フィリピンからの人材は、明るくホスピタリティに溢れ、英語力も高いことから、介護や外食、建設など幅広い分野で日本の現場を支える中心的な存在となっています。しかし、彼らの笑顔の裏には、日本とは大きく異なる「誇り」と「恥」の文化、そして深いキリスト教信仰に基づいた独自の価値観があります。
「言ったことが伝わっていない」「突然来なくなってしまった」といったトラブルの多くは、実はこうした文化的なタブーへの無理解から生じていると考えられます。経営者や人事担当者が知っておくべき、フィリピン人特有のタブーと配慮のポイントをまとめました。
目次
最重要キーワード:「ヒヤ」と「アモール・プロピオ」
フィリピン人の価値観を理解する上で最も重要なキーワードが、「ヒヤ(Hiya=恥)」と「アモール・プロピオ(Amor Propio=自尊心)」です。
⚠️ 【絶対禁止】人前で厳しく叱責する、辱める
- タブー: フィリピン人にとって、人前で恥をかかされることは、単なる「注意」ではなく、「人格の否定」に等しい深刻な苦痛です。自尊心(アモール・プロピオ)を傷つけられると、彼らは強い屈辱を感じ、その場から逃げ出したいという心理に陥ります。
- 現場での注意点:
- 仕事上のミスを注意する際は、必ず別室に呼び、一対一で行いましょう。
- 他の同僚(特に同じフィリピン人)が見ている前で声を荒らげることは、最も避けるべき行為です。これが原因で、前触れもなく「AWOL(無断欠勤・職場放棄)」につながるケースが非常に多いのが特徴です。
⚠️ 【配慮必須】「NO」と言わない文化への理解
- タブー: フィリピンには「パキキサマ(Pakikisama=円滑な人間関係)」という考え方があり、相手の気分を害することを極端に嫌います。そのため、本当は理解できていなくても、あるいは断りたくても、とりあえず「Yes」と言ってしまう傾向があります。
- 現場での対応:
- 「わかった?」という質問に対し、彼らが笑顔で「Yes」と答えても、実際には理解していない可能性を常に考慮してください。
- 指示を出した後は、内容を自分の言葉で説明できるかを確認したり、実際にやって見せてもらったりするなど、ダブルチェックが必要です。
宗教と家族に関するタブー:カトリック信仰と「家族第一主義」
フィリピン人の約8割以上がカトリック教徒であり、その信仰心は日本人には想像できないほど深く、家族の絆と密接に結びついています。
⚠️ 【注意】家族の行事や緊急事態を軽視する
- タブー: フィリピン人にとって、家族は人生の最優先事項です。仕事よりも家族の冠婚葬祭や、病気の看病、さらには遠い親戚のトラブルであっても、駆けつけることが重要事項であると考えられています。
- 現場での対応:
- 家族の理由で急な休みや帰国を希望された際、「仕事が忙しいのに」と冷たくあしらうのは、これまで醸成してきた信頼関係を傷つけてしまう可能性があります。
- 彼らにとって家族のために働くことが最大のモチベーションであることを理解し、可能な限り柔軟な相談に乗る姿勢を見せることが、結果として長期雇用につながります。
⚠️ 【季節のタブー】クリスマス期間の就労強要
- タブー: フィリピン人にとってクリスマスは、一年で最も重要な宗教行事です。9月から準備を始め、12月は家族と過ごすことが大切な習慣となっています。
- 現場での注意点:
- 12月下旬に無理な残業や休日出勤を強いると、著しく士気が低下してしまいます。
- 可能であれば、早めに休暇の希望を聞き出し、調整を行うなどの配慮が求められます。
日常の動作・ジェスチャーに関するタブー
良かれと思って行った動作が、フィリピン人には「見下されている」と受け取られることがあります。
⚠️ 【要注意】手招きの仕方に注意(手のひらを上にする)
- タブー: 日本で人を呼ぶ際、手のひらを下に向けてヒラヒラさせる動作は、フィリピンでは「動物を呼ぶ仕草」とされ、人間に対して行うのは失礼な行為として受け止められてしまいます。
- 現場での対応:
- 人を呼ぶ際は、手のひらを上に向けて指を動かすか、名前を呼んで丁寧な仕草を心がけましょう。
⚠️ 【避けるべき】眉毛を上げることの意味を取り違える
- 文化の違い: フィリピン人は、挨拶や「Yes」の意味で、眉毛をクイッと上げる動作をよく行います。
- 現場での注意点:
- これを日本人が「威嚇」や「不機嫌」と誤解して、厳しく問い詰めたりすると、摩擦の原因になります。彼らなりのフレンドリーな挨拶、あるいは肯定のサインであることを理解しておきましょう。
- これを日本人が「威嚇」や「不機嫌」と誤解して、厳しく問い詰めたりすると、摩擦の原因になります。彼らなりのフレンドリーな挨拶、あるいは肯定のサインであることを理解しておきましょう。
彼らの「誇り」を尊重することが共生の近道
フィリピン人は非常に情に厚く、一度「この上司は自分を尊重してくれている」と信頼を寄せると、驚くほどの献身性とチームワークを発揮してくれます。
彼らのタブーを避けることは、決して「甘やかす」ことではありません。「人前で恥をかかせない」「家族と信仰を大切にする」という、彼らのアイデンティティの根幹に敬意を払うことです。この理解があるだけで、離職リスクは低下し、現場の雰囲気は明るくなるはずです。











