特定技能外国人受け入れガイド🔰 初めての外国人雇用で失敗しないためのイロハ解説

特定技能介護で働くインドネシア人の若者

人手不足の解消に直結する「特定技能(とくていぎのう)」制度。外国人材の受け入れは初めて、という企業様でも安心して進められるよう、制度の基本から具体的な手続きまでを一つずつ解説します。


特定技能制度の基本を理解しよう

まず、特定技能制度が、従来の外国人雇用制度とどう違うのか、基本のポイントを押さえましょう。

特定技能とは?

特定技能は、日本の人手不足が特に深刻な産業分野で、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格(ビザ)です。

項目特定技能の特徴
目的日本の産業の人手不足解消(即戦力として働く)。
在留期間特定技能1号 = 最大5年間(要件を満たせば「2号」へ移行可能)。
分野介護、自動車運送業、建設、飲食料品製造業、外食業など、16分野(※現在は16分野ですが、順次拡大中)に限定されています。

従来の制度との違い

  • 技能実習制度: 「日本の技術を開発途上国に移転する」ことが目的の国際貢献の制度です。(ただし、実際は労働力確保に利用されてきたため、多くの問題を孕んでいました。現在は「育成就労制度」へ移行予定です)。
  • 特定技能制度: 「労働力確保」が明確な目的です。転職(転籍)が制限される実習制度に対し、特定技能では同一分野内での転職が認められています。

受け入れ企業(特定技能所属機関)が満たすべき要件

特定技能外国人を受け入れる企業は、法令違反や不当な労働をさせないためのいくつかの厳しい要件を満たす必要があります。

外国人と「同等以上」の待遇

特定技能外国人の賃金や労働時間は、「同種業務に従事する日本人と同等以上」でなければなりません。これは、外国人だからといって低く抑えることを禁止する、差別防止の要件です。

👉 要チェック! 賃金だけでなく、福利厚生や教育訓練の機会なども日本人と同等でなければなりません。

支援体制の確立

外国人材が日本で安心して生活・就労できるよう、生活や日本語学習の支援を行う体制が必要です。具体的には、以下のどちらかの方法を採用します。

方法概要
① 自社で支援する会社内に「支援責任者」と「支援担当者」を置き、支援計画を立てて実施します。
② 登録支援機関に委託する国に登録された専門機関(登録支援機関)に、支援業務のすべてまたは一部を委託します。

💡 初めての企業様へ: 初めて受け入れる場合は、「登録支援機関に委託する」のが一般的かつ安全です。支援計画作成の伴走や役所への手続きを代行してもらうことができます。

受け入れ後に「必ず」行わなければならない支援内容(義務的支援)

特定技能外国人が安定して日本で働けるよう、企業(または登録支援機関)は、入国前から帰国まで以下の10項目の支援が義務付けられています。

支援項目具体的な内容
1. 事前ガイダンス契約内容や生活情報(家賃、税金など)を母国語で説明。
2. 出入国時の送迎入国時と帰国時に空港まで送迎。
3. 住居の確保・支援家賃保証人、契約手続きの支援など。
4. 生活オリエンテーション銀行口座開設、病院、交通ルール、防災など生活ルールを指導。
5. 公的手続きの支援住民登録、社会保障、税金手続きなどへの同行支援。
6. 日本語学習機会の提供日本語教室の情報提供、または教材の提供。
7. 相談・苦情への対応職場や生活に関する相談を母国語で対応。
8. 日本人との交流促進地域住民との交流の機会を設ける。
9. 転職支援(転籍支援)契約解除時の転職先の紹介・支援。
10. 定期的な面談・報告3カ月に一度、外国人本人と、現場の責任者に面談し、入管庁へ報告。


受け入れ手続きの具体的な流れ

特定技能外国人を受け入れるには、以下の3つのフェーズ(段階)を踏みます。

🟢 フェーズ1:採用候補者の選定と試験合格

  1. 特定技能外国人の選定: インドネシアやベトナムなど現地の送出し機関(人材紹介会社)を通じて候補者を探します。
  2. 技能水準の確認: 候補者は、各分野で定められた「技能試験」と「日本語能力試験N4以上」または「日本語基礎テストA2以上」に合格している必要があります。
    N4やA2は、基本的な日本語を理解できるレベルです。

🟠 フェーズ2:契約と支援体制の準備

  1. 雇用契約の締結: 日本人と同等以上の待遇であることを明確にした雇用契約書・雇用条件書を結びます。
  2. 登録支援機関との委託契約(※委託する場合): 支援を外部に依頼する場合は、この段階で契約します。
  3. 支援計画の作成: 上記10項目の義務的支援を、いつ、誰が、どのように行うかを定めた計画書を作成します。

🔴 フェーズ3:在留資格の申請・入国

  1. 在留資格の申請: 企業が入国在留管理庁(入管庁)に対し、外国人材が特定技能の活動を行うための「在留資格取得許可申請書」を申請します。必要書類が多岐にわたるので、行政書士サービスを利用することをお勧めします。(*登録支援機関はこの申請書類を作成することはできません。)
  2. ビザの取得と入国: 証明書が発行されたら、現地の大使館・領事館でビザを取得し、外国人材が来日します。
  3. 就労開始と支援の実施: 入国後、すぐに生活オリエンテーションを行い、その後、雇用契約に基づいて就労を開始します。同時に、作成した支援計画に基づき、定期的な面談や生活支援を継続的に実施します。

受け入れ成功のための社長心得

特定技能外国人の受け入れを成功させる鍵は、「ただの人手」ではなく、「会社の未来を支える大切な仲間」として迎え入れる姿勢です。

1. 「支援=投資」と考える

支援業務は単なる義務ではなく、定着率と生産性向上につながる「投資」です。日本語教育や生活環境の改善に費用をかけることは、結果的に「辞めない外国人材」を確保し、採用コストを削減します。

2. 現場の理解と協力が不可欠

特定技能外国人の受け入れと教育は、現場の社員の協力なしには成功しません。「異文化理解」や「やさしい日本語」に関する社内研修を実施し、全社員で受け入れの意義を共有しましょう。

3. 相談しやすい環境を作る

外国人材の最大の離職原因は、「孤立感」と「相談しづらい雰囲気」です。母国語での相談窓口(登録支援機関など)だけでなく、現場で気兼ねなく話せる日本人担当者を作り、信頼関係を築くことが、長期定着の秘訣です。