日本の外国人雇用:歴史を辿り、特定技能制度誕生の背景を紐解く

日本の国旗の写真、遠くに飛行機も映り込んでいる

近年、日本の労働市場において、外国人労働者の存在感は著しく増しています。コンビニエンスストアや飲食店、建設現場など、私たちの日常生活のあらゆる場面で外国人労働者を見かけるようになりました。

しかし、現在の外国人雇用制度、特に特定技能制度が確立されるまでには、日本社会の変遷と、それに伴う外国人労働者受け入れ政策の変遷という、複雑な歴史的背景が存在します。

この記事では、日本の外国人雇用制度の歴史を詳細に紐解きながら、特定技能制度が生まれた背景、そしてその意義について深く掘り下げていきます。


外国人雇用黎明期:高度経済成長の影

高度経済成長期、日本は製造業を中心に急速な発展を遂げましたが、深刻な労働力不足に直面しました。特に中小企業や地方の工場では、若年労働者の確保が困難になり、外国人労働者に頼らざるを得ない状況が生まれました。

当時の日本は、終身雇用制度や年功序列型賃金制度など、日本型の雇用システムが確立されていました。これらの制度は、労働市場の流動性を低下させ、労働力不足を深刻化させる要因にもなりました。

また、地方から都市部への人口移動は地方の過疎化を進行させ、地方の工場では労働力不足がさらに深刻化しました。

外国人労働者の受け入れに関する法整備が十分でなかったため、多くの外国人労働者が密入国や不法就労という形で日本に流入し、社会問題化しました。不法就労は、低賃金や長時間労働などの劣悪な労働環境や人権侵害問題、治安悪化への懸念も高まりました。

外国人雇用政策の転換期:バブル崩壊と日系人労働者

バブル景気は労働力不足をさらに深刻化させ、政府は日系人の受け入れを拡大しました。1990年の入管法改正により、日系2世・3世とその配偶者の在留資格が認められ、多くの日系人が日本に流入し、製造業を中心に労働力不足を補いました。

しかし、バブル崩壊後、経済状況が悪化し、日系人労働者の雇用問題が深刻化しました。多くの日系人労働者が失業し、生活に困窮するケースが増加しました。

外国人技能実習制度の開始:国際貢献と労働力確保の狭間で

1993年、外国人技能実習制度が開始されました。この制度は、国際貢献を目的としていましたが、実際には労働力不足を補う手段として活用されるケースが多く見られました。

技能実習生は低賃金で単純労働に従事させられるケースが多く、劣悪な労働環境や人権侵害問題、失踪問題が深刻化しました。

外国人雇用制度の転換:特定技能制度の創設

技能実習制度の問題点が指摘される中、政府は新たな外国人雇用制度の創設を検討し、2019年に特定技能制度が創設されました。

特定技能制度創設の背景:深刻な人手不足と制度疲労

特定技能制度は、深刻化する人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的としています。特に、介護、建設、農業など、人手不足が深刻な特定産業分野において、即戦力となる外国人労働者の受け入れを促進することを目的としています。

当時の日本では、少子高齢化がさらに進み、労働力人口が減少していました。特に、介護、建設、農業など、人手不足が深刻な特定産業分野では、外国人労働者の受け入れが不可欠な状況となっていました。

技能実習制度の問題点が指摘される中で、政府は、より専門性・技能の高い外国人労働者を受け入れるための制度を新たに設ける必要性を認識しました。

特定技能制度の概要:二つの在留資格と試験制度

特定技能制度では、特定産業分野において、一定の技能水準を満たす外国人に対して、在留資格「特定技能」が付与されます。特定技能には1号と2号があり、1号は相当程度の知識・経験を必要とする技能、2号は熟練した技能を必要とします。

特定技能1号では、14の特定産業分野が対象で、在留期間は通算で上限5年です。特定技能2号は、2分野が対象で、在留期間に上限はなく、家族の帯同も認められています。

技能試験と日本語能力試験が実施され、受け入れ機関には様々な義務が課されています。

特定技能制度の課題と展望:共生社会への道

特定技能制度は、人手不足解消の切り札として期待されていますが、制度の運用や受け入れ体制など、課題も多く残されています。

受け入れ機関の支援体制の充実や日本語能力不足、特定技能2号の対象分野拡大などが課題として挙げられます。

今後、政府は制度の見直しや改善を進め、外国人労働者と日本人労働者が共生できる社会を築くために、国民の理解を深めるための広報活動や多文化共生に向けた取り組みも重要となります。

まとめ:特定技能制度は日本の労働市場の救世主となるか

日本の外国人雇用制度は、社会の変化に合わせて変遷してきました。

特定技能制度は、深刻化する人手不足に対応するための制度ですが、課題も多く残されています。

今後、特定技能制度が日本の労働市場において、どのような役割を果たしていくのか、私たちは真剣に向き合っていく必要があります。