【徹底検証】「中国人が日本の不動産を買いあさっている」論の虚実:排他的政策が日本経済と雇用にもたらす重大リスク

山林の風景


💡はじめに:広がるデマと日本の国際的立場

近年、SNSや一部メディアで「中国資本が日本の不動産や水源を買い占めている」という主張が広がり、外国人による資産購入を規制・没収すべきという排他的な意見が見受けられます。しかし、これは国際経済やデータの実態からかけ離れた、感情的な議論です。

外国人の雇用・生活支援に携わる皆様にとって、こうした言説が日本経済や国際的な信頼、ひいては外国人材の受け入れ環境に与える影響は無視できません。本記事では、公的データに基づき、この「外国人による買収論」の虚実を検証し、排他的な政策がもたらす重大なリスクを解説します。


データが示す日本の不動産市場における外国資本の真実

「外国人による買収論」が主張するような、日本経済が外国資本に支配されつつあるという現状は、以下のデータによって否定されます。

項目金額(推定)主要投資国ソース
日本が海外に保有する不動産22.5兆円🇺🇸 アメリカが圧倒的、🇦🇺 オーストラリア、🇬🇧 英国など内閣府・国民経済計算(2022年度)を基にした推計
外国資本が日本に保有する不動産1.2兆円🇺🇸 アメリカが最大、🇸🇬 シンガポール近年急増CBREデータ(財務省データを補完した推計)


検証結果:日本の対外資産は日本の受入資産の「約20倍」

  • 日本の国際的な経済活動の規模:日本が海外に持つ不動産資産(22.5兆円)は、外国が日本に持つ不動産(1.2兆円)の約20倍に上ります。
  • 中国本土のシェアはごくわずか:不動産投資における中国本土からのシェアはデータ上「誤差」レベルに過ぎません。


「水源地買収」は古いデマと日本人による詐欺事件

水源地に関する「外国資本の脅威論」は、2010年頃の北海道での報道が発端ですが、その実態は「侵略」や「水資源確保」とは無関係でした。

  • 水利用目的はゼロ:農林水産省管轄の林野庁が毎年行っている調査によると、水源林の外国資本による購入用途の大半は「資産保有」「別荘」であり、水利用を目的とした購入は確認されていません。
    出典:林野庁 「外国資本による森林取得に関する調査の結果について」
  • 真相は「水源投資詐欺」:安価な水源林を高値で売りつける日本人による大規模な詐欺事件(被害額25億円超、2019年までに45人逮捕)が、この騒動の背景にあったことが報じられています。外国人は「侵略者」ではなく、むしろ詐欺の被害者であったケースが多数存在しました。
    出典:NHK、各種報道


外国資本の排斥が日本の雇用・経済にもたらす致命的な影響

「外国人には不動産を売らない」「既存の外国人資産を接収する」といった排他的な政策は、日本経済全体、ひいては外国人雇用環境に致命的な悪影響を及ぼします。

1. 国際的な断交と経済制裁のリスク

日本の排他的な政策に対し、海外各国は対抗措置として、自国にある22.5兆円規模の日本の対外資産を接収する、という最悪のシナリオも想起されます。

2. 不動産・建設市場の冷え込みと雇用への影響

現在の日本の不動産取引において、外国資本が占める割合は約3割強に達します。この取引が途絶えれば、建設・不動産業界の打撃による国内雇用(日本人・外国人問わず)の減少は避けられません。


💡 まとめ:冷静なデータ分析と国際協調の必要性

外国人材の受け入れ拡大が急務である日本にとって、感情論に基づく排他的な議論は国益を著しく損ないます。

日本経済はグローバルな取引に深く依存しており、外国人による投資や経済活動は、雇用創出や地域経済の活性化に不可欠です。デマに惑わされることなく、正確なデータに基づいた冷静な状況認識を持ち、国際協調の重要性を再認識することが求められます。