日本に住む外国人ランキングから読み解くトレンド 〜 外国人雇用はアジア多角化の時代へ 

トップ5ランキング

日本の人手不足が深刻化する中、外国人材の雇用は、もはや一部の産業や企業の問題ではなく、事業継続のための経営戦略そのものとなりました。

出入国在留管理庁の最新データに基づく在留外国人の国籍別ランキング(2024年末実績、2025年傾向)を分析すると、日本の外国人雇用市場が、従来の枠を超えた「アジア多角化」の時代へと突入していることが明確に見えてきます。企業経営層や人事担当者は、この構造変化を理解し、戦略を練り直す必要があります。


日本に住む外国人ランキング Top 5の傾向(国籍別)

直近のデータ(2024年末時点の傾向)に基づくと、日本に在留する外国人の国籍別ランキングは以下の通りです。

順位国籍・地域在留者数(約)主な在留資格・活動傾向
1位中国87万人超留学、永住者、技術・人文知識・国際業務(高度人材)
2位ベトナム63万人超技能実習、留学、特定技能(現場作業)
3位韓国40万人超特別永住者、留学、身分系(文化・歴史的背景)
4位フィリピン34万人超身分系(日本人の配偶者等)、特定技能、技能実習(現場作業、介護)
5位ネパール23万人超留学、特定技能(急速な増加傾向)

🔍 傾向分析:構造的な人材シフト

このランキングから読み取れる傾向は、日本の外国人雇用市場が「二極化」と「新たな供給源の台頭」という二つの軸で動いていることです。

高度人材・定住層と現場労働者の二極化
  • 中国・韓国層(1位・3位): 伝統的に在留者が多く、永住者や「技術・人文知識・国際業務」といった高度な専門知識を要する在留資格、および留学が中心です。特に中国は日本のビジネスや教育の現場で中核的な役割を担う層が厚いと言えます。
  • ベトナム・フィリピン層(2位・4位): 技能実習や特定技能といった在留資格が多く、日本の製造業、建設業、介護、農業といった現場で、人手不足を補う主要な労働力となっています。

ネパールの急速な台頭と中央アジアへの関心

ネパールは前年比で最も増加率が高い国の一つであり、在留者数が急増しています。これは、主に留学生としての入国が多いものの、卒業後に特定技能へ移行するケースが増え、日本の労働現場で存在感を増していることを示します。

このネパールに代表されるように、今後はインドネシアやミャンマーといった東南アジアだけでなく、ウズベキスタンなどの中央アジア諸国との国際協定を通じた人材確保も重要視されるなど、供給元の多角化が進んでいます。

経営層が理解すべき「雇用情勢の現実」

このランキングの傾向は、外国人雇用を検討する企業に対し、以下の重要なメッセージを伝えています。

外国人材確保は国籍ごとの戦略が必須

貴社が求める人材が「高度なIT技術者」であれば中国・ベトナム(留学経験者)をターゲットとし、「介護・製造現場の即戦力」であればベトナム・フィリピン・ネパールといった層に焦点を当てる必要があります。国籍によって、労働観、日本語レベル、制度上の背景が全く異なるため、画一的な採用戦略は通用しません。

留学生(中国・ネパール)は「高度人材予備軍」

留学生の数が上位国では依然として多く、特にネパールでは目覚ましい増加を見せています。留学生は、日本の生活や文化、日本語に慣れており、特定技能や技術・人文知識・国際業務といった就労資格へ切り替える「高度人材の予備軍」です。大学や日本語学校が多い地域に進出し、留学生との接点を早期に持つことが、長期的な人材確保の鍵となります。

定着戦略は「人道・制度・生活」の三位一体で

ベトナムやフィリピンなど、特定技能・技能実習が多い層は、賃金や労働環境が転籍(転職)の決め手になりやすい傾向があります。

  • 「特定技能はすぐ辞める」という課題は、他社との賃金競争に陥っている証拠です。
  • 企業は、社会保険の適正加入(最近の政府の厳格化の動きも参照)、生活オリエンテーションの充実、キャリアパスの提示といった、「この会社に残る理由」を提供できるかどうかが、定着率98%を実現するための分水嶺となります。

外国人材の雇用は、単なる「労働力の補填」ではなく、「多角的な国際人材ポートフォリオの構築」です。経営層は、このランキングが示す市場の動きを把握し、国籍別のニーズに応える柔軟な人事戦略と、ルール遵守の徹底を改めて求められています。