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特定技能では不可能!単純労働に従事する外国人の現実的な在留資格を解説
道路工事現場で誘導灯を持ち、交通整理や道案内をしている外国人を見かけることが増えました。彼らは日本の人手不足を支える貴重な戦力ですが、彼らの在留資格(ビザ)について、「特定技能でドライバーが雇えるなら、警備や誘導もOKなのでは?」と疑問を持つ企業担当者も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、日本には「交通誘導員」や「警備員」といった単純労働を目的とした就労ビザは存在しません。
それでは、彼らが日本で働いている「ビザの謎」と、その裏側にある制度の現実を解説します。
大原則:日本の就労ビザは「専門性」が必須
日本の在留資格制度は、「単純労働者」を原則として受け入れないという大原則に基づいています。
- 技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ): 大学などで学んだ専門知識や技術(IT、経理、通訳など)が必須。
- 特定技能・技能実習(新制度の育成就労): 特定の産業分野(介護、建設、農業など)において「相当程度の技能」を要する業務が対象。
この基準に照らし合わせると、道路工事現場の「純粋な交通誘導(旗振り)」は、高い専門性や技能を必要とする職種とは見なされません。そのため、特定技能や技能実習といった制度で「交通誘導のみ」を主業務とすることは認められていません。特に警備分野は、現在特定技能の対象外です。
現場で見かける「誘導員」のビザ、可能性が高い順
では、実際に現場で働いている外国人はどのような在留資格を持っているのでしょうか。
| 可能性が高い在留資格 | 主な業務内容 | 就労時間の制限 | 補足事項 |
| ① 留学ビザ | アルバイト(生活費補填のため) | 週28時間以内 | 学生の本業は学業であり、時間を守っていれば単純労働は許可される。 |
| ② 特定活動 | アルバイト(生計維持のため) | 制限あり(週28時間以内など) | 難民申請中や、特殊な事情で日本滞在を許可された人が持つケースが多い。 |
| ③ 家族滞在ビザ | アルバイト(生活費補填のため) | 週28時間以内 | 就労ビザを持つ外国人の配偶者が持つビザで、単純労働も許可される。 |
これらのケースでは、「ビザ」自体が「就労」を目的としたものではなく、「学業」や「家族との滞在」を主目的としています。そのため、許可されているのは「資格外活動(アルバイト)」であり、労働時間に厳しい制限(週28時間以内)があります。
企業が知っておくべきリスク:不法就労助長罪
交通誘導が必要な人手不足は理解できますが、企業が上記の「アルバイト枠」の人材を雇用する際は、以下のリスク管理が必須です。
1. 労働時間の厳格な管理
「留学」や「家族滞在」の外国人を週28時間を超えて働かせた場合、企業側が「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。特に、複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、企業は他の勤務先での労働時間まで把握して管理しなければなりません。
2. 業務内容の逸脱
もし現場で誘導業務を行っている外国人が「特定技能(建設)」の資格を持っていたとしても、専門作業(土木など)を行わず、終日旗振りだけを行うことは、在留資格の活動内容から逸脱していると見なされることになります。
3. 低い定着率
留学ビザの外国人労働者は、学業が本業であるため、卒業や進学を機に離職します。また、「特定活動」の就労者は、不安定な身分であることが多いため、より待遇の良い仕事や合法的な在留資格を求めて流動性が高くなります。
まとめ:単純労働者の確保は「現状の制度の歪み」
道路工事現場で外国人誘導員を見かけるのは、単純労働の人手不足が深刻化していることと、日本に「単純労働を許可されたビザ(特定活動や資格外活動)」を持つ外国人が一定数いることの、制度上の歪みが表れた現実と言えます。
企業が安定的な戦力として外国人材を確保するには、今後、特定技能制度の分野拡大(警備業が追加される可能性)を注視するか、留学生のアルバイト枠を適切に管理する体制を整えることが求められます。











