【25%強制送金の裏側】手取りが減るミャンマー社員。コメの現物支給が離職防ぐ?

ミャンマー人の女性介護士

真面目で日本語能力が高いミャンマー人材。しかし今、彼らの給与明細には書かれない「目に見えない税金」が重くのしかかっています。軍政が外貨獲得のために強行した「強制送金指令」により、彼らの生活は困窮し、より高い給与を求めて「転籍」を検討するリスクが高まっています。


制度の正体:なぜ「25%」も消えてしまうのか?

2023年後半から強化され、2026年現在も継続しているミャンマー政府(軍管区)の通達により、海外就労者は「外貨収入の少なくとも25%を、政府指定の公式レートで母国へ送金すること」を義務付けられました。

  • 残酷な「レート格差」: 政府指定の公式レートは、実勢レート(闇レート)に比べて就労者にとって不利に設定されています。
  • 実質的な減収: 例えば、20万円の給与のうち25%である5万円を「公式レート」で送金すると、家族が現地で受け取るミャンマー・チャットの価値は、実勢レートで送った場合の半分程度になることも珍しくありません。
  • 従わない場合の罰則: パスポートの更新拒否や、次回の出国許可(OWIC)の停止など、労働者にとって致命的なペナルティが課されます。

参考:ソシエタス総研究所『ミャンマーの労働力分析』


企業ができる対策:給与を上げずに「支出」を減らす知恵

「25%ルール」は額面給与に対して計算されるため、安易に基本給を上げると、連動して強制送金額も増えてしまいます。そこで重要になるのが、「額面(課税・送金対象)を増やさず、本人の実質的な生活費を負担する」というアプローチです。

① 「現物給付」による食費支援(米・食材の支給)

最も効果的で喜ばれるのが、生活の根幹である「お米」や「調味料」の現物支給です。

  • メリット: 額面給与には反映されない(一定の範囲内であれば非課税・送金対象外)ため、本人の手取りを実質的に底上げできます。
  • 実施例: 毎月5〜10kgの米を会社が購入して渡す。

② 会社負担による「光熱費・ネット代」の定額補助

寮の光熱費や、母国との連絡に欠かせないインターネット代を会社が直接契約・負担します。

  • メリット: 現金で「手当」として渡すと25%ルールの対象になりますが、会社が直接業者に支払う形であれば、本人への「給与」とはみなされず、送金額に影響しません。

③ 住宅費の「社宅形式」による実質補助

例えば、会社が空き家を安く借り上げ、本人からは最低限の管理費(例:月5,000円など)だけを徴収します。

  • メリット: 周辺相場との差額は、一定の範囲内であれば福利厚生として処理でき、本人の可処分所得を増やすことが可能です。


節税対策としての「海外送金による扶養控除」の徹底

ミャンマーの家族に送金している場合、日本の所得税法上の「扶養控除」を正しく適用させることで、所得税・住民税を減らすことができます。

  • 2024年以降の注意点: 30歳以上70歳未満の親族を扶養にする場合、「38万円以上の送金」または「留学・障害」が条件となります。
  • 企業の支援: 25%の強制送金分が「親族の生活費」として認められるよう、送金証明書の保管や年末調整のサポートを徹底しすることが重要です。納税額が減れば、その分本人の手元に残る現金が増えます。

参考:国税庁:国外居住親族に係る扶養控除等の適用について


ガイドの視点:今、ミャンマー人が求めているのは「共感」と「具体策」

ミャンマー人社員は、母国の軍事政権に対して複雑な感情を抱いています。「なぜせっかく稼いだお金を吸い上げられるのか」という彼らの不満を、企業側が「仕方のないルールだから」と突き放すのは、離職への最短距離です。

「君たちの苦労は分かっている。だから会社として、給与以外で生活を支える方法を考えたよ」

この一言と、お米一袋、あるいは光熱費の会社負担。これら「こっそりとした支援」こそが、2026年の人材争奪戦において、他社には真似できない強力なリテンション(引き止め)策となるでしょう。