外国人材の受け入れにおいて、いま法的・実務的リスクとして注視されているのが「レイシャルハラスメント」です。監理団体や登録支援機関、行政書士が、受入れ企業のコンプライアンスを守るために知っておくべき実務ポイントを解説します。
目次
職場に潜む「レイシャルハラスメント」の具体的事例
レイシャルハラスメント(人種・国籍に関する嫌がらせ)は、パワーハラスメントの一類型として、事業主の防止措置義務(パワハラ防止法)に含まれます。悪意の有無にかかわらず、以下のような言動はハラスメントに該当する可能性が高いです。
- 出身国や文化の侮辱: 「〇〇人はこれだからダメだ」「お前の国ではこうなんだろうが、日本は違う」といった国籍を根拠にした否定的な言及。
- 名前の不適切な扱い: 覚えにくいからと本人の意向を無視して別の通称で呼ぶ、あだ名で呼ぶ行為。
- 生活習慣への干渉・嘲笑: 宗教上の食事制限や礼拝、民族衣装などを嘲笑したり、無理やり日本の習慣に合わせるよう強要したりすること。
- 特定の国籍を理由とした役割固定: 「〇〇人は体力が自慢だから」と、本人の適性や契約内容を無視して過酷な労働のみを強いること。
多言語相談窓口の運用と匿名性の確保
外国人材にとって、社内の相談窓口に駆け込むのは非常に勇気がいることです。「解雇されるのではないか」「在留資格が更新できなくなるのではないか」という不安を取り除くための運用実務が求められます。
- 多言語対応の徹底: 日本語が不十分な場合、ニュアンスが伝わらず相談を断念してしまいます。翻訳アプリの活用だけでなく、登録支援機関の母国語通訳スタッフや外部の多言語通訳サービスを介したルートを明示する必要があります。
- 匿名性の担保と情報遮断: 相談を受けた際、本人の承諾なく名前を上司に伝えないことを徹底します。また、相談場所も他人の目に触れない場所(あるいはオンライン)を選びます。
- 不利益取扱いの禁止の周知: 「相談したことを理由に解雇や配置転換を行わない」ことを、母国語で明確に規定・周知することが不可欠です。(厚生労働省資料「不利益取扱の禁止」)
事実確認の具体的な手順
ハラスメントの申告があった際、支援機関や人事担当者が踏むべきステップは以下の通りです。
- 相談者(外国人材)からのヒアリング: 5W1Hを明確にしつつ、「主観的な感情」と「客観的な事実(言動)」を切り分けて記録します。
- 行為者(加害者とされる側)へのヒアリング: 予断を持たずに接し、事実関係を確認します。文化的背景による誤解がないか、意図はどうであったかを丁寧に確認します。
- 第三者(目撃者等)への確認: 同僚などの目撃情報を収集します。この際、相談者の匿名性が守られるよう細心の注意を払います。
- 解決策の提示とフォローアップ: 事実が確認された場合、就業規則に基づき加害者へ処分を下すとともに、配置転換や謝罪の場を設けます。解決後も、報復がないか定期的にモニタリングを行うことが重要です。
専門家に求められる「中立的な橋渡し」
レイシャルハラスメント対策は、単なる法的義務の遂行だけでなく、外国人材が安心して働ける環境(心理的安全性の確保)に直結します。登録支援機関や管理団体、行政書士は、企業に対して教育を行い、状況によって毅然とした指導を行う必要があります。そして、外国人材に対しては盾となる中立的な橋渡し役が求められます。
参考資料・関連リンク
実務上の指針として活用できる公的リソースです。
厚生労働省
職場におけるハラスメント対策(事業主向け)
パワハラ防止指針の最新情報が確認できます。
法務省
外国人に対する不当な差別的取扱いに関する周知啓発(人権擁護局)
ヘイトスピーチや不当な差別への対応について解説されています。
外国人在留支援センター(FRESC)
FRESC人権相談窓口(多言語対応)
第三者機関として、直接人権相談ができる窓口として紹介可能です。











