目次
- 1 はじめに:日本の「人手不足」と外国人材の今
- 2 日本に暮らす外国人材、その顔ぶれは?在留外国人国籍別ランキングTOP10
- 3 国籍別に見る外国人材の「目的」と「在留資格」:ブルーカラーとホワイトカラーの傾向
- 3.1 ▶︎ 中国:多様なバックグラウンドを持つ「多才な存在」
- 3.2 ▶︎ ベトナム:急増する「日本の現場を支える担い手」
- 3.3 ▶︎ 韓国:隣国ゆえの「親和性の高さ」と「多様な活躍」
- 3.4 ▶︎ フィリピン:介護・製造現場で光る「明るいホスピタリティ」
- 3.5 ▶︎ ネパール:留学から就労へ、急成長する「新しい労働力」
- 3.6 ▶︎ ブラジル:日系コミュニティを基盤とした「定着の高い人材」
- 3.7 ▶︎ インドネシア:技能実習・特定技能で「急上昇の働き手」
- 3.8 ▶︎ ミャンマー:厳しい情勢から「日本での新たな挑戦」
- 3.9 ▶︎ 台湾:地理的近さゆえの「多様なキャリア選択」
- 3.10 ▶︎ 米国:高度な専門性を活かす「国際的なプロフェッショナル」
- 4 まとめ:外国人材との共生が、日本の未来を拓く
はじめに:日本の「人手不足」と外国人材の今
「日本人材の確保が難しい…」「新しい労働力をどう確保するか?」――多くの企業が抱えるこの課題に対し、外国人材への期待は日に日に高まっています。コンビニエンスストア、飲食店、介護施設、製造現場、そしてIT企業まで、今や外国人材の存在なくして日本の経済は成り立ちません。
しかし、「外国人採用」と一言で言っても、その背景は実に多様です。「どの国の人が日本にたくさん来ているのか?」「彼らはどんな目的で、どんな仕事をしているのか?」「採用にあたって、どんな点に注意すればいいのか?」といった疑問をお持ちの採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、法務省出入国在留管理庁の最新データ(2024年末時点)を基に、日本に在留する外国人の現状を徹底解説します。単なる数字の羅列ではなく、それぞれの国籍が持つ文化や背景、そして日本での暮らしの目的まで深く掘り下げ、貴社の外国人採用・定着に役立つ情報をお届けします。
日本に暮らす外国人材、その顔ぶれは?在留外国人国籍別ランキングTOP10
まず、日本に住民登録している外国人の国籍別ランキングを見ていきましょう。これは、日本の社会に今、どのような国の人々が最も多く暮らしているかを示す重要な指標です。
順位 | 国籍 | 人数(2024年末時点) |
1 | 中国 | 873,286人 |
2 | ベトナム | 634,361人 |
3 | 韓国 | 409,238人 |
4 | フィリピン | 341,518人 |
5 | ネパール | 233,043人 |
6 | ブラジル | 211,907人 |
7 | インドネシア | 199,824人 |
8 | ミャンマー | 134,574人 |
9 | 台湾 | 70,147人 |
10 | 米国 | 66,111人 |
(出典:法務省出入国在留管理庁「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」2024年末時点より筆者作成)
このデータから、東アジア・東南アジアからの人材が圧倒的多数を占めていることがわかります。特に中国、ベトナム、韓国が上位を占め、近年の増加が顕著なネパール、インドネシア、ミャンマーの台頭も見逃せません。
では、これらの人々はどのような目的で日本に来て、どのような仕事に就いているのでしょうか。それぞれの国の特性と、日本の労働市場における役割を深掘りしていきましょう。
国籍別に見る外国人材の「目的」と「在留資格」:ブルーカラーとホワイトカラーの傾向
外国人材の採用を考える上で、彼らが持つ「在留資格」と「日本での主な目的」を理解することは不可欠です。在留資格によって就ける仕事の種類や活動範囲が厳しく定められており、これを誤ると不法就労となるリスクがあるためです。
ここでは、上位国籍を中心に、その傾向を「ブルーカラー(製造業、建設業、介護、農業など現場の仕事)」と「ホワイトカラー(IT、通訳、営業、管理職など専門性の高い仕事)」の視点も交えて解説します。
▶︎ 中国:多様なバックグラウンドを持つ「多才な存在」
- 主な在留資格と目的:
- 留学: 日本の大学や専門学校、日本語学校で学ぶ留学生が非常に多いです。卒業後、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格に切り替えて日本企業に就職するケースが一般的です。
- 技術・人文知識・国際業務: ITエンジニア、通訳、貿易事務、語学教師など、専門知識を活かしたホワイトカラー職に就く人が多数派です。
- 永住者/日本人の配偶者等: 長期的に日本に定住し、多様な職種に就いています。
