【経営の視点】外国人材を「生涯のパートナー」へ——新NISA活用が切り拓く、資産形成支援という新たなリーダーシップ

新NISA

2026年現在、特定技能2号の対象分野拡大と定着により、外国人材はもはや「数年で帰国する労働力」ではなく、日本企業にとって「中長期的なパートナー」としての地位を確立しつつあります。

しかし、多くの経営者が直面している課題があります。それは、円安や母国のインフレによって、彼らの日本での労働対価が相対的に目減りしているという現実です。

本稿では、企業の福利厚生およびリテンション(人材定着)戦略の一環として、外国人社員に対する新NISA(少額投資非課税制度)の活用支援をご提案します。これは単なる投資教育ではなく、彼らの人生設計に寄り添う経営者の覚悟を示す取り組みです。


構造的課題:「仕送り」だけでは守れない未来

来日する外国人材の多くは、給与の大部分を母国への送金に充てています。しかし、近年の経済情勢下では、日本円での貯蓄や送金だけでは資産価値を維持することが困難なケースが増えています。

「稼いでは消える」という自転車操業的なサイクルから彼らを解放し、日本で働くことの経済的メリットを最大化させる手段として、新NISAが有効な選択肢となります。

まず、基本的な事実関係を確認します。

日本国内に住所を有し、在留カードとマイナンバーカードを持つ18歳以上の外国人材は、日本人と同様に新NISA口座を開設可能です。国籍による制度上の制限はありません(※米国籍など一部を除く)。


経営戦略としての「資産形成支援」

新NISAの活用は、単なる個人の資産運用にとどまらず、企業と従業員の双方にメリットをもたらす「心の福利厚生」として機能します。

【表:従来の雇用モデルと資産形成支援モデルの比較】

項目従来の雇用モデル資産形成支援モデル(新NISA活用)
従業員の意識短期的な出稼ぎ(「5年で帰る」)長期的なキャリア形成(「日本で基盤を作る」)
資金の使い道母国への送金・円預金のみ世界株式等への分散投資
経済的効果円安・インフレによる価値目減りリスク世界経済の成長を取り込み、資産増の可能性
将来の選択肢帰国一択特定技能2号取得、家族帯同、永住、または資産を持って帰国
企業への帰属意識賃金条件のみで判断「将来を考えてくれる会社」としての信頼


「5年の壁」を「資産の種」に変える

「数年で帰国する可能性があるから投資は不要」という考えは、機会損失になりかねません。

仮に5年後に帰国する場合でも、その時点で保有商品を売却し、運用益が出ていれば非課税で受け取ることが可能です。これは実質的な「帰国ボーナス(退職金代わり)」となり得ます。

一方で、運用を通じて資産が増える実感を共有することは、「特定技能2号を取得し、家族を日本に呼び寄せたい」というモチベーションの源泉にもなります。


実務上のポイントと経営者の役割

導入にあたっては、以下の点に留意しつつ、丁寧なサポートを行うことが重要です。

  1. 口座開設の伴走支援:日本語の金融用語は難解です。スマートフォンの画面を共有しながら手続きをサポートすることは、業務マニュアルを教える以上の信頼関係を構築します。
  2. 金融リテラシーと詐欺被害の防止:投資の仕組みを教えることは、彼らを悪質な投資詐欺から守る「防波堤」の役割も果たします。会社が正しい知識を提供することで、従業員の生活基盤は安定します。
  3. 帰国時のルールの周知:将来的に日本を出国(非居住者となる)する場合、一般的にNISA口座は閉鎖または課税口座への払い出しが必要となります。この「出口戦略」も含めて正しく伝える誠実さが求められます。


20年後に語られる物語のために

人口減少が進む日本において、外国人材に選ばれる企業の条件は、賃金の多寡だけではありません。「自国の家族も含めた将来設計」を共に描けるかどうかが問われています。

新NISAの口座開設を支援するその行為は、彼らにとって「日本に来てよかった」「この経営者に出会えてよかった」と思える将来への種まきとなります。

制度を教えることを通じて、人生を共に創る。これこそが、令和の経営者に求められる真のリーダーシップではないでしょうか。

(* 投資には元本割れのリスクがあります。制度の説明にあたっては、メリットだけでなくリスクについても十分に説明を行うようご留意ください。)