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特定技能制度で絶対に知っておくべき法令遵守の基本
「外国人は安く雇える」という偏った認識は、外国人材の早期離職や法令違反につながる最大の原因です。日本の在留資格、特に特定技能制度では、「同一労働同一賃金」の原則が厳格に適用されます。
この原則を正しく理解し、法令を遵守することは、外国人材の受け入れを成功させるための基本です。
「同一労働同一賃金」の正しい解釈
特定技能制度における「同一労働同一賃金」は、以下の基準を厳しく求めています。
原則:日本人と同等以上の待遇
特定技能外国人の賃金や待遇は、「同じ会社で、同じ業務に従事する日本人」と比較して、同等以上でなければなりません。
- 単なる「最低賃金」のクリアではない: 最低賃金をクリアするだけでは不十分です。例えば、同じ生産ラインで働く日本人正社員の時給が1,500円であれば、同じ業務を行う特定技能外国人にも最低1,500円以上を支払う必要があります。
- 比較対象は「経験年数」と「能力」: 比較対象となるのは、役職、業務内容、責任の程度、経験年数、能力が似ている日本人社員です。
NG行為の例:比較対象を間違える
- 【NG事例】 経験豊富な外国人材の賃金を、入社したばかりの最も給料の低い日本人社員と比べて「同等」とする。
- 【正しい解釈】 経験年数や技能レベルが同等の日本人社員の賃金と比較しなければなりません。
賃金テーブルの具体的な比較方法と注意点
外国人材の待遇が「日本人と同等以上」であることを証明するために、企業は賃金テーブル(給与規定)の比較資料を作成し、入国管理局(入管庁)に提出する義務があります。
比較資料に含めるべき項目
| 待遇項目 | NG事例(法令違反となる可能性が高い行為) | OKな対応 |
| 基本給 | 【NG】 日本人社員の賃金テーブルに「外国人枠」を作り、低く設定する。 | 日本人と同じ賃金テーブルを適用する。業務や能力で評価する。 |
| 各種手当 | 【NG】 日本人社員には支給される「精勤手当」や「皆勤手当」を外国人には支給しない。 | 日本人と同じ基準で、すべて平等に支給する。 |
| 通勤手当 | 【NG】 日本人には全額支給するが、外国人は「住居を提供している」という理由で支給しない。 | 通勤距離や手段が同じであれば、同額を支給する。 |
| 住宅手当 | 【NG】 外国人は社宅に入居させているため、日本人社員に支給している住宅手当を支給しない。 | 社宅提供費用を相場より安く設定するなどの工夫で、実質的な不利益を与えない配慮が必要。 |
| 賞与・退職金 | 【NG】 雇用契約期間が同じにもかかわらず、「外国人だから」という理由で賞与や退職金の対象外とする。 | 日本人と同じ評価基準、支給規定を適用する。 |
ポイント: 特定技能外国人は「正社員」としての雇用が基本です。非正規雇用の日本人社員と比較する場合も、業務内容が同じであれば、不合理な待遇差は認められません。
法令遵守を証明する「3つの基本行動」
外国人材を安易に「安い労働力」として扱う考え方は、法令違反のリスクだけでなく、早期離職につながり、かえって採用コストを増大させます。
① 「比較対象者」の選定を慎重に行う
入管庁への提出書類では、賃金の比較対象となる日本人社員の情報(氏名、役職、給与明細など)を提出します。この比較対象者は、業務内容や責任範囲が本当に同等であるかを慎重に選定し、合理的な根拠を示せるようにしましょう。
② 雇用契約書は母国語で締結する
雇用契約書・雇用条件書等は、日本語と外国人本人が内容を完全に理解できる言語を併記して作成・締結しなければなりません。日本の労働法規だけでなく、給与や手当の内訳についても誤解が生じないよう、明確に説明する義務があります。
③ 福利厚生や教育訓練も「平等」に
「同一労働同一賃金」が適用されるのは、給与だけではありません。
- 【教育】 日本人社員が業務に必要な研修や資格取得支援を受けられるなら、特定技能外国人にも同様の機会を提供しなければなりません。
- 【福利厚生】 社員食堂、休憩室、健康診断、社員旅行といった福利厚生も、日本人社員と平等に利用できる環境を整えることが義務付けられています。
外国人材の受け入れは、コストではなく未来への投資です。法令を遵守し、彼らを「大切な会社の仲間」として公平に扱う姿勢こそが、長期的な定着と企業の生産性向上に繋がります。










