【解説】政府、外国人政策を「厳格管理」へ転換 永住・帰化要件の厳格化で企業に迫られるコンプライアンス

日本の街空撮写真

2026年1月23日、政府は関係閣僚会議において、外国人政策に関する新たな「総合的対応策」を決定しました。今回の改定は、高市政権が掲げる「秩序ある共生社会」を具現化するものであり、従来の人材確保を優先した拡大路線から、ルールの遵守と質の確保を重視する「厳格管理」へと大きく舵を切る内容となっています。

本稿では、今回の決定が企業実務に与える影響と、経営者が押さえておくべき法制度の変更点について解説します。


「永住」と「帰化」の選別基準が厳格化

これまで、長期就労の延長線上にあった「永住権」や「日本国籍(帰化)」の取得ハードルは、2026年を境に大きく変化します。政府は「日本社会への適応」をより厳密に評価する方針を明確にしました。

【表:永住・帰化要件の主な変更点】

項目従来の運用2026年以降の運用方針
帰化(国籍取得)居住要件「引き続き5年以上」原則「10年以上」へ引き上げ検討
※永住許可との整合性を重視
永住許可の取消虚偽申請等が主な対象税・社会保険の未納・滞納も対象に追加
※2025年施行の改正入管法規定を厳格適用
審査体制書類審査中心特定在留カードとマイナンバー連携による実態把握

特筆すべきは、2026年6月から導入される「特定在留カード」とマイナンバー制度の連携です。これにより、入国管理局は外国人の納税や社会保険料の納付状況をリアルタイムかつ正確に把握することが可能となります。従来のように、審査の直前だけ整合性を合わせるといった手法は通用しなくなります。


「日本語・社会教育」が在留資格更新の評価軸に

政府が新たに打ち出した日本語・社会制度の学習プログラム創設も、企業にとって見過ごせない変更点です。

従来、日本語教育は企業の自助努力や本人の意欲に委ねられていましたが、今後は公的な評価制度へと組み込まれます。このプログラムの受講状況や理解度が、ビザ(在留資格)の更新や変更時の審査において「重要な評価要素」として扱われる見通しです。

これにより、企業には単なる労働力の提供だけでなく、従業員が在留資格を維持できるよう、勤務時間内での学習機会の提供や進捗管理といった「育成責任」が法的に求められるフェーズに入ったと言えます。


経済安全保障と土地取得ルールの整備

議論が続いていた外国人による土地取得問題についても、今夏を目処に具体的な規制案が策定されます。

  • 国籍把握の透明化: 不動産登記等の手続きにおいて、所有者の国籍情報を明確に把握する仕組みが導入されます。
  • 重要資源の保護: 水源地や安全保障上重要な区域における、外国資本による大規模な土地取得に対し、実態把握と一定の規制が検討されています。

これは特定の国を排除するものではなく、国際的な経済安全保障の潮流に合わせた法整備の一環ですが、企業の不動産取引や工場用地の取得においても、コンプライアンス確認の手順が増える可能性があります。


不法滞在対策におけるAI活用と厳罰化

治安維持の観点からは、ルールの逸脱に対する対処が徹底されます。政府は令和12年末までに退去強制確定者を半減させる目標を掲げ、以下の対策を強化します。

  • 難民認定手続きの迅速化: AIを活用して申請の振り分けを効率化し、制度の乱用を防ぎます。
  • 送還体制の強化: 護送官付き送還の増員や、退去強制事由となる犯罪範囲の拡大により、不法滞在状態の早期解消を図ります。


経営者に求められる「適正雇用」への意識改革

今回の政策転換により、外国人社員の間で将来への不安が生じることは想像に難くありません。しかし、政府の意図は「排除」ではなく、「ルールを守る人材の適正な受け入れ」にあります。

企業経営者には、以下の3点における意識改革と実務対応が求められます。

  1. 社会保険・納税の完全履行:「手取り重視」などの温情で加入を遅らせる行為は、改正入管法下では社員の永住権を取り消しリスクに晒す行為となります。法令通りの加入と納付が、社員の身分を守る絶対条件です。
  2. 学習支援の制度化: 新設される学習プログラムへの参加を福利厚生として位置づけ、会社が主導して受講をサポートすることは、優秀な人材の定着(リテンション)策として極めて有効です。
  3. 正確な情報発信: SNS等で流布する不正確な情報に惑わされないよう、会社側が制度を正しく理解し、「ルールを遵守していればキャリアパスは開かれている」という事実を社員に伝えることが重要です。

2026年は、日本の外国人雇用政策が「管理の厳格化」と「共生への基盤整備」を同時に進める転換点となります。制度を正しく理解し、適正な労務管理を行う企業こそが持続可能な組織を構築できる時代になった、と言えるでしょう。