- 経営・管理: 日本で起業したり、企業の管理職を務めたりするケースも見られます。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー・ホワイトカラーの双方で活躍: 中国人材は、特定技能や技能実習でブルーカラーの現場で働く方もいますが、全体としては「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つホワイトカラー職の比率が高い傾向にあります。
- 日本語能力が高い傾向: 日本語教育の普及により、日本語能力が高い人材が多く、コミュニケーション能力に期待が持てます。
- 国際感覚とビジネススキル: グローバルビジネス経験や高いITスキルを持つ人材も多く、多様な分野での活躍が期待されます。
▶︎ ベトナム:急増する「日本の現場を支える担い手」
- 主な在留資格と目的:
- 技能実習: 製造、建設、介護、農業など、幅広い分野で技能を習得するための実習生として来日するケースが圧倒的に多いです。
- 特定技能: 技能実習を修了後、または特定技能試験に合格して、特定産業分野の即戦力として働くための在留資格です。
- 留学: 日本語学校や専門学校で学び、その後、特定技能や技術・人文知識・国際業務への移行を目指す人も少なくありません。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー職が中心: ベトナム人材は、日本の人手不足が深刻な製造業や介護、農業などの現場を支えるブルーカラー人材として非常に重要な存在です。
- 勤勉で真面目: 勤勉で真面目な国民性が評価されており、チームワークを重んじる傾向があります。
- 若年層が多い: 労働意欲の高い若い世代が多く、長期的なキャリア形成を支援することで定着に繋がりやすいでしょう。
▶︎ 韓国:隣国ゆえの「親和性の高さ」と「多様な活躍」
- 主な在留資格と目的:
- 永住者/日本人の配偶者等: 歴史的経緯もあり、長年日本に暮らす「特別永住者」を含め、永住者の比率が高いです。
- 技術・人文知識・国際業務: IT、コンテンツ産業、観光、通訳など、専門性の高い分野で活躍するホワイトカラー人材も多数います。
- 留学: 日本のポップカルチャーやファッションに関心を持つ若い世代の留学生も多いです。
- 特徴と採用におけるポイント:
- 多様な職種で活躍: ブルーカラー・ホワイトカラーの明確な偏りはなく、幅広い分野で活躍しています。
- 日本語能力が高い人材も多い: 地理的・文化的近さから、日本語学習者が多く、流暢な日本語を話す人材も少なくありません。
- 消費者としても存在感: ファッション、コスメ、エンタメなど、日本の流行に敏感な層も多く、マーケティング視点でも注目されます。
▶︎ フィリピン:介護・製造現場で光る「明るいホスピタリティ」
- 主な在留資格と目的:
- 定住者/日本人の配偶者等: 日系フィリピン人およびその家族が多く、彼らは在留活動に制限がなく、様々な職種に就いています。
- 技能実習/特定技能: 介護分野での活躍が特に顕著ですが、製造業などでも技能実習生・特定技能人材として多く働いています。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー職が中心: 介護、製造業など、人手不足の現場を支えるブルーカラー人材として期待されています。
- 英語能力が高い: 英語が公用語の一つであり、英語でのコミュニケーションがスムーズな人材が多いです。
- ホスピタリティ精神: 陽気で温厚な国民性で、ホスピタリティを求められる介護やサービス業での適性が高いと言われます。
▶︎ ネパール:留学から就労へ、急成長する「新しい労働力」
- 主な在留資格と目的:
- 留学: 日本語学校での学習から始まり、その後、大学や専門学校に進学、または就職を目指す人が非常に多いです。
- 技術・人文知識・国際業務: 留学を経て、ホテル、IT、通訳など、様々なサービス業や専門職に就くケースが増えています。
- 家族滞在: 日本で働く外国人の家族に帯同して来日するケースも見られます。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー・ホワイトカラー双方で増加傾向: 留学を足がかりに、飲食業や小売業などのサービス業(ブルーカラー的側面も持つ)から、専門職(ホワイトカラー)へと活躍の場を広げています。
- 向上心が高い: 学びの意欲が高く、日本でスキルアップを図り、キャリアを築きたいと考える人材が多いです。
- 新しいコミュニティ形成: 日本での滞在期間が比較的浅い人材も多く、企業が生活面も含めたサポートを提供することで、強い信頼関係を築ける可能性があります。
▶︎ ブラジル:日系コミュニティを基盤とした「定着の高い人材」
- 主な在留資格と目的:
- 永住者/定住者: 日系ブラジル人(2世、3世)およびその家族が中心であり、彼らは在留活動に制限がなく、多様な職種に就いています。
