日本の介護現場で、ミャンマー出身の特定技能・技能実習生に対する評価が非常に高いのをご存知でしょうか。「真面目で熱心」「言葉の習得が早い」「利用者に優しい」といった声は、現場で働く外国人材の中でも群を抜いています。
政情不安による受け入れ停滞という大きな課題はあるものの、彼らが持つ介護職への高い適性と文化的背景を知ることは、外国人材採用戦略を考える上で極めて重要です。なぜミャンマー人材は介護の現場で高い評価を得ているのか、その理由を解説します。
目次
現場が絶賛!ミャンマー人材の「介護適性」が高い理由
ミャンマー人材の優秀さは、単に「真面目」という言葉だけでは語れません。彼らには、日本の介護現場で特に求められる資質が文化的に深く根付いています。
仏教文化に根差した「徳を積む」価値観
ミャンマーは敬虔な仏教国であり、「困っている人を助けることで徳(ダーナ)を積む」という思想が深く浸透しています。
- 介護=神聖な仕事: 体の不自由な高齢者や病人を助ける介護の仕事は、「人助け」「社会貢献」であり、徳を積むための尊い仕事であるという認識が国民の中にあります。
- 高い志望動機: そのため、ミャンマーでは介護職に対する社会的評価が高く、他の国と比べて「自ら志願して介護の道を志す」若者が非常に多いのが特徴です。意欲の高さが、結果的に高い定着率と熱心な仕事ぶりにつながっています。
日本と共通する「敬意」と「協調性」
ミャンマーの文化には、日本と共通する点が多いため、職場の人間関係や利用者への接し方でスムーズに適応できます。
- 目上を敬う文化: 日本と同様に、年長者や目上の人を敬う文化が根付いています。これにより、利用者に自然に敬意を払い、親身に寄り添った対応ができると評価されています。
- 温厚で協調性が高い: 穏やかな性格が重視される文化であり、人前で感情的になったり、激しく対立したりすることを避ける傾向があります。チームワークが不可欠な介護現場において、協調性が高く、職場の和を乱さない点も大きな強みです。
日本語習得のスピードとその背景
多くの現場で「日本語を覚えるのが早い」と評価されています。これは、彼らの高い学習意欲に加え、言語的な共通点も関係しています。
- 文法構造の類似点: ミャンマー語は、日本語と同じく「SOV(主語・目的語・動詞)」の語順構造を持っています(例:私はご飯を食べます)。この文法的な共通点から、他の言語圏の学習者と比べて、日本語の文法理解や習得の心理的ハードルが低いと言われています。
実際の現場の声とデータが示す優秀性
ミャンマー人材が介護現場にもたらすメリットは、単なる労働力確保に留まりません。
現場での具体的な好事例
- 利用者からの評価: 「優しく笑顔で接してくれる」「親身になってくれるので安心できる」といった、利用者からの感謝の声が多く聞かれます。
- 職員の負担軽減: 夜勤や身体介助などの重労働にも粘り強く取り組む姿勢から、日本人職員の負担軽減に貢献し、職場の離職率低下にもつながった事例が報告されています。
- 質の高い介護: すでに介護福祉士の国家資格を取得し、特定技能から在留資格「介護」へ移行して、チームのリーダー格として活躍する人材も増えています。
豊富な若年層と高い教育水準
- ミャンマーは平均年齢が比較的若く、体力のある20代・30代前半の人材を確保しやすいメリットがあります。
- 識字率も高く、教育水準も高いため、専門的な介護知識や技術を学ぶ意欲と能力が高いことも、優秀な人材が多い要因の一つです。
受け入れを検討する企業への提言
ミャンマー人材は、文化的背景と国民性から、まさに日本の介護現場が求める「適性」を持った人材であると言えます。
しかし、先の記事で解説した通り、現在は軍事政権による出国制限により、新規の来日が困難な状況です。
- 国内在留者の継続雇用: すでに日本国内にいるミャンマー出身の技能実習生や特定技能人材に対し、在留資格の延長や特定技能への移行を積極的に支援することが、優秀な人材を確保する最も確実な戦略となります。
- 長期的な関係構築: 情勢が改善し、再びスムーズな受け入れが可能になった時のために、現地との送り出し機関との信頼関係を維持・強化しておくことが、将来的な人材確保の鍵となります。
ミャンマー人材の持つ力を最大限に引き出し、安定した受け入れ体制を構築することが、日本の介護業界の持続的な発展に不可欠と言えるでしょう。