【育成就労の転籍自由化】「賃金」だけに頼らない定着戦略 外国人材の暮らしを支える福利厚生4選

高層ビル群

2027年4月1日に施行される育成就労制度では、一定の要件のもとで本人意向による転籍(転職)が可能になる仕組みが盛り込まれています。
この変化は、受け入れ企業にとって「引き抜き」への不安材料であると同時に、働く環境や支援の質で選ばれる会社へ転換する好機でもあります。

もちろん、賃金や労働条件の適正さは大前提です。ただ、同じような条件の会社が並ぶとき、最後に差がつくのは「日々の暮らしの安心」をどこまで設計できているかです。ここでは、現場で実装しやすく、かつ外国人材の定着につながりやすい福利厚生を4つに絞ってご紹介します。


定着につながりやすい福利厚生4選

施策ねらい実装の要点注意点
寮・社宅の通信環境整備(無料Wi-Fiなど)家族連絡や生活情報の確保で孤立感を減らす各室で安定して使える回線、初期設定サポートまで含める通信品質が低いと不満が残るため、実測と改善窓口を用意する
食費負担を下げる支援(米・調味料、社内販売など)物価高の負担感を抑え、生活の見通しを良くする現物支給か割引購入かを選べる設計にし、配布ルールを明文化特定の国籍だけが得をする形に見えないよう、運用の公平性に配慮する
帰省支援(勤続要件付きの補助・積立)長期就労の動機をつくり、離職の山を越える「勤続何年で上限いくら」など、条件を単純にして周知する途中退職時の取り扱いを就業規則等で明確にする
医療・公的手続きの同行支援(通訳・予約・窓口)不安の大きい局面での離職を防ぎ、安心感を高める提携通訳、連絡体制、緊急時の一次対応ルールを整える会社が抱え込みすぎない。地域の多言語窓口や専門家につなぐ導線を用意する

食費支援の背景として、国内のコメ価格高騰が依然続いているとの報道もあります。
こうした環境では、給与を少し上げるだけでは埋まりにくい「生活不安」を、福利厚生で直接下支えする発想が現実的です。


施策を「やりっぱなし」にしないためのポイント

福利厚生は、用意するだけでは定着につながりません。効果が出る会社には共通点があります。

第一に、ルールが簡潔で、誰にとっても見通しが立つことです。「いつ、何を、どれだけ受けられるか」を母語またはやさしい日本語で示すだけで、誤解と不満が減ります。
第二に、相談窓口が一本化されていることです。生活の困りごとは、担当部署が分散していると途中で対応が滞りやすくなります。
第三に、支援が「監視」ではなく「安心のため」だと伝え切れていることです。特に公的手続きの支援は、情報の取り扱いルールもセットで説明しておくと信頼が崩れにくくなります。


むすびに

転籍が選択肢として現実味を帯びるほど、会社は「条件で縛る」より「安心で選ばれる」方向へ進むでしょう。育成就労制度は2027年4月1日施行と明記されており、準備期間は長いようで短いのが実情です。
賃金や労務管理の土台を整えたうえで、暮らしの不安を減らす福利厚生を、過不足なく、運用まで含めて設計する。そこに投資できる企業ほど、制度変更後も安定して人材を確保しやすくなります。