日本の「元実習生」は海外のビジネスパートナーへ ─ 帰国後の起業を支援する新しい関係性

建設現場で働くインドネシア人男性たち

外国人材の雇用において、私たちは彼らの日本滞在期間に焦点を当てがちです。しかし、彼らが母国に帰った後も、日本で培った技術や経験を活かし、起業家として活躍するケースが増えています。彼らは、日本企業にとって貴重な「海外のビジネスパートナー」となり得る存在です。

今回は、帰国後の外国人材が起業する際に、日本の企業や団体がどのように支援し、新たなビジネスチャンスを生み出しているのか、その実例と可能性を探ります。


「海外起業」というキャリアパスに注目せよ

日本で数年間の実務経験を積んだ元技能実習生や特定技能外国人の中には、母国の市場動向や日本の技術的優位性を熟知している人材が多数います。彼らは、日本で得た知識と技術、そして勤勉な労働観を武器に、帰国後に起業するという選択肢を現実的に考えています。

例えば、建設分野で日本の施工技術や品質管理を学んだ人材は、母国で日本の技術基準を導入した建設会社を立ち上げる可能性があります。また、食品製造分野で働いた人材が、日本の衛生管理技術を活かした食品加工工場を始めることも考えられます。

彼らを「帰国者」として終わらせるのではなく、日本との接点を維持し、その起業家精神を支援することは、日本企業にとって新たな海外ビジネスの活路を開くチャンスとなるのです。

「支援」から「協業」へ──成功のためのモデル

この新たな関係性を構築している事例として、以下のような支援モデルが見られます。

ビジネスパートナーとしての継続的な取引

ある日本のメーカーは、自社で働いていた元実習生が母国で修理サービス事業を立ち上げた際、彼らを現地の正規販売代理店として認定しました。メーカーは元実習生の会社に商品の卸売や技術指導を継続的に行い、元実習生は日本の高い技術力を強みに、現地で顧客を獲得。両者は対等なビジネスパートナーとして、互いに利益を創出しています。

このモデルでは、日本の企業は、自社製品やサービスの良さを深く理解している「元従業員」という強力な味方を得て、信頼できる販売チャネルを海外に築くことができます。

NPO法人による起業支援プログラム

NPO法人の中には、帰国後の外国人材を対象に、ビジネスプランの作成から資金調達、メンターのマッチングまでを一貫してサポートするプログラムを運営している団体があります。このようなプログラムは、外国人材が日本で働いている間に培ったスキルを、具体的な事業計画に落とし込む手助けをします。

支援を受ける外国人材は、自らのビジョンを実現するための確固たる土台を築くことができ、日本側は、彼らの事業を通じて間接的に国際貢献の役割を果たすことができます。

外国人材がもたらす未来の可能性

外国人材を単なる「労働力」としてのみ捉える時代は終わろうとしています。彼らが帰国後に母国で事業を立ち上げ、日本の製品やサービスを広める「ビジネスパートナー」となることで、日本の経済は海外へと広がり、新たな市場を開拓できる可能性を秘めています。

外国人材雇用を、「日本に来てもらう」という一方的な関係性ではなく、彼ら一人ひとりのキャリアを支援し、共に成長していく「二人三脚のパートナーシップ」へと昇華させること。この視点を持つことが、これからの企業経営において、重要な戦略となるでしょう。