人手不足が深刻化する物流および旅客業界において、外国人ドライバーの雇用は喫緊の課題への有効な解決策として期待されています。特定技能制度の導入により、外国人ドライバーの雇用が正式に認められて以来、業界内での関心は高まっています。しかし、「何から始めればよいか分からない」「制度が複雑で途中で挫折した」といった声も聞かれ、制度の理解不足や手続きの煩雑さが、その導入を妨げている現状があります。
本記事では、外国人ドライバー雇用に関心を持つ経営者の皆様へ、特定技能ビザや特定活動ビザを活用し、実際に採用から就労に至るまでの具体的かつ実践的なプロセスを詳細に解説します。どこでつまずきやすいのか、何を準備すべきか、どうすればスムーズに進められるのか、その全体像を掴んでいただくための要点をまとめました。
目次
制度適合に向けた企業準備:認証取得の必須要件
外国人材を特定技能ビザで雇用するためには、企業側が「特定技能協議会」への加入が求められます。この加入要件として、以下のいずれかの認証取得が必須となります。
- Gマーク(安全性優良事業所認定)
- 働きやすい職場認証制度
これらの認証は、毎年4月から5月にかけてのみ申請を受け付け、審査結果が出るのは12月頃です。年に一度しかチャンスがないため、計画的な準備が極めて重要となります。
求人と登録支援体制の整備
外国人材の採用には、日本語での求人票作成に加え、登録支援機関との連携が不可欠です。登録支援機関は、来日後の生活支援や行政手続きのサポートを担う、外国人雇用の「伴走者」として機能します。彼らとの協力体制を築くことで、外国人ドライバーが日本での生活にスムーズに適応できるよう支援します。
人材の選定と試験受験
候補者との面接はオンラインでも実施可能です。中にはすでに「特定技能試験」に合格し、日本での転職を希望する人材も存在します。早期に内定を出すことで、優秀な人材の確保につながるでしょう。
特定技能の試験は、学科試験と技能試験で構成され、いずれも60%以上の正答率で合格となります。この試験は海外でも受験可能であるため、採用前に候補者がすでに合格しているケースもあります。
在留資格の申請と来日・入社
採用が決まったら、特定技能1号ビザ、または特定活動ビザの申請を行います。この際、候補者が母国で有効な運転免許を保持しているかによって、手続きの進め方が異なります。
日本での免許切り替えと二種免許の取得
来日後、外国人ドライバーが日本で運転するためには、母国での免許を日本の免許に切り替える必要があります。この手続きには、免許証の翻訳文の提出が求められます。学科試験は比較的容易ですが、実技試験の難易度は高く、日本語での実施となります。特に大型免許への切り替えには、母国での3年以上の大型運転経験が必須です。また、実技試験の予約は地域によっては3~4ヶ月待ちとなる場合があるため、早めの段取りが肝心です。
日本の運転免許を未取得の外国人でも、特定活動ビザ(6ヶ月)を活用して来日し、その間に免許を取得することが可能です。このスキームにより、国内での免許取得を前提とした採用も視野に入れることができます。
タクシーやバス業務に従事するためには、二種免許の取得が必須です。この免許は外国免許からの切り替えができないため、日本で新たに取得する必要があります。多くのタクシー会社では、外国人向けの二種免許取得支援制度を導入しており、27カ国語対応の試験も整備されつつあります。
成功への鍵:計画性とパートナーシップ
外国人ドライバーの採用は決して容易な道ではありませんが、制度を深く理解し、登録支援機関などの適切なパートナーと連携し、そして全体のタイムラインを意識して計画的に進めることで、確実に人材を確保できます。
「日本人の採用だけではもう限界」と感じている企業にとって、外国人ドライバーの雇用は、このドライバー不足時代を乗り越えるための重要な突破口となるでしょう。確かに制度の理解や手続きには一定のハードルが存在しますが、それを乗り越えた先には、真面目で勤勉な新たな人材との出会いが待っています。本記事が、貴社の一歩を後押しする一助となれば幸いです。