外国人労働者が払う税金と年金:日本経済を支える「見えない貢献」

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特定技能・育成就労の拡大による外国人材が納める「馬鹿にできない」税収効果

近年、特定技能や、新たに創設される育成就労制度によって、日本で働く外国人材の数は急増しています。しかし、彼らが日本の経済や社会保障制度にどのような貢献をしているか、その実態はあまり知られていません。

外国人労働者は、日本人と同様に税金や社会保険料を納めており、その貢献は日本の少子高齢化社会において、無視できない「馬鹿にできない」規模に達しつつあります。


増加する外国人労働者と、その経済的インパクト

外国人労働者数は年々増加しており、今後、特定技能や育成就労制度の活用が本格化することで、この流れはさらに加速します。

外国人労働者数の推移(参考)

  • 2024年時点で、日本で働く外国人労働者は約200万人に迫る勢いであり、これは日本の労働力人口の約3%を占めます。
  • 労働力の主力となる特定技能や、その前身である技能実習生は、若年層が中心であり、納税・年金の欠かすことのできない担い手となっています。

今後の税収効果:増加の要因

特定技能や育成就労の外国人材は、原則として日本人と同等以上の賃金で雇用されるため、彼らが納める所得税と住民税も、その賃金水準に応じて増加します。

また、彼らの消費活動に伴う消費税の納税も、国内経済を支える重要な要素です。人手不足が深刻な分野(介護、建設、農業、外食業など)の生産性を下支えしていることも含めると、その間接的な経済効果は計り知れません。


外国人労働者が払っている「3つの公的負担」

外国人労働者は、日本で働く正当な権利を得る代わりに、日本人と同じく以下の3つの公的負担を確実に履行しています。

① 所得税・住民税

給与から源泉徴収される所得税と、居住地の自治体に納める住民税は、外国人労働者にとって日本人と同じく義務です。彼らが納めた税金は、日本の行政サービス、公共事業、そして社会資本の維持に使われています。

② 健康保険・介護保険

健康保険と、40歳以上が加入する介護保険の保険料も、給与から控除されています。これにより、彼ら自身が日本で安心して医療を受けられる権利を得る一方、彼らが支払う保険料は日本の医療制度と介護サービスの維持に貢献しています。

③ 厚生年金・国民年金

原則、すべての外国人労働者は、厚生年金または国民年金に加入する義務があります。

社会保障制度の維持: 彼らが支払う年金保険料は、現在の高齢者への年金給付に充てられており、少子高齢化で現役世代の割合が減る中で、年金制度を支える重要な役割を果たしています。


「短期滞在」でも確実に徴収される年金保険料の貢献

年金制度においては、外国人労働者は少し特殊な仕組みで貢献しています。

年金脱退一時金の仕組み

外国人材の多くは、在留期間(特定技能1号なら最大5年)を終えると母国へ帰国します。その際、加入期間が6ヶ月以上あれば、それまでに納めた年金保険料の一部を「脱退一時金」として受け取ることができます。

  • 貢献の事実: 彼らが一時金を受け取ったとしても、それまでに支払った年金保険料は、彼らが日本で働いた期間中、確実に日本の年金制度の財源として活用されることになります。
  • 国の財源確保: 特に、特定技能人材のように比較的若い世代が安定した賃金で働くことで、日本の社会保障の「現役世代の負担」を分散させている事実は、日本経済にとっての大きなセーフティネットと言えるでしょう。

外国人労働者は、人手不足を補うだけでなく、納税者として、また社会保険の加入者として、日本の経済と社会を支える「見えない貢献者」なのです。彼らを適切に受け入れ、公平な待遇を与えることが、結果的に日本の安定した財政運営に直結するのです。