国際的な課題とされてきた日本が、人道支援と国内の深刻な人手不足を結びつける、新たなフェーズに入ったことを示しています。
制度の壁を越える「別のルート」の必要性
日本の難民認定制度は、国際社会から見て極めて厳格であり、認定率の低さが長年の課題とされてきました。この制度を通じての受け入れが難しい現状があるからこそ、「留学」や「就労」といった正規の在留資格を利用した「補完的な受け入れ(Complementary Pathways)」が重要性を増しています。
- 日本の難民認定の現状: 難民認定申請者数に対する認定者数が少なく、長年にわたり国際社会から人道的な対応を求められてきました。
- 特定技能の活用: 特定技能制度は、介護や製造、建設といった日本が最も人手不足に苦しむ分野に特化しています。難民キャンプの若者は、「世界で活躍できるビジネスパーソンになりたい」と目を輝かせ、高い学習意欲と労働意欲を持っています。彼らをこの制度で受け入れることは、日本の経済的ニーズと、難民の自立支援という人道的な目的を直接結びつける革新的な方法となります。
「希望」を提供する具体的な取り組み
バングラデシュ南東部のロヒンギャ難民キャンプで活動するNPO法人Mobility for Humanity(東京)などの団体は、この新たなルートのパイオニアです。
- スキルアップと未来の提供: NPOは、大学進学や就職に向けたオンライン講座を提供し、難民キャンプという閉鎖的な環境にいる若者に、スキルアップと外部世界への扉を開いています。
- 尊厳の回復: 難民の若者にとって、これは単なる労働機会の提供に留まりません。働くこと、学び続けることによる尊厳の回復、そして「世界の難民の力になりたい」といった、未来への希望を与えることに直結します。
世界の中での日本が果たす新たな「意義」
この民間主導の動きが政府の特定技能制度と結びつくことは、国際社会において日本が果たす役割を大きく変えるものです。
- 国連が求める「機会の提供」: 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民の自立を促すため、第三国への定住だけでなく、第三国の教育・労働市場への直接アクセスを可能にするルート(補完的な受け入れ)の拡大を各国に強く推奨しています。日本が特定技能を通じて難民キャンプの若者を受け入れることは、まさにこの国際的な要請に応えるものです。
- 人道支援の「質」の向上: これまでの日本の難民支援は、主に資金援助という形が中心でした。しかし、この取り組みは、「資金援助」から「機会の提供」へと、支援の形態を質的に向上させることを意味します。これは、難民を抱えるアジア地域において、日本が人道支援と経済的実利を結びつける、先進的なリーダーシップを示すものとなります。
- 国際的な信頼の回復: 難民認定率の低さで批判されてきた日本が、別の経路で難民の受け入れと自立支援を積極的に行うことは、国際社会における人道的な信頼と評価の向上に大きく貢献します。
この特定技能を活用した難民受け入れの動きは、日本の国際貢献と国内のニーズが結びついた、「日本にしかできない支援」の形を示していると言えるでしょう。









