外国人による医療費の未払いが全国的な問題として顕在化し、病院経営を圧迫する中、政府は制度の公平性を守るための抜本的な対策に乗り出しました。
厚生労働省は2025年10月29日付で全国の自治体に対し、国民健康保険(国保)に新規加入する際、保険料を最大1年分前納させることを可能とする通知を出しました。これは、単なる支払いの「お願い」ではなく、滞納処分も視野に入れた、国保制度運用の厳格化を意味します。
前納制度の狙いと仕組み
この新しい制度は、自治体が条例を改正することで導入が可能となり、早ければ来年4月にも運用が開始される見込みです。
【制度導入のポイント】
- 未払いリスクの高い層が対象: 前納の対象となるのは、保険料を課す前年度の1月1日時点で日本国内に住民登録をしていない者が世帯主の場合です。これは主に、新規に入国した外国人や、海外から帰国したばかりの日本人世帯を想定しています。
- 最大1年分の前払い: 自治体の判断により、対象者には最大1年分の保険料を一括で前払いさせることが可能となります。これにより、入国直後や制度理解が不十分な期間の未払いを未然に防ぎます。
- 公平性の維持: この制度は国籍を問わず適用されるため、「外国人差別」とならないよう、海外からの帰国者を含む全世帯が対象となります。
「滞納処分」の明記でフリーライドを許さない
今回の措置の最大の意義は、「滞納処分」を進めることが可能になるという点です。
これまで、高額な医療費が未払いのままとなり、都立病院などで億単位の未収金が発生する問題が議論されてきました。これは、特に不法滞在者などが公的保険に加入しない、あるいは加入しても保険料を支払わずに、高額な医療サービス(高額医療費制度の利用など)を受ける「フリーライド(ただ乗り)」が原因の一つとされてきました。
前納制度は、新規加入の段階で公的義務を履行させることを強く要求し、期限を過ぎても納付がなければ、自治体が財産を強制的に差し押さえる権限を行使する道筋をつけます。
この厳格な管理体制への転換は、国民が長年保険料を納めて維持してきた公的医療保険制度の公平性を守り、病院経営の健全性を確保するために不可欠な一歩です。外国人材の受け入れ拡大が進む中、「日本の社会のルール遵守」を求める政府の強い意志が示された形となりました。









