インドネシア人と働く上で必須の知識:宗教・文化から来る「仕事と生活のタブー」

インドネシア人介護士

インドネシアは、特定技能や技能実習制度における主要な送り出し国の一つであり、日本で活躍するインドネシア人の方々は増加しています。インドネシア人の背景にある文化や宗教を理解することは、円滑な受け入れと定着に不可欠です。

インドネシアは、世界最大のイスラム教徒人口を擁する国であり、イスラム教の教えが日常生活や文化の基盤となっています。また、多民族国家ゆえの身体や習慣に関するタブーも存在します。

採用企業の人事担当者、経営者、現場の皆様が、彼らのタブーを理解し、無用なトラブルを避けるために特に注意すべき点をまとめます。


宗教に関するタブー:信仰心への配慮

インドネシア人の約87%はイスラム教徒であり、彼らにとって信仰生活は仕事や生活の最優先事項です。

【重要】ハラーム(非合法)なものの摂取・接触

  • タブーの理由: イスラム教の教えで禁止されている「ハラーム」なものは、彼らの信仰にとって大きな罪となります。
    • 豚肉とその派生物(ゼラチン、ラード、一部の調味料など)。
    • アルコール飲料とその派生物(みりん、料理酒、一部の醤油やパン生地などに含まれるアルコール)。
  • 現場での注意点:
    • 社員食堂や親睦会での食事提供時は、ハラール認証の食材を使用するか、豚肉・アルコールを一切含まないメニューを確保することが必須です。
    • 作業現場や休憩所で、同僚が飲酒すること自体は問題ありませんが、インドネシア人スタッフに飲酒を勧めたり、酒の入った容器に触れさせたりすることは避けてください。
    • 調理器具や食器も、ハラームなものと共用しないよう、分別されていると理想的です(特に豚肉を扱ったもの)。

【配慮必須】礼拝(サラート)の時間の確保

  • タブーの理由: イスラム教徒は、一日に5回、決められた時間(日の出、正午、午後、日没、夜間)にメッカの方向を向いて礼拝(サラート)を行います。これは義務であり、仕事の都合で無視することはできません。
  • 現場での対応:
    • 休憩時間以外で礼拝が必要な場合は、5〜10分程度の短い時間で礼拝ができる場所と時間(祈祷スペースや会議室の一部など)を提供する必要があります。
    • 事前に彼らの礼拝時間と、業務のピーク時間をすり合わせ、柔軟な対応を検討してください。
    • 日本の勤務形態に合わせて仕事をし、「サラートは勤務時間外にまとめて行います」というインドネシア人人材も近年増えています。礼拝の実施について、一人一人にどうしたいか希望を確認することをお勧めいたします。

【重要】ラマダン(断食月)への理解

  • タブーの理由: ラマダン期間(約1ヶ月間、毎年日程は変動)は、日の出から日没まで一切の飲食を断ち、信仰に集中します。
  • 現場での対応:
    • 断食期間中は、特に日中の体力・集中力の低下を招きやすいため、重労働や危険な作業の負担軽減を検討してください。
    • 断食期間が始まる前に、業務シフトや休憩時間の過ごし方について人材本人と十分に話し合いコミュニケーションをとることが重要です。

身体・コミュニケーションに関するタブー:文化的な「右手」と「左手」の概念

イスラム教徒の文化では、「右手」と「左手」に厳格な区別があります。

【重要】左手で物を渡す・握手をする

  • 左手がタブーの理由: イスラム文化圏では、左手は排泄の処理などを行う「不浄の手」とみなされます。右手は「浄なる手」であり、食事や握手、物の受け渡しなど、人前での行為には必ず右手を使います。
  • 現場での注意点:
    • 書類やツール、お金などを渡す際は、必ず右手を使いましょう。
    • 握手をする際も、左手ではなく右手で行います。もし右手がふさがっている場合は、一旦物を置いてから右手で対応するのが適切です。

【避けるべき】人の頭に触れる・足の裏を向ける

  • タブーの理由: これはミャンマーや他のアジア文化にも共通しますが、インドネシアでも頭は神聖な部位であり、目上の人や子供の頭を触ることは失礼にあたります。また、足は不浄な部位であり、人や神聖なもの(コーラン、仏像、目上の人など)に足の裏を向けることは侮辱行為と受け取られます。
  • 現場での注意点:
    • 親愛の情であっても、頭に触れるのは厳禁です。
    • 座る際、足を組んでつま先を相手に向けたり、足を投げ出したりする姿勢は避けましょう。

社会的なタブー:人間関係と指導

【配慮】名前の呼び方

  • ポイント: インドネシア人の名前は「名前+父の名前」など様々な形態があり、一般的に姓(ファミリーネーム)を持たない人が多くいます。日本のように「〇〇さん」と呼ぶ際に姓で呼ぶ習慣がありません。
  • 現場での対応:
    • 本人に、「普段、何と呼ばれていますか?」「何と呼ばれたいですか?」などと確認し、本人が望む呼び名(ファーストネームが多い)で呼ぶようにしてください。

【避ける】公の場での叱責

  • タブーの理由: 他のアジア圏と同様に、インドネシア人も集団の中での「面子(メンツ)」を非常に重視します。人前で叱責されると、極度の屈辱感や不満を抱き、人間関係の悪化や早期離職につながる可能性があります。
  • 現場での対応:
    • 指導や注意は、必ず人目につかない場所で、冷静かつ穏やかなトーンで行うことが鉄則です。
    • 指導時には、笑顔や優しい言葉遣いを心がけることで、彼らの緊張を和らげ、信頼関係を築くことができます。

まとめ:文化理解が長期雇用の鍵

インドネシアの人々は一般的に温厚で親日家が多いですが、その生活の根幹にはイスラム教の強固な信仰と文化的な慣習があります。日本での「共生」を実現するためには、受け入れ企業がこれらのタブーを理解し、特に食事と礼拝に関して最大限の配慮をすることが、彼らの安心と高い定着率につながる最良の道となります。