人手不足が深刻化する中、外国人材の受け入れは、多くの企業にとって待ったなしの経営課題となっています。しかし、「外国人が増えすぎた」「日本人ファースト」といった声も根強く存在し、現場では様々な摩擦が生じているのも事実です。
私たちは今、感情的な議論と客観的なデータとの間で、大きなギャップに直面しています。今回は、国際的な統計データから日本の立ち位置を冷静に分析し、外国人材活用の現状と課題、そして未来への展望を考察します。
世界から見た日本の立ち位置
まず、主要な先進国がどの程度外国人材を受け入れているのか、その「移民比率」(総人口に占める外国生まれの人口の割合)をランキング形式で見てみましょう。
先進国「移民比率」ランキング Top 20
- 🇦🇺 オーストラリア:約30%
- 🇳🇿 ニュージーランド:約29%
- 🇨🇦 カナダ:約22%
- 🇨🇭 スイス:約20%
- 🇩🇪 ドイツ:約19%
- 🇸🇪 スウェーデン:約17%
- 🇳🇴 ノルウェー:約16%
- 🇮🇪 アイルランド:約16%
- 🇬🇧 イギリス:約15%
- 🇺🇸 アメリカ:約15%
- 🇦🇹 オーストリア:約15%
- 🇫🇷 フランス:約13%
- 🇳🇱 オランダ:約12%
- 🇩🇰 デンマーク:約11%
- 🇧🇪 ベルギー:約10%
- 🇪🇸 スペイン:約10%
- 🇮🇹 イタリア:約9%
- 🇫🇮 フィンランド:約8%
- 🇵🇹 ポルトガル:約8%
- 🇬🇷 ギリシャ:約7%
日本の移民比率は約2.5%であり、このランキングには含まれません。他国が人口の2〜3割を外国生まれの人々で構成する中、日本は国際的に見て「移民比率最下位グループ」に位置しています。
このデータは、「外国人材が多すぎる」という国民感情は、世界標準からかけ離れたものであることを示しています。
「増えすぎた」と感じる理由:現場の課題と摩擦
ではなぜ、統計的に見れば少ないにもかかわらず、現場では「外国人が増えすぎた」という声が上がるのでしょうか。その背景には、我々外国人雇用に携わる者が直面している、以下のような課題があります。
- 社会インフラの準備不足: 日本は、他の先進国のように長年にわたる移民受け入れの歴史がありません。そのため、多文化共生社会に向けた行政サービス、教育、医療、生活マナーに関するインフラ整備が遅れています。この「準備不足」が、急増する外国人材との間で摩擦を生み出しています。
- 特定の地域・産業への集中: 外国人材は、製造業、建設業、介護、農業など、人手不足が深刻な特定の産業や地域に集中する傾向があります。これにより、一部の地域では、人口に占める外国人の割合が急激に高まり、住民が変化に戸惑いを感じています。
- 支援体制のひっ迫: 外国人雇用を担う我々登録支援機関や企業の担当者も、急増する外国人材の支援に追われ、生活指導や日本語教育に十分なリソースを割けないのが現状です。これにより、外国人材が地域社会に馴染めず、孤立するケースも少なくありません。
成長への「伸びしろ」と今後の展望
このデータは、決してネガティブな側面だけを示しているわけではありません。むしろ、日本にはまだ外国人材活用の大きな「伸びしろ」があることを意味しています。
- 成長の可能性: 今後、日本経済が持続的に成長していくためには、外国人材の受け入れは不可欠です。私たちは、世界の先進国が歩んできた道のりを参考に、より効率的かつ円滑に外国人材を受け入れる仕組みを構築していく必要があります。
- 我々業界の役割: 統計データが示すのは、単なる人口の数字ではありません。我々外国人雇用に関わる者は、この「伸びしろ」を活かし、外国人材を「労働力」としてだけでなく、「共に社会を創るパートナー」として受け入れるためのインフラを整備する責任があります。
「増えすぎた」という声がなくなることはないかもしれませんが、その感情の背景にある課題を一つひとつ解決していくことで、日本は真の多文化共生社会へと一歩ずつ近づいていくはずです。