日本で働いた後に帰国した外国人労働者らの住民税未納問題が、新たな課題として浮上している。総務省は、未納の実態把握と徴収強化に向けた実態調査に乗り出す方針を固めた。住民税は前年の所得に基づいて翌年に支払う仕組みのため、帰国タイミングによっては未納のまま出国するケースが後を絶たない。識者は「外国人労働者個人を責めるだけでなく、制度自体の改善が急務だ」と指摘する。
徴収漏れの実態と制度の周知不足
住民税は毎年1月1日時点で日本に住所がある人に対し、前年の所得に応じて課税される。通常、徴収は6月から始まるため、年度途中に帰国する外国人労働者は、未徴収の税額が残ってしまう。総務省はこれまで、出国時に残額をまとめて支払う「一括徴収」や、本人に代わって納税を代行する「納税管理人」の指定を求めてきた。しかし、これらの制度は十分に周知されているとは言えず、徴収漏れにつながっているとみられる。
特定技能制度と住民税徴収のギャップ
特に問題視されているのが、2019年に創設された在留資格「特定技能」だ。特定技能は最長5年間日本で働くことができ、技能実習制度に比べて転職が可能な点が特徴だ。しかし、この制度下で働く外国人労働者が転職や帰国を繰り返す場合、納税管理が複雑になる。
特定技能制度には、外国人労働者が帰国する際に住民税を確実に納めるための明確な仕組みが確立されているとは言い難い。多くの外国人労働者は、住民税の仕組み自体を理解しておらず、雇用主も納税手続きに関する十分なサポートを提供できていないのが現状だ。このため、未納が発生しても、日本に納税義務者を特定できず、徴収が困難になるケースが多い。
求められる制度の改善
今回の総務省による実態調査は、こうした課題を洗い出し、効果的な徴収策を検討するための第一歩となる。専門家は「納税は国民・外国人を問わず公平に課せられる義務だが、徴収を確実にするためには、外国人労働者や雇用主だけに責任を負わせるのではなく、国がシステムとして支えるべきだ」と指摘する。
具体的には、特定技能の外国人労働者が帰国する際に、出国手続きと連動して住民税の納付状況を確認できる仕組みの構築や、雇用主に対する納税管理の義務付けなどが考えられる。また、入国時から日本の税制度に関する研修を義務化することも有効だろう。
今回の住民税未納問題は、外国人材の受け入れを拡大する日本社会が直面する、制度的な課題を浮き彫りにしている。外国人労働者が安心して働き、納税義務を履行できる環境を整備することが、今後の多文化共生社会の基盤を築く上で不可欠となる