- 日本人の配偶者等: 日本人と結婚しているケースも多いです。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー職が中心: 主に製造業の現場で活躍する日系ブラジル人が多く、日本の経済成長を支えてきた歴史があります。
- 日本語能力は個人差が大きい: 日本語を母国語としない世代もいますが、長く日本に滞在しているため日本語能力が高い人もいます。
- コミュニティが確立: 日本に日系ブラジル人の大規模なコミュニティがあり、文化的なサポートや情報交換の場が充実しています。
▶︎ インドネシア:技能実習・特定技能で「急上昇の働き手」
- 主な在留資格と目的:
- 技能実習/特定技能: 製造業、介護、農業、建設業など、様々な分野で技能実習生や特定技能人材として活躍しています。
- 留学: 日本語学校や専門学校で学び、その後就職を目指す人もいます。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー職が中心: ベトナムと同様に、日本の人手不足を補うブルーカラー人材として存在感が増しています。
- 親日感情: 日本のアニメや文化に関心を持つ若者が多く、親日感情を持つ人材が多いです。
- 真面目で協調性がある: チームワークを重んじ、真面目に業務に取り組む姿勢が評価されています。
▶︎ ミャンマー:厳しい情勢から「日本での新たな挑戦」
- 主な在留資格と目的:
- 技能実習/特定技能: 介護、建設、農業など、人手不足の分野で働くために来日する人が増えています。
- 留学: 日本語学校などで学び、その後就職を目指す人もいます。
- 特定活動: ミャンマー情勢による特例的な在留が認められているケースもあります。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ブルーカラー職が中心: 日本の現場を支えるブルーカラー人材としての役割が大きいです。
- 高い学習意欲: 日本で安定した生活を築き、スキルアップしたいという意欲が高い人材が多いです。
- 日本語学習に積極的: 日本での定着を強く望むため、日本語学習にも意欲的に取り組みます。
▶︎ 台湾:地理的近さゆえの「多様なキャリア選択」
- 主な在留資格と目的:
- 技術・人文知識・国際業務: IT、通訳、貿易、デザイン、語学教師など、専門性の高いホワイトカラー職に就く人が多いです。
- 留学: 大学、専門学校、日本語学校での学業。
- 特定活動: ワーキングホリデーなどを利用して、文化交流や短期の就労を経験する人もいます。
- 永住者: 長期間日本に滞在し、永住許可を得ている人も見られます。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ホワイトカラー職が中心: サービス業や専門職など、高い日本語能力や専門スキルを活かせるホワイトカラーの分野で活躍する傾向が強いです。
- 親日感情と文化理解: 日本の文化や習慣への理解が深く、スムーズな適応が期待できます。
- コミュニケーション能力: 日本語でのコミュニケーション能力が高い人材が多いです。
▶︎ 米国:高度な専門性を活かす「国際的なプロフェッショナル」
- 主な在留資格と目的:
- 技術・人文知識・国際業務: 英語教師(英会話スクール、学校)、IT、金融、コンサルティングなど、高度な専門性を活かしたホワイトカラー職が中心です。
- 教授: 大学教授など、教育・研究機関での活躍も目立ちます。
- 永住者/日本人の配偶者等: 日本人と結婚したり、長期滞在を経て永住許可を得たりするケースも多いです。
- 特徴と採用におけるポイント:
- ホワイトカラー職が中心: 高度な専門知識やスキル、英語能力を活かしたホワイトカラーの仕事がほとんどです。
- 多様な専門分野: 金融、IT、研究、教育、エンターテイメントなど、幅広い分野で活躍しています。
- 国際的な視点: 日本企業に多様な視点やグローバルなビジネス感覚をもたらすことが期待されます。
まとめ:外国人材との共生が、日本の未来を拓く
人手不足が深刻化する日本において、外国人材はもはや「助っ人」ではなく、日本の社会と経済を支える「重要なプレイヤー」です。今回ご紹介した各国の傾向は、あくまで一般的なものであり、個々の人材は多様なバックグラウンドとスキルを持っています。
採用担当者として重要なのは、単に国籍や人数で判断するのではなく、在留資格、日本語能力、これまでの職務経験、そして何よりも「日本でどのように働きたいか」という個人の意欲に目を向けることです。
また、採用はゴールではなくスタートラインです。彼らが日本で安心して働き、生活できるような環境を整えること(住宅支援、生活相談、日本語学習支援など)が、企業の成長、ひいては日本の社会全体の発展に繋がります。
外国人材を単なる「労働力」としてではなく、「共に未来を築く仲間」として迎え入れる視点を持つことで、貴社と外国人材双方にとって豊かな未来が拓かれることでしょう。