外国人雇用の現場で「在留カードは目で見て確認し、コピーを取っておけば足りる」という感覚は、もはや通用しない。偽造技術が高度化したからというだけではない。行政手続きのデジタル化が進み、カードの券面情報だけでは十分な確認になりにくい方向へ制度自体が動いているからだ。企業が雇用の入口で行う在留確認は、善意の努力ではなく、コンプライアンスそのものと位置づけ直すべき段階に入った。
不法就労をさせた雇用主が問われ得る不法就労助長罪は重い。結果として違法就労に加担したとみなされれば、企業は刑事責任と社会的信用の双方を失いかねない。採用難の時代に一度ついた汚名は、採用力と取引の継続性を同時に損なう。だからこそ「知らなかった」「見抜けなかった」という言い訳が通る体制を残しておくこと自体が経営リスクになる。
今、求められるのは確認手段の標準化である。出入国在留管理庁は在留カード等のICチップを読み取る公式アプリを提供している。券面を眺めてホログラムを見る行為を否定する必要はないが、それを主手段に据えるのは危うい。確認の質が担当者の経験や注意力に左右され、属人化し、記録も曖昧になるからだ。企業は「読む」「照合する」「記録する」を一連の手順として固定し、誰が担当しても同じ水準で実行できるようにするべきだ。面接時、入社時、在留更新時という節目を決め、実施日、担当者、確認結果を残す。これが最低限の防波堤になる。
2026年6月に予定される「特定在留カード」等の運用開始は、こうした転換をさらに後押しする。現行の在留カードの券面に表示されてきた在留期間などの一部事項が、カード内の記録事項へ移ると案内されている。目で日付を追うだけの管理は、制度の設計と噛み合わなくなる。移行期には従来カードと新カードが混在し、現場の確認はむしろ混乱しやすい。だからこそ、券面を前提にした確認から、ICチップを前提にした確認へ、社内ルールを先に作り替えておくことが合理的になる。
確認のデジタル化は「疑うため」ではなく「守るため」にある。外国人社員にとっても、雇用側の確認が曖昧であることは不利益になり得る。期限管理の行き違い、更新手続きの遅れ、説明不足による誤解が、就労継続を不安定にするからだ。企業が公式手段で確認し、記録を残すことは、社員にとっての安心にもつながる。運用にあたっては、私物スマホでの読み取りを当然視するのではなく、会社支給端末や専用端末を用意し、情報の取り扱いと同意の考え方を整えるなど、プライバシー面の配慮も欠かせない。管理のための管理に陥れば、信頼は逆に損なわれる。
外国人雇用は、採用して終わりではない。就労資格の確認と更新の支援は、現場を回すための基盤であり、企業統治の一部である。2026年は在留確認のやり方をアップデートする年と位置づけたい。目視とコピーに頼る旧来型から、ICチップ読取と記録を前提にした標準手順へ。変化を早く取り込み、淡々と運用する企業が、これからの外国人雇用の信頼を勝ち取る。










