社説:介護現場を支えるミャンマー人特定技能人材 ー 国民性、日本語能力、そして定着率の視点から

日本の介護現場は今、深刻な人手不足に直面している。少子高齢化が進み、現場を支える人材の確保は喫緊の課題だ。こうした中、特定技能制度を通じて外国人労働者の受け入れが本格化し、その中でもミャンマー出身の人材が急速に存在感を高めている。
彼らが日本の介護現場でどのように受け入れられ、またどのような課題に直面しているのか、多角的に考えてみたい。

まず、ミャンマー人材の国民性について触れたい。ミャンマーは仏教文化が根付いた国であり、多くの人が幼少期から仏教的価値観の中で育つ。穏やかで思いやり深く、相手を尊重する姿勢が自然に身についている人が多い。加えて、家族や年長者を大切にする文化的背景から、介護の現場においても高齢者への礼儀や配慮を忘れない点は大きな強みだ。日本の施設関係者からは「ミャンマー人は笑顔が絶えず、利用者に優しく寄り添ってくれる」「細やかな気配りができ、真面目に仕事に取り組む」といった評価が数多く寄せられている。

また、ミャンマー人は忍耐強く、与えられた仕事を最後までやり遂げる責任感も強い傾向がある。一方で、困難な状況でもすぐに感情を表に出さないことから、時に悩みや不安を抱え込みやすいという側面もある。受け入れ側には、本人の気持ちに気付きやすい環境づくりや、気軽に相談できる体制の整備が求められる。

こうした国民性は、他のアジア諸国出身の特定技能人材と比べても一定の評価を得ている。例えば、同じ介護分野で働くベトナム人やフィリピン人と比べて、ミャンマー人は比較的落ち着いた性格や誠実な態度が特徴的とされる。そのため、離職率が低く、定着率が高いという調査結果も報告されている。実際、介護分野における特定技能人材全体の1年以内離職率が平均15%前後であるのに対し、ミャンマー人材は10%以下にとどまるケースも多い。
この背景には、ミャンマー人自身が日本で長く働くことを希望し、日本の職場文化に適応しようとする意欲が強いことも挙げられる。

しかし、ミャンマー人材が日本で長く安心して働き続けるためには、解決すべき課題も多い。その最たるものが日本語能力の壁である。介護現場では利用者の小さな変化や要望を的確に汲み取る力が不可欠であり、また緊急時には迅速な意思疎通が求められる。そのため、日常会話レベル以上の日本語力、とりわけ専門用語や医療的な表現への対応力が必要となる。
現状、ミャンマー人の多くは来日前に日本語教育を受けているものの、実際の現場でのコミュニケーションには戸惑いも多い。「もっと日本語ができれば、より利用者の役に立てるのに」と悩む声も聞かれる。日本語能力試験(N4〜N3レベル)を取得している人が増えてきてはいるが、現場でのさらなる語学支援や研修体制の充実が求められる。

加えて、ミャンマーは近年、国内の政治的混乱や経済不安が続いている。日本で安定した仕事と生活を求めるミャンマー人材は今後も増加が見込まれる。彼らが日本社会の一員として安心して生活し、職場に定着するためには、言語だけでなく、生活面でのサポートや文化交流の機会も重要となる。

日本の介護現場は今や多国籍の人材によって支えられている。その中で、ミャンマー人特定技能人材が高い定着率と現場貢献を維持するには、受け入れ側のさらなる理解と支援が不可欠だ。ミャンマー人の国民性や強みを最大限に生かし、多様な価値観が共生できる職場づくりを推進することで、介護現場全体の質の向上と持続可能性の確保につなげていきたい。

日本の介護が、国籍や文化を超えて人と人とが支え合う場として発展することを、強く期待したい。