介護人材を「特定技能1号」から「介護福祉士」へ!

介護施設に置かれた車椅子


資格取得支援スキームを成功させる3つの要点と、勤務時間内カリキュラムの組み方

介護分野は、特定技能外国人材の活躍が最も期待される分野です。しかし、人材を単なる「労働力」として消費するのではなく、国家資格である「介護福祉士」へとキャリアアップさせることは、企業の定着率向上とサービスの質向上に直結する戦略的投資です。

特定技能1号の5年間で、この難関資格の取得を成功させるための具体的な支援スキームを解説します。


成功の鍵:「介護福祉士」取得へのロードマップ

介護福祉士の国家資格を受験するためには、以下の2つの大きなハードルをクリアする必要があります。

A. 日本語能力の壁(N2レベル以上)

国家試験のテキストや問題文は、専門用語が多く、受験には日本語能力試験(JLPT)のN2レベル以上の高度な日本語力が求められます。特定技能1号の入国要件(N4)とは大きな差があります。

B. 実務経験と受験資格

特定技能1号として3年以上の実務経験を積み、かつ「実務者研修」を修了している必要があります。

育成目標期間の目安企業がすべきこと(支援の要点)
日本語力強化1年目〜2年目N4からN2レベルへ引き上げるための専門教育。
実務者研修修了2年目〜3年目研修期間の勤務時間保障と費用負担。
国家試験対策3年目〜4年目専門の対策講座への参加と学習時間の確保。
介護福祉士合格4年目〜5年目処遇改善手当や昇給によるインセンティブ付与。



勤務時間内に組み込む「戦略的教育カリキュラム」

外国人材の日本語学習や資格対策を、勤務時間外の「自己責任」に任せるだけでは定着は困難です。企業が「教育=投資」と捉え、勤務時間内に組み込むことが重要です。

(1) 「業務内日本語学習時間」の創設(1年目)

  • 【手法】 1日30分、通常の業務指示や利用者との会話で使った専門用語や、理解できなかった言葉を記録し、支援担当者が解説する時間を設けます。
  • 【効果】 業務と直結するため、N2レベルの土台となる専門用語と文法の習得が飛躍的に早まります。この時間を「サービス残業」にしないよう、明確に「学習時間」として扱いましょう。

(2) 実務者研修の「労働時間扱い」と費用負担(2年目)

  • 【手法】 実務者研修(約450時間)の受講期間を労働時間の一部として扱い、研修のために勤務シフトを調整します。研修費用は、全額または大部分を企業が負担します。
  • 【効果】 費用と時間の負担が解消されることで、学習への集中力が上がり、外国人材の「会社が自分に投資してくれている」という信頼感が高まります。

(3) 国家試験「集中対策期間」の創設(3年目〜4年目)

  • 【手法】 受験直前の数ヶ月間は、通常業務量を軽減し、週に1日〜半日を試験勉強に充てる特別シフトを組みます。対策講座や模擬試験の受験費用も負担します。
  • 【効果】 外国人材が集中して学習できる環境が整い、合格率が向上します。これは企業にとって、「専門職」を確保する最短ルートとなります。


育成成功を支える「インセンティブと評価」

資格取得支援は、単に学習環境を整えるだけでなく、モチベーションを高めるための処遇改善と連動させる必要があります。

(1) 資格取得後の処遇改善を約束する

  • 待遇の明確化: 「介護福祉士」合格後には、「月〇万円の資格手当を支給する」「役職手当が適用される」など、具体的な昇給・昇進の約束を雇用契約書とは別の覚書などで交わします。
  • 専門職への移行: 介護福祉士になれば、特定技能1号から「介護」の在留資格へ移行できる道も開けます。これにより、家族帯同の道が開かれ、長期定着の最強のインセンティブとなります。

(2) 日本人社員を「教育担当者」として評価する

  • 社内評価制度への組み込み: 外国人社員の教育を熱心に行った日本人社員を、単なる「優しさ」ではなく、「人材育成能力」として人事評価に組み込みます。
  • 効果: 現場の日本人社員の協力意欲が高まり、組織全体で外国人材を育成する企業文化が醸成されます。

外国人材を「労働者」から「介護福祉士」という専門職へとキャリアアップさせることは、人手不足の解消にとどまらず、その人材が日本の介護現場の未来を担うリーダーとなる可能性を生み出します。投資を惜しまない戦略的な育成こそが、これからの介護経営に求められています。