【解説】観光客も在留者も管理強化へ 2026年入管政策が示す日本の新しい「選別と共生」

奈良観光

政府は近年、外国人の入国管理と在留管理の制度見直しを段階的に進めています。2026年春に示された政策方針では、観光客の事前審査制度の導入検討や在留手続きの負担見直しなどが議論され、日本の外国人政策は新たな段階に入りつつあります。

訪日外国人が過去最高を更新する一方で、不法滞在対策や制度運営の効率化を求める声も強まっています。今回の動きは、日本が「歓迎」と「管理」をどのように両立させるのかという政策課題を象徴するものと言えるでしょう。


観光客にも事前審査制度を導入へ

政府が検討を進めているのが、JESTA(電子渡航認証制度)の導入です。これはビザ免除国からの渡航者に対し、渡航前にオンラインで情報を提出させ、入国の可否を事前に確認する仕組みです。

現在、日本では韓国や米国など多くの国・地域の観光客が短期滞在ビザなしで入国できます。しかし、電子渡航認証制度が導入されれば、ビザ免除国の旅行者であっても事前にオンライン申請を行い、審査を受ける必要が生じます。

こうした制度はすでに米国の「ESTA」や欧州の「ETIAS」などで採用されており、日本でも2020年代後半の導入を目指して検討が進められています。目的は、不法滞在や不正入国のリスクを渡航前の段階で把握することにあります。

航空会社にも、事前審査で入国許可が確認できない乗客を搭乗させないよう求める仕組みが想定されており、入国管理の前段階でのチェック体制が強化される見通しです。


在留外国人の手続き負担見直し

今回の制度見直しの議論では、在留資格に関する各種手数料のあり方も焦点となっています。

現在、在留資格の更新や変更、永住許可などの手続きには数千円から1万円程度の手数料が設定されています。政府内では、制度運営コストの増大や外国人支援施策の財源確保を理由に、手数料の見直しを検討する声も出ています。

ただし、具体的な金額や上限についてはまだ確定しておらず、今後の制度設計の中で議論が進められる見込みです。過度な負担増となれば、日本での長期滞在を希望する外国人に影響を与える可能性があるため、慎重な検討が求められています。

外国人材を受け入れる企業にとっても、在留手続きの負担やコストは無関係ではありません。企業が更新手続きの支援や費用補助を行うケースも増えており、制度変更は雇用側の対応にも影響を及ぼす可能性があります。


「歓迎」と「管理」をどう両立するか

日本の外国人政策は今、大きな転換点にあります。

訪日外国人はコロナ禍から急速に回復し、2024年には年間訪日客数が過去最高を更新しました。観光産業や人手不足分野では外国人の存在が不可欠となっています。一方で、不法滞在や制度悪用への対策を求める声も根強く、入国管理の強化は避けて通れない課題となっています。

その結果、日本の外国人政策は「全面的な歓迎」でも「単純な排除」でもなく、一定のルールの下で受け入れる方向へと整理されつつあります。制度の透明性を高め、入国前から在留中までデータを一元的に管理する流れは、欧米諸国でも一般的になっている手法です。

今後、外国人本人にとっては手続きやルールへの理解がこれまで以上に重要になります。また、外国人材を雇用する企業にとっても、在留資格や更新手続きの支援を含めた総合的なサポート体制が求められる可能性があります。

外国人の受け入れを巡る議論は、「門戸を開くか閉ざすか」という単純な問題ではありません。むしろ、どのようなルールの下で共生社会を築くのかという問いに、日本社会全体が向き合う段階に入っていると言えるでしょう。