技能実習の失踪者は結局どこへ?見つかる人と社会に潜伏する人:制度の裏側にある不法就労の闇

失踪者をテーマにした現代アート

日本の技能実習制度は、劣悪な労働環境や来日時の高額な借金といった構造的な問題により、毎年多くの「失踪者」を生み出してきました。

法務省・出入国在留管理庁の統計データは、この問題の深刻な実態を明確に示しています。失踪した技能実習生のうち、約8割はその後「所在が確認」されていますが、その多くは強制送還の手続きを踏んでいます。この送還手続きにかかる移動コストは、最終的に誰が負担しているのでしょうか。


統計データで見る「失踪者」と「見つかった人」の現実

技能実習生の失踪者数は増加傾向にあり、制度の限界を示しています。しかし、失踪した人々のほとんどは、その後、日本の在留管理の網にかかっていることが分かります。

失踪者数と所在確認状況の推移

項目統計データ(最新公表値)
年間失踪者数(2023年/令和5年)9,753人(過去最多)
累計失踪者数(2019年〜2024年)47,117人
所在が確認された人数37,193人(累計の約78.9%)
未だ所在不明な人数(潜伏者)9,416人

(出典:出入国在留管理庁公表データ(令和元年〜令和6年累計))

「見つかった78.9%」の内訳とは

所在が確認された約79%の多くは、以下のいずれかの手続きを経て、在留資格を失い、日本を離れることになります。

  1. 入管当局による摘発(強制送還): 不法就労現場や職務質問などで発見され、「不法残留」として退去強制手続きが取られるケースです。
  2. 自首・出頭(自主的な帰国): 不安や困窮から自ら入管に出頭し、帰国を希望するケースです。
  3. 特定の措置による在留資格変更: 例外的に、ミャンマーなど本国の政情不安を理由に「緊急避難措置に係る特定活動」への在留資格変更が認められ、所在が確認されたケースも含まれます。

見つかった実習生は「不法残留」の事実から、原則として強制送還の対象となり、一定期間(通常5年)日本への再入国が禁止されます。

強制送還にかかる「移動コスト」の行方

失踪者を本国へ送還する際にかかる航空券代などの移動コストは、制度の運用において無視できない「公的な負担」となっています。

原則は「本人負担」だが、実質は国費で立て替え

  1. 原則: 退去強制を受ける外国人は、原則として自費(本人負担)で帰国することが定められています。
  2. 実態: しかし、失踪した実習生のほとんどは費用を負担する経済力がないため、実際には日本国(入管庁)が航空券代を立て替えます。
  3. 結果: 立て替えた費用は後請求されますが、回収は極めて困難です。そのため、強制送還に伴う移動コストは、実質的に国民の税金(公費)で賄われている状況にあります。

これは、外国人材の受け入れによって得られる経済的利益の裏側で、制度の欠陥によって生じたコストを国民全体が負担しているという構造的な問題を示しています。

見つかっていない約9,400人の潜伏リスク

見つかっていない約9,400人の失踪者は、日本の社会に不法残留者として潜伏しています。

  • 彼らは、健康保険や公的支援を受けられず、悪質なブローカーや雇用主に搾取されるリスクが極めて高まります。
  • 多くは来日時の借金返済という強い動機から不法就労を続けており、人権上、最も脆弱な立場にあります。

新制度「育成就労」への課題

技能実習制度が廃止され、育成就労制度へ移行する現在、この問題は「負の遺産」として残ります。新制度の「転籍の自由化」は失踪の動機を減らす有効な手段ではありますが、旧制度で借金を抱えたまま新制度への移行要件を満たせない実習生が、在留期限切れを前に失踪する「最後の波」のリスクが懸念されます。

政府は、単なる管理強化に留まらず、失踪の根源である「借金」を清算するための人道的な支援プログラムを早期に立ち上げることが、日本の社会秩序と国際的な信頼を守る上で不可欠なのではないでしょうか。