【最新データ分析】在留外国人が10年で65%増!伸びる自治体の共通点と「東南アジアシフト」の実態

右肩上がりの棒グラフ

国内の在留外国人数が過去最高を更新し続けています。出入国在留管理庁のデータを基にこの10年(2015年〜2024年)の推移を分析すると、日本の労働市場が「東南アジア・南アジア」へ劇的にシフトしている実態と、地方自治体による戦略的な受け入れの成否が浮き彫りになりました。


マクロ動向:コロナ禍を乗り越え350万人時代へ

在留外国人数は2015年の217.3万人から、2024年には358.9万人へと急増。10年間の増加率は65.2%に達しました。2020年〜21年のパンデミックによる一時的な停滞はあったものの、特定技能制度の拡大や経済活動の正常化により、増加ペースはむしろ加速しています。


都道府県別:熊本・鹿児島がワンツー。キーワードは「半導体」と「農林水産」

都道府県別の増加率ランキングでは、この10年(2015年〜2024年)を振り返ると意外な勢力図が見えてきました。

  • 1位:熊本県(166.4%増)
  • 2位:鹿児島県(153.7%増)
  • 3位:北海道(146.1%増)

上位を「九州・沖縄」と「北海道」が独占する結果となりました。特に熊本県は、TSMC(台湾積体電路製造)の進出に伴う関連企業の集積や建設需要が、外国人材の流入を強力に牽引しています。北海道や鹿児島、宮崎といった県では、基幹産業である農業、水産、そして観光業界での特定技能人材の活用が定着していることが数字に表れています。


出身国別:加速する「脱・東アジア」と東南アジアの台頭

居住者数1万人超の国に絞った増加率ランキング(2015年〜2024年推移)では、驚異的な結果となりました。

  1. ミャンマー(809.2%増)
  2. インドネシア(434.4%増)
  3. カンボジア(416.4%増)
  4. ベトナム(381.0%増)

かつて主流だった中国(28.6%増)や韓国・朝鮮(12.6%減)などの東アジア圏は横ばい、あるいは減少傾向にあります。今や、日本の現場を支える主力は東南アジア・南アジア圏へと完全に移り変わっています。


市区町村別:小規模自治体の「激変」から見えるヒント

人口1万人未満の小規模自治体に注目すると、特定の「プロジェクト」や「観光需要」が劇的な変化を生んでいることがわかります(2015年〜2024年推移)。

  • 秋田県・東成瀬村(1460.0%増):
    巨大プロジェクト「成瀬ダム」の建設工事に従事する労働者が急増。なかでもスリランカ人の増加が顕著で、第3セクターによる移住・就労促進プロジェクトが成功しています。
  • 北海道・赤井川村(1219.0%増):
    「キロロリゾート」などのスノーリゾートを有し、インバウンド需要に対応する観光・宿泊業の担い手として外国人が急増。2023年から24年にかけて1年で2倍以上に伸びるなど、リゾート地での人材需要は爆発的です。
  • 香川県・琴平町(10倍増):
    金刀比羅宮を抱える観光の町。宿泊・サービス業への特定技能人材の投入が、地域の産業を維持する生命線となっています。


今後の外国人雇用戦略

今回のデータから、企業が読み取るべきは「地域特性」と「出身国の多様化」です。

  1. 特定プロジェクトへの注目: ダム建設や工場誘致など、大規模なインフラ整備がある地域では、周辺の生活基盤(多言語対応や食生活の支援)が急務となります。
  2. 観光・宿泊業の「特定技能化」: 赤井川村や琴平町の事例は、地方の観光地がいかに外国人に依存しているかを示しています。
  3. インドネシア・ミャンマーへの注力: 増加率上位の国々は、今後も日本の主要な労働力供給源となります。これらの国の文化や宗教(ハラール対応など)を理解し、体制を整えることが、優秀な人材を獲得する近道です。

「外国人雇用新聞」では、引き続きこれら「伸びる自治体」の具体的な支援事例を深掘りし、企業の皆様に有益な情報をお届けしてまいります。