社説:地方経済の根幹揺るがす労働力不足:青森県の調査が示す、企業の危機感欠如の現実

田んぼでトラクターを運転する日本人高齢男性

青森県が昨年12月に実施した外国人労働者に関する実態調査は、深刻化する人口減少という喫緊の課題に対し、県内企業の危機感の薄さを露呈する結果となった。県内事業所の外国人労働者雇用率は依然として低水準にとどまる一方、未雇用の企業の多くがなお「検討段階」に留まっている現状は、差し迫る労働力不足への対応が後手に回っていることを示唆している。地方経済の根幹を揺るがしかねないこの問題に対し、当事者意識の希薄さを改めて強く憂慮する。

遅れる外国人材活用

今回の調査は、労働力確保という喫緊の課題への対応として初めて行われた。県内2000社を対象に実施され、約半数から回答を得た。その結果は、青森県が直面する労働力不足という現実と、企業側の認識との間に存在する大きな乖離を浮き彫りにした。

雇用していない企業の多くが、外国人労働者の雇用を「日本人を確保できなくなったら検討したい」「将来的には検討したい」と回答している。これは、喫緊の課題として捉えきれていない姿勢の表れだ。将来的な人手不足への対策を、安易に先送りしていると言わざるを得ない。

「受け入れ体制が整っていない」「必要性を感じない」「トラブルが心配」といった、雇用に踏み切れない理由も挙がっている。これらの課題は、企業が自ら積極的に情報収集や体制整備を行う姿勢に欠けていることの現れだ。外部環境の変化に対応する意識の低さを指摘せざるを得ない。

県と企業の連携が急務

一方で、既に外国人労働者を雇用している企業からは、人材確保の効果が評価されているという事実がある。これは、外国人労働者の活用が有効な手段であることを示している。しかし、「言葉の違いによるコミュニケーション不足」や「採用の負担」「日本語教育の不十分さ」といった課題も存在する。これらの問題は、企業単独での解決が困難であり、県による積極的な支援が不可欠であることを示唆している。

今回の調査で、住宅確保への支援、文化交流の機会の増加、日本語教育や翻訳の支援といった具体的なアイデアが示された。これらは、企業が抱える具体的なニーズを明確にしている。県は、新年度に設置を予定している相談窓口を有効活用すべきだ。これらの声に応える形で、具体的な支援策を速やかに講じるべきである。

もはや待ったなしの状況

青森県総合政策課の担当者が「労働力の確保は若者の定着が第一」としている。国内の若年層の労働力確保は重要だが、少子化が加速する現代において、国内労働力のみに依存する姿勢は現実的ではない。外国人労働者の積極的な活用は、地域経済の維持と発展、そして地域社会の存続にとって不可欠な選択肢である。もはや「検討」の段階で留まっている余裕はない。

今回の調査結果は、青森県における外国人労働者の受け入れが、危機感の欠如から停滞している現状を如実に示している。このままでは、労働力不足はより深刻化するだろう。地域経済の活力を著しく損なう結果を招きかねない。

県は、単なる相談窓口の設置に留まらず、企業が抱える具体的な不安や課題を解決するための、より踏み込んだ支援策を早急に具体化し、実行に移すべきだ。受け入れ体制の整備に関する情報提供、多言語対応の相談体制の構築、地域住民との相互理解を深めるための啓発活動など、多角的なアプローチが求められる。

今回の調査結果を厳粛に受け止め、県と企業、そして地域社会全体が、危機感を共有すべきだ。そして、具体的な行動へと踏み出すことが不可欠である。差し迫る労働力不足という危機に対し、今こそ真剣に向き合い、未来への道筋を切り開くべき時なのだ。