来る参議院選挙を前に、一部で外国人排斥や差別を煽るような主張が目立つことに、多くの市民が危機感を募らせています。先日7月9日には、那覇市役所前で市民たちがスタンディングを行い、「差別に投票しない」「人間にファーストもセカンドもない」と強く訴えました。
沖縄で活動する市民グループ「沖縄カウンターズ」のメンバーは、ナチスが障害者への公費支出を批判して支持を拡大した歴史を引き合いに出し、「各党が外国人という弱い者いじめを競っている。やめさせなければならない」と強い危機感を表明しています。また、別の女性メンバーからは、南米出身者から「日本人ファーストという言葉が怖い」という声が寄せられたといい、「『死ね、殺せ』と直接言わないだけで、差別という本質は同じだ」と憤りを隠しません。
このような排外主義的な言動は、人々の漠然とした不安に巧妙に付け込み、事態はすでに危険なフェーズに入っていると指摘されています。台湾出身の女性の夫からは、親戚から日本の状況を心配する連絡が入るといった声も聞かれ、国際社会からも日本の排外主義的な風潮が注視され始めていることが伺えます。
排外主義を訴える背景にある「不安」と「不満」
一方で、外国人排斥を訴える一部の政党や団体が、なぜそのような主張を展開するのか、その背景にある「声」にも目を向ける必要はあります。彼らの主張の根底には、経済的な不安、社会保障制度への懸念、治安悪化への懸念、あるいは文化的な摩擦といった、国民が抱える漠然とした「不満」や「不安」が存在すると考えられます。
例えば、外国人労働者の増加が賃金の低下につながるのではないかという懸念や、限られた社会保障の財源が外国人にも使われることへの不満、あるいは文化や習慣の違いから生じる摩擦などが、排外主義的な感情を煽る要因となっている可能性は否定できません。もちろん、それらの主張が差別や排斥を正当化するものであってはなりませんが、国民が抱えるこうした不安を解消する具体的な政策を示さずに、感情的な排外主義に走ることは、問題の根本的な解決にはつながりません。
深刻化する人手不足と外国人労働者の存在
日本社会は現在、深刻な人手不足に直面しており、外国人労働者の存在なしには社会インフラの維持さえ困難な状況に陥っています。特に介護や建設といった分野はすでに外国人労働者に大きく依存しており、その存在なしでは成り立たないのが現状です。
介護分野では、多くの施設が外国人介護人材を受け入れており、全体の約4割の施設で外国人介護人材が雇用されています。特に特別養護老人ホームでは76.7%の施設が雇用しているというデータもあります。また、今後の外国人介護職員の受け入れについても、「増やしたい」「現状を維持したい」と回答した施設が80~90%に上るなど、その必要性は広く認識されています。
建設業においては、外国人労働者の数は近年急増しており、2023年末時点で約17.8万人に達し、建設業全体の労働者の約7.7%を占めるまでになっています。特に技能実習生が多く、建設業界の深刻な人手不足を補う上で不可欠な存在となっています。
さらに、今後、人手不足がさらに深刻化すれば、鉄道のような分野でも外国人材の確保が不可欠となるでしょう。少子高齢化が急速に進む日本において、国内の労働力だけで社会を維持することがもはや不可能なのです。
国の少子化対策と外国人排斥の矛盾
こうした状況にもかかわらず、一部の政治家や団体が外国人排斥を煽るような主張を繰り返すことは、日本の未来を危うくする行為と言わざるを得ません。これまで政府は少子化対策に十分な手を打たず、問題の解決を先送りにしてきました。その結果として生じた人手不足を、外国人労働者に依存せざるを得ない状況にあるにもかかわらず、その責任を棚に上げて外国人労働者をスケープゴートにするのは、あまりにも無責任です。
日本の排外主義の歴史的背景と沖縄の特殊性
外国人排斥の動きは、なにも今に始まったことではありません。日本は歴史的に、いわゆる「島国根性」という言葉に象徴されるように、外部の人間を排斥する傾向が見られたことも事実です。特に沖縄は、地理的・歴史的に多様な文化が交差してきた土地でありながら、一方で外部からの影響に対して排他的な側面も持ち合わせてきたと指摘する声もあります。
しかし、現代のグローバル社会において、こうした排他的な考え方はもはや通用しません。日本が持続可能な社会を築いていくためには、多様な背景を持つ人々を受け入れ、共に生きる「共生社会」を構築することが不可欠です。
私たちにできること
今回の参議院選挙は、日本の未来を左右する重要な岐路に立たされています。私たちは、安易な排外主義に流されることなく、冷静に状況を判断し、真に日本の将来を見据えた政策を掲げる候補者や政党に投票する責任があります。
「差別に投票しない」「人間にファーストもセカンドもない」という市民の声は、まさに私たちの心に響くメッセージです。外国人労働者なしには立ち行かない日本の現実を直視し、互いを尊重し、助け合う共生社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが声を上げ、行動していくことが求められています。
今回の選挙で、あなたはどのような未来の日本を選びますか?