日本企業の採用現場で、ミャンマー人材の来日が思うように進まないという声が広がっています。中でも若年層の男性については、入国手続きの不透明さや審査の遅延が目立ち、「面接は合格したのに来日できない」というケースが散見されています。
背景にはミャンマー国内の制度変更や出国手続きの強化があるとみられており、採用計画の立案や現場の受け入れ準備にも影響が出ています。
ミャンマー国内の出国手続きと制限
ミャンマーの現状をめぐっては、複数の報道や現地情報が出ています。第1に、国外で就労する労働者に対しては、ミャンマー側で発行される就労用身分証(OWIC:Oversea Workers Identity Card)と就労目的のパスポート(PJ:Passport Job)が必要になります。これは労働省が定める手続きであり、OWICの所有は出国時に必要とされています。
こうしたルールに加えて、2025年以降は出国前に労働省の承認が求められる制度も導入されました。OWICやPJを保有していても、出国の少なくとも数日前に申請・許可が必要になっています。
つまり、ミャンマーを出国して日本で就労するには、複数の認可プロセスを経る必要があり、これらが手続きの長期化や不透明感を生む一因となっています。
徴兵制と出国制限の関連
ミャンマーでは、軍政下の労働省が海外就労者の出国手続きを制限しているとの報道が複数あります。とくに18〜35歳の男性が海外で就労するためのOWIC申請や出国が制限される措置が伝えられています。これは徴兵関連法規の対象となる年齢層と重なっており、軍務の対象となる男性が出国しにくい状況があると報じられています。
ただし、公式な法令文書や政府発表で「特定年齢層のパスポート発行が一律で停止された」という確定情報は公開されていません。現状の制限はいくつかの現地メディアや雇用エージェントを通じた情報に基づくものであり、地方出国管理局レベルの運用や現場の取り扱いが影響している可能性があります。こうした点は引き続き注視が必要です。
渡航の試みと現地ルール
一部では、一般的な“観光用パスポート(PV:Passport Visit)”で入国し、その後で在留資格を切り替えようとする動きもありますが、ミャンマー側では就労目的での海外旅行は公式には認められていないという通知が出されています。就労のために出国する場合は、PJとOWICを申請し、正規の手続きで出国許可を得る必要があるとされています。
このため、観光用パスポートでの渡航を試みる行為は、現地当局から違法とみなされる可能性があるとされており、就労資格の取得や出国審査がさらに複雑になる要因になっています。
経営・雇用現場への影響と対応
このような制度や運用の変化は、日本の受け入れ企業にとっても影響を及ぼしています。候補者が在留資格認定証明書(COE)を取得し、日本側での受け入れ準備が整っていても、ミャンマー側の出国手続きが長引くことで来日が遅延するケースがあるとされています。
企業側ができる対応としては、現地の制度を正確に把握し、候補者が適切な書類を準備できる体制を整えること、出国承認プロセスの進捗を継続的に確認することなどが考えられます。また、雇用候補者本人や送り出し機関との定期的なコミュニケーションも不可欠です。
人材戦略の再考
ミャンマー人材の来日が不透明な状況は、採用計画や人材戦略の見直しを迫っています。企業の判断としては、性別や年齢でターゲットを分けるよりも、制度や手続きのリスクを踏まえた上で候補者の選定やフォローを設計することが重要です。
一部では、手続きの比較的スムーズなケースや、ミャンマー国内ですでにOWICを取得している候補者から優先的に招へいする動きもあります。また、他国からの採用や国内在留者の活用といった選択肢も検討されています。
まとめ
ミャンマー人材の来日が遅延している背景には、ミャンマー側の出国手続きの複雑化や審査要件の強化といった制度的要因があります。徴兵制そのものが直接的に「来日を阻む法律」として機能しているという明確な政府公式声明は確認されていないものの、現地での制度運用や制限措置が実務的な障壁となっているとの報告は複数あります。
採用企業にとっては、こうした背景を踏まえたリスク管理と、制度の変化に応じた柔軟な人材戦略が必要になります。来日手続きが長期化する可能性を前提に、継続的な情報収集と候補者支援の体制を整えることが、現実的な対応策となるでしょう